核融合バブル到来か…米国は1社あたり4200億円投資、日本は「FAST」構想で挑む

日本の「静かな快進撃」:京都フュージョニアリングとHelical Fusion

 一方、日本では「静かな快進撃」が続いている。京都大学発の京都フュージョニアリング(Kyoto Fusioneering)は、プラズマを取り囲むブランケットや熱交換システムなど、「核融合炉の周辺技術」に強みを持つ。同社はすでに三菱商事、丸紅などから累計200億円超を調達し、商用化を見据えた設計段階に入っている。

 また、東京大学発のHelical Fusionは、独自の「ヘリカル型磁場プラズマ装置」を用い、より小型で安定した核融合炉の実用化を目指している。同社は2023年に経済産業省の支援を受け、茨城県東海村で実験施設を建設中だ。BUSINESS JOURNAL編集部の取材に対し、「ヘリカル型はすでに科学的な段階を超え、工学フェーズに入っている」と強調し、「プラズマを1億度以上に加熱し、安定して維持することはすでに実証済み」と説明する。

 商用化に向けて残る課題は、「いかに効率よく発電に結びつけるか、そして商用炉として経済性を持たせるか」だと語り、「日本のものづくりの強みが生きる領域に、ようやく核融合が到達しました」と胸を張る。

 これらの企業は「国ではなく民間主導で核融合を推進する」新しい潮流の象徴といえる。

国家戦略「FAST」構想が示す方向性

 2024年11月、日本でも大きな動きがあった。産業界と研究機関が連携して立ち上げた「核融合発電実証プロジェクト(FAST)」が始動したのだ。目的は、2035年までに実証炉を建設し、2040年頃の商用化を目指すこと。京都フュージョニアリングを中心に、大学・電力会社・重工メーカーが連携する。

 京都フュージョニアリングはBUSINESS JOURNAL編集部の取材に対し、FASTについてこう説明する。

「京都フュージョニアリングの立ち位置では、商用炉への展開を早めるために各社が取り組んでいないプラズマ”以外”の領域の開発を加速している。プラズマのところは“速いスピードで実現するプレイヤーと組んで実現したい”と考えている。

 一方で、FASTはこのプラズマと京都フュージョニアリングの領域をつなげるプロジェクトでもある。京都フュージョニアリングが技術開発に取り組む熱の取り出しから発電につなげるプロセスを組み合わせば、それが発電実証としては最速になるだろう。これが当社の考えるシナリオで、結果として2040年代にいわゆる商用炉まで持っていくことを目指したい。実現すれば、日本に産業を呼び込むことができ、国益にも貢献できると考えている」

 エネルギー政策にも詳しい戦略コンサルタントの高野輝氏は、政府のエネルギー戦略について、こう分析する。

「高市早苗首相は経済安全保障担当相時代に、『エネルギーの自立は安全保障の柱。日本が核融合の知財と人材を握ることが国家戦略』と強調している。これは、トランプ再登場でエネルギー政策の地政学が再編される米国と呼応する形で、日本も独自の核融合ロードマップを描こうとする動きだ。

 ただし、課題は資金調達。日本の民間投資は米国のようなスケールに達しておらず、1社あたり数十億円規模にとどまる。国主導の基盤整備を進める一方、民間セクターが『資本市場からの資金をいかに引き出すか』が商用化の成否を左右する」

 さらに核融合の技術的・経済的課題については、次のように説明する。

「核融合は原理的にはクリーンであり、CO2を排出せず、放射性廃棄物も極めて少ない。しかし、エネルギー収支の観点からは、得られる出力が投入エネルギーを上回る段階(いわゆるブレークイーブン)を長時間維持することが最大の壁。加えて、装置の寿命、燃料の供給体制、トリチウムの管理、冷却システムの材料劣化といった課題も山積している。米CFSが目指す『SPARC』炉や日本の『HELIOS』構想でも、磁場閉じ込めの安定性が重要なテーマだ。