中古車のガリバー、果敢なDX化・AI活用で売上1兆円へ…優秀なエンジニアを採用できる理由

 効率化という部分では、同社が急ピッチで進める大型店の出店においてもシステムの活用は必須だと野原氏は強調する。大型店は中古車の在庫を大量に抱えるのと同時に、多くの人員が配置される。在庫を効率よくさばき、適切な場所・時間帯に過不足ない人員を配置して効率的に動けるようにしなければ、大型店を出店すればするほど評価損と人件費が増加することになりかねないわけだ。このように、猛スピードで規模を追う裏側ではそれを支える徹底的な効率化が求められ、そこにDXの大きな役割があると野原氏は考えている。そんな同社において、野原氏の考えるDXが業績への影響を及ぼしていくのは、いつ頃になると考えているのだろうか。

「今年中にCRMの新システムをリリースしますので、2026年2月期の第4四半期は、それをベースに事業が動き出します。新システムが導入されるのは当社の約460店舗のうち、約220ある販売メインの店舗です。つまり、第2四半期の売上高や利益の半分以上は、新システムを土台に上げたものになるわけです。

 それによって、店舗責任者の勘と経験と度胸、つまり小売業で言う「KKD」でやってきたものが、新システムによって可視化されていきます。それによってまず改善できるのが、営業社員のシフト組みです。たとえば、何曜日のこの時間帯はお客様の来店は少ないが購入意欲の高い方が多いとか、逆にこの時間帯は来客は多いがほとんどが見るだけなど、来客の傾向がシステムを通じて目に見えるようになります。それに応じたシフトを組むことで、人件費の適正化と売上アップにつなげることが、システムが業績に貢献する最初の道筋になると考えています」

 IDOM Digital Driveという社名には、車のドライブという意味に加えて、デジタルの導入にドライブをかけていくというダブルミーニングがかかっているという。野原氏はこれに、IDOMという会社にデジタルの力でドライブをかけていく、という独自の解釈を加える。中古車市場という労働集約型かつモノの動きを伴うクラシカルな世界に、システムという資本装備によるデジタル化がいかに変革を起こしていくのか。それによって業界地図はいかに変動し、消費者である我々の体験や行動は、どう変わっていくのか。目が離せない数年間が、すでに始まっていると言えそうだ。

(文=日野秀規/フリーライター)