中古車のガリバー、果敢なDX化・AI活用で売上1兆円へ…優秀なエンジニアを採用できる理由

 Gulliverは中古車の買取・販売・整備を行っており、この3事業のそれぞれに顧客管理の仕組みがあります。ただ、これらの顧客データを引き出しやすい形でつなげることはできていませんでした。あるお客様の名前を入力した時に、中古車の売却・購入・整備といった当社とのお付き合いの履歴を一挙に確認できるような形にはなっていないんです。必要なのは、顧客のデータを全社的に同一のシステムで、一気通貫に見られるようにすることで、これを実現するためにCRMを作り直しているわけです。それによって、仮に店舗責任者や営業担当が違っても、すべてのお客様にGulliverというブランドとして、均一に高水準のサービスを提供できるようになります。

 今後はオンライン上での商談を含めてシステムを構築し、ご成約後の納車の管理から納車後の定期整備のご案内などはシステムに担当させていきます。その代わり、営業社員には人間だからこそできる、きめ細かい感情面をケアする営業活動に注力してもらいます。これが、システムを活用してプロフィット・マネジメントからプロセス・マネジメントに移行する流れのイメージです」

 中古車ビジネスにおいてもシステムをフル活用することで、Eコマースサイトが訪問客の導線や購入履歴を把握して別の商品のレコメンドを行っているように、顧客に対して機を逃さず商機をプッシュすることが可能になる、と野原氏は語る。具体的には、店舗への来店やオンライン上での接客の際にシステムを活用して顧客情報をデータ化しておき、それをAIに解析させるのだ。

 顧客が成約前にどのようなニーズを語り、どんな車を探していて、どんなご家族構成で、営業担当がどのように接客したのかということを、Eコマースにおける訪問客のウェブ上の挙動のように、詳細にデータとして蓄積する。それを解析したAIは、中古車を購入した顧客が点検を必要とする時期を察知することができるし、買い替えのニーズやその家族構成に合った車種などを、営業社員に対してプッシュすることができる。このような形でIDOMのプロセス・マネジメントは実現できるし、Amazonより優秀なレコメンドエンジンを作れると、野原氏は自信を隠さない。

「AIによるニーズ掘り起し」と「業務効率化」で収益貢献を追求

 CRMシステムの再構築とマネジメント体制の転換の先に、同社は根本的なゲームチェンジを見据えているという。

「米国のCarMaxという中古車小売業者は、オンライン上で中古車販売を完結させています。消費者がパソコンやスマホの画面を通して中古車を選び、そのまま商談から契約まで行える仕組みが、米国ではもう出来上がっているんです。遅れを取っている日本において、当社はいち早くオンライン販売の環境を整えていきます。そうなれば、顧客情報の管理とニーズの掘り起こし、即応がよりスムーズになります。

 もちろん、当社のビジネスがどこまで行っても、現場で動く営業社員と、当社が仕入れている車という物理的な存在が主役であることは間違いありません。これを強力にサポートする力としてシステムを構築していくことが、当社におけるDXの1つのミッションです。

 そしてもう1つ、サプライチェーンのシステムもIDDの管掌です。当社の場合、中古車を仕入れてから販売するまでの期間をいかに縮められるかによって、収益が大きく変わります。というのも、中古車は1カ月でも売価が数万円下がるから。当社は数万台の在庫を保有しているので、全部を1カ月寝かせれば、億単位の評価損が発生します。つまり重要なのは、仕入れた車をいかに早く展示場に並べ、ホームページに掲載し、ひいてはご成約後の納車をいかに早めるか。こうしたマネジメントの効率化もまた、システムの得意分野なのです」