気候問題よりも電力安定供給を!エネルギー危機に備えていなかった日本、ホルムズ危機で必要なのは再エネではない

2026.06.10 Wedge ONLINE

 何度目のエネルギー危機だろう。世界が初めてエネルギー危機に直面したのは、半世紀以上前の1973年だった。

(vencavolrab/gettyimages)

 第4次中東戦争を契機に中東諸国が原油の価格を短期間に約4倍に引き上げた。一次エネルギーの4分の3を石油に依存していた日本は大きな物価上昇に見舞われ、製造に石油を利用していたトイレットペーパーが市場から消える混乱を経験した。

 エネルギー危機を経験した日本は、脱石油をテーマに石炭、液化天然ガス(LNG)、原子力への多様化を図った。

 日本の脱石油は成功し、現在日本の一次エネルギー供給の8割を占める化石燃料は、石油、石炭、LNGにほぼ3等分されている(図-1)。そんな中で米国とイスラエルのイラン攻撃を契機に、日本はふたたびエネルギー危機に見舞われた。

 国内では中東依存を軽減するため、自給率を向上させる再エネ導入を加速すべき、あるいは発電の3割を占める石炭火力をもっと使えとの声が上がった。しかし、共に課題が多い。

エネルギー危機で再エネ導入は増えた?

 中国製太陽光パネルの出荷がエネルギー危機の影響で3月に急増したとの大手紙の報道があった。報道は正確ではなく、エネルギー危機と太陽光パネルの出荷増には関係がない。後述するエネルギー危機が引き起こす再エネのコスト増があり、簡単に導入量が増えるわけではない。

 3月に中国製太陽光パネルの出荷が急増した理由は、中国の税制の変更だ。中国政府は、再エネ製品の輸出に対する付加価値税(増値税)の還付制度を見なおし、4月1日から太陽光パネルへの9%の還付を廃止、蓄電池への9%の還付を6%に引き下げた。

 駆け込み需要により太陽光パネルの輸出は急増した(図-2)。しかし、4月には輸出量は落ち、前年同期並みに戻った。イラン戦争が各国の再エネ導入量を増やしたのではなかった。

 米国でも再エネ導入量が増えているが、これもエネルギー危機とは関係がない。

米国の再エネ設備増の理由

 再エネに冷淡なトランプ政権下での米国でも太陽光発電を中心に再エネ設備の導入量は増えている。

 今年全米で導入予定の新規発電設備容量8600万キロワット(kW)のうち半分強は太陽光発電だ。再エネ設備の不安定な発電を補うための蓄電池の導入量も全体の3割近くを占める(図-3)。皮肉なことに、共和党が強固な地盤を持つテキサス州が、全米の太陽光設備の40%、蓄電池の53%を占める計画だ。

 なぜトランプ政権下の米国で再エネが増えるのだろうか。理由は生成AIを支えるデータセンターだ。

 世界のデータセンターの45%の容量を持つ米国ではハイパースケールと呼ばれる大規模データセンターの新設が目白押しだ。必要な電力量も大きい。24年のデータセンターの電力使用量は、1830億kW時。25年の消費量は2000億kW時を上回り、米国の電力消費量の約5%になったと推測されている。

 国際エネルギー機関は、30年に米国のデータセンターの電力需要量は4260億kW時に達すると予測している。発電設備の新設が大きな課題だ。

 データセンターの非常用電源としても利用され工期も短い天然ガス火力発電設備への発注が相次ぎ、ガスタービンは4年待ちだ。

 すぐに作れる発電設備と言えば太陽光発電と蓄電池だ。共和党地盤の州でも、データセンターのため「すぐに発電可能な設備は何でも作る」方針は変わらない。

 しかし、エネルギー危機が再エネ設備の導入予定を増やすかと言えば、そうはならないだろう。問題は、エネルギー価格上昇が引き上げる再エネ設備のコストだ。