「気持ちのいい選択肢はだいたい間違い」修羅場化したSNS空間で炎上しないために

炎上対応に必要な3つのプロフェッショナルとは

――炎上に適切に対応するためにはどういうステップが必要ですか。

小松氏 まずは早期に専門家、つまり法律の専門家である弁護士と、リスクの専門家である危機管理コンサルタントに相談することです。場合によっては、広報の専門家であるPR会社にも加わってもらいます。これが定石となります。

 炎上したときに頭に血がのぼって、SNS上でいきなり応酬したりDMで対応しようとして、結果的にぐちゃぐちゃな対応になってしまうのが最悪のパターンです。会社として早期に対応方針をきちんと決めて、それに沿った対応をしていくことが重要です。

 まず、弁護士に確認して違法行為が明確にあることが分かった場合、あるいは被害者が出ている場合には、相手方にやめるよう会社として勧告・警告をします。それでもやめない場合は、残念ながら捜査機関に相談するしかありません。法的要件を踏まえた上で、捜査機関に証拠とともに速やかに相談に行くことです。

 もう一つのポイントは、SNSのプラットフォーマーとも速やかに連携し、場合によってはアカウントの停止を求めることです。プラットフォーマーは当然ながら違法行為を禁じる規約を設けていますので、このあたりを丁寧に対応するのが王道だと考えています。

――弁護士だけではなく、PR会社も入れた方がいい理由は。

小松氏 弁護士はもちろん法的なプロフェッショナルですが、レピュテーション(評判、風評)マネジメントについてはPR会社の方が長けています。法律よりももう少し幅広い概念でコミュニケーションしないと、さらに炎上したり、間違った情報が拡散しかねないので、チームに入ってもらうことが多いですね。

 炎上対応において重要なのは、感情に流されず、第三者の視点と長期的な時間軸をもって判断することだ。

 小松氏の言葉を借りれば、「ムカついたときほど冷静に」こそが、信頼を守る最も合理的な選択である。SNS上の発言や対応が企業価値に直結する時代、法務・広報・危機管理のプロフェッショナルと連携し、客観的かつ中長期的な視点から最善策を探ることが、炎上リスクを最小化する唯一の道といえるだろう。

(文=鴨川ひばり/ライター、編集者)

プロフィール
小松裕介:1981年生、中央大学法学部卒。新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト(現・伊豆シャボテンリゾート)で代表取締役社長に就任。経営再建を果たした後、敵対的買収を受けて社長職を追われる経験を持つ。大手YouTuber事務所VAZ(バズ)の再建を主導する過程で炎上対応を行う。現在は株式会社スーツ代表取締役CEOとして経営支援クラウド「スーツアップ」の開発・運営をするかたわら、危機管理コンサルタントとして敵対的買収防衛や企業不祥事対応等に携わる。