MNTNの核心は、テレビ広告を「ブランド認知」のためのブラックボックスな高額施策から、「売上」に直結する有力なチャネルへと転換させたことにある。リスティング広告やMeta広告などを運用するように、誰でも簡単にテレビCMの出稿、ターゲティング、効果測定、最適化などを行えることが何よりの強みだ。
これを実現するのが、同社独自の2つのテクノロジーである。
MNTN Matched(AIターゲティング技術): 4億台以上のデバイスから得られるサードパーティおよびファーストパーティのデータを活用し、広告主の商品やサービスに最も関心を持つ可能性の高い世帯をAIが特定する。これにより、従来の大雑把なデモグラフィックターゲティングとは一線を画す、精緻なオーディエンスリーチを可能にする。
Verified Visits Technology(クロスデバイス効果測定): 家庭内の様々なデバイス(テレビ、スマートフォン、PCなど)を連携させ、テレビで広告を視聴したユーザーが、その後どのデバイスでウェブサイト訪問や商品購入といったアクションを起こしたかを正確に追跡。これまでブラックボックスだったテレビCMのROASを算出することができる。
要するに、そもそも正確なターゲティングでCTV経由の広告を流すことができ、その後のアクションまで測定することができる。データが蓄積されればされるほどターゲティングの精度が上がるという、従来のデジタル広告のような正のループを実現する。
視聴習慣やオンラインでの行動といった無数のシグナルを分析し、「最近、職人技のコーヒー豆について検索した料理番組の視聴者」など、極めて精緻なオーディエンスセグメントを構築できる。従来の「20代・女性」などといった荒い粒度のデータを基にするよりも、はるかに高い広告効果が期待できる。
日本ではノバセルやテレシーなどが運用型テレビ広告の代理店事業や分析ツールの開発・提供を手がける企業として知られる。MNTNは広告主自身が管理画面上でCTV向けの広告を配信し、成果を確認しながら運用できるプラットフォームを提供しているという点でビジネスモデルが異なる。
MNTNの急成長を支えるのは中小企業(SMB)をターゲットにした戦略と、それによって生まれる強力な「フライホイール効果」だ。
まずテレビ広告を「運用型」に変え、少額予算から出稿できるようになったことで、多くのSMBが広告予算をMNTNのプラットフォームに投下するようになる。MNTN上で流通する広告費が増えれば、同社はNBC、Paramount、Foxといった大手ストリーミングネットワークに対する交渉力を増し、より安く広告枠を仕入れることが可能になる。
広告枠の原価が下がれば当然、広告主目線ではROASが改善し、新たな顧客を呼び込む実績となる。事実、同社への売上のうちインバウンドの問い合わせ経由で獲得したリードは64%と過半を占める。こうして顧客拡大とROAS改善のサイクルが回り、競合を寄せ付けない「Moat(堀)」を築いているというわけだ。
MNTNは2022年第1四半期以降、プレミアム広告枠の仕入れコストを四半期平均で約8%も削減できているという。顧客数は2019年の142社から2024年には2225社へと爆発的に増加した。
顧客の約92%はこれまでテレビ広告を出した経験がないSMBであり、新たな市場を切り開いていることの証左といえる。従来のテレビ広告は、既存の大口広告主を主要顧客とする広告代理店やプラットフォームの独壇場であった。MNTNはその常識を覆し、これまでテレビという媒体を検討することさえなかった膨大な数の企業に、その門戸を開いたのである。