国内の基地港湾は東北・北海道が中心だが、北九州は別の強みを打ち出す。
「我々は単なる積み出し拠点ではなく、製造からメンテナンスまでを担い、東アジアに輸出する拠点を目指しています。ここまで構想している自治体は少ない」
つまり北九州は「広域型の総合拠点」として差別化を図る。
洋上風力は設置して終わりではない。長期にわたり保守が必要だ。北九州市は西日本をカバーするO&M(運用・保守)拠点の構築を進める。
「ヨーロッパでは部材のストックポイントを整備し、広域に供給しています。同じように、西日本全体を対象としたストック拠点を目指しています。また、人材不足が大きな課題なので、市内では人材育成拠点も既に稼働しています」
風力発電は漁業者や住民の理解なくして進まない。
「北九州市の洋上風力は港湾区域内で、市が公募した案件です。その前段階で漁協や住民への説明会を何度も行い、大方の合意を得た上で進めました。これ以上新規サイトを広げる計画はありません」
市民生活や雇用へのメリットについては「必ず波及効果はある」と断定する。
現在、浮体式拠点予定地の埋め立てが完了し、地質調査を進めている段階だ。
「2030年度末の稼働を目指し、関係企業や国と議論を深めながら拠点整備を進めます。製造からメンテナンス、輸出まで担える東アジアの総合拠点を構築するのが最終的な目標です」
洋上風力をめぐる環境は厳しい。大手企業ですら撤退を余儀なくされる中で、地方都市が主導して総合拠点を築くのは容易ではない。それでも北九州市は「港湾再生」という原点を軸に、独自の戦略を描く。
欧州では洋上風力が港湾都市の再生に成功例を生んだ。果たして「北九州モデル」は日本版の成功例となるか。2030年、その答えが見えてくる。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)