他にも影響がおよぶ領域があるという。
「少し違う視点でいうと、AIのビジネスへの活用ということが注目される中で、クラウドサービスを使うことになるわけですが、クラウドに会社の情報を何でもかんでも送信して大丈夫なのかという点が問題視されています。ある企業の情報をクラウド上のAIが覚えてしまって、ライバル会社にうっかり教えてしまうケースが生じないのかという問題です。
それを防ぐためにCPUにAI専用の半導体NPU(ニューラルプロセッシングユニット)を付加して、クラウドに頼らず手元のパソコンでAIを動かすというかたちが推進されており、たとえばマイクロソフトはそれができるWindowsパソコンをCopilot+PCというブランドで提供しています。会社の機密情報を守るためにこうしたパソコンが必要だという話になると、パソコンの買われ方が変わってきます。今年はWindows10のサポート切れを控えているため一定のパソコン買い替え需要があるなかで、『NPU搭載のパソコンを買ったほうがいいよね』『Copilot+PCにしたほうがいいよね』というリプレイスの仕方をする会社が増えるかもしれません。
そのときに何が起こるのか。今までWindowsのPCで主流だったのはインテルやAMDのCPUですが、Copilot+PCではインテルのCPUとは互換性がない、英Armが設計したCPUのほうが優勢なんです。だからといってArmのCPUでもマイクロソフトのOffice等は対応済みなので問題なく動きますが、インテルのCPUで動いてた多くのプログラムは変換して動かさねばならないので、古いプログラムなどがうまく変換できず動かないという問題が広がるかもしれません。AIを取るか、古いプログラムを取るかみたいな問題になって、いろいろとドタバタした動きが今年後半以降に起きるかもしれません」
(文=Business Journal編集部、協力=上原哲太郎/立命館大学情報理工学部教授)