2021年に6本のデジタル関連法が国会で成立した。あの時、世間の話題になったのは、デジタル庁と大臣の新設だった。しかし当時は耳目を集めることのなかった「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」が5年後の今、問題になっている。
同法律は、自治体ごとにばらばらだった基幹業務システムを統一の「標準化」とするもので、国の定める移行期限の26年3月までに半数超の自治体が間に合わなかったと報じられた(「自治体の半数が移行遅れ システム標準化、運用経費増も」時事通信)。その主因がベンダー(システムのソフトウェアやハードウェアを提供する会社)の業務が追いつかないからというのである。「標準化」の導入により、費用が増加したという自治体の声も出ている。
なぜ、業務が追い付かなかったのか。そこには、国が各地方自治体の現状を把握せずに、「スピード感」のみを優先させた可能性も出てくる。
地方公共団体は国会で法律が成立すれば忠実にその期限を守ろうとする。しかし今や、人手不足と業務量増加という状況下で、多くの仕事を民間に委ねている。
国は03年に地方自治法を改正し、地方公共団体が設置する体育館、図書館、公園、文化施設など公の施設の管理運営を民間企業、NPO法人、公益法人、市民グループなどに包括的に代行させることができる指定管理者という仕組みをつくり民間委託の流れを推進している。
地方公共団体の情報システムの構築と運営は従来から民間に委託されていた。国は21年に「標準化」に関する法律で期限を決めた時、現場の実態を調べなかったのだろうか。デジタル関連法を6本も作ればベンダーへの負担が増えることは明らかで、キャパシティを考慮しなかったのだろうか。
そもそも地方公共団体と一口で言っても、その規模は人口1400万人を超える東京都から人口160人余の東京都青ヶ島村まで千差万別である。大都市から過疎の村までそれぞれに性質も違う。
情報システムの標準化といっても、標準化にプラスアルファが必要な地方公共団体もあれば標準化がオーバースペックとなる地方公共団体もある。
近年特に現場の実態を無視して「スピード感」という一般向けするワードで無理押しする例が目立つ。今回の事態を反省し、国は民間や地方公共団体の現場の実態に十分配慮して立法すべきだ。
期限に間に合わなかった理由の一つとしてベンダー側は、デジタル庁や各省庁が策定する標準仕様書が毎年のように法改正や制度改正に応じて改変され、その度に設計やプログラムの見直しが必要となることを挙げている。地方公共団体独自の政策や広域連携の施策等に標準仕様書が対応できないという事情もあったようである。
国が定める標準化の対象は、児童手当、子ども・子育て支援、住民基本台帳、戸籍の附票、印鑑登録、選挙人名簿管理、固定資産税、個人住民税、法人住民税、軽自動車税、戸籍、就学、健康管理、児童扶養手当、生活保護、障害者福祉、介護保険、国民健康保険、後期高齢者医療、国民年金の20項目である。
近年は子ども・子育て支援政策などは毎年のように施策が充実しているので、皮肉なことに先行して標準化に取り組んだ自治体ほど、手直しが頻繁に必要となったという現象もあったらしい。
システム標準化の経費は原則として100%、国費によって賄われる制度になっている。移行後の運用経費についても予定より高額になると想定されているが、国の補助金が予定されている。