JAL・ANA「国内線共同運航」は実現するか…“実質赤字”の苦境が生んだ異例の蜜月

 こうした路線では、JALとANAが各々1〜2便を運航するより、どちらかが「幹事社」として運航し、もう一方はコードシェアとして販売するだけの方が機材稼働率の面でも合理的だ。いわば「実質的な減便を、減便に見せずに行う」ための仕組みとして、コードシェアが機能する可能性がある。早朝・深夜便や季節運航便でも同様の論理が働く。

「日本の国内航空市場は、欧米と比べてLCCのシェアがまだ低く、フルサービスキャリア2社が並立してきました。しかし人口減少と地方の需要縮小を考えれば、今の路線網を2社で維持し続けるのはいずれ限界が来る。コードシェアは『競争を残しながら効率化する』ための唯一のソフトランディング手段とも言えます。公取委の判断が分水嶺ですが、路線維持という公益性の観点から、相当程度の容認可能性はあると見ています」(同)

共同運航を阻む「3つのハードル」

ハードル① 独占禁止法(公正取引委員会)の壁

 最大の制度的ハードルが独占禁止法だ。国内線旅客シェアでJALとANAを合わせると7〜8割に達する。この2社が特定路線でコードシェアを行えば、事実上その路線の価格競争は消滅する。公正取引委員会がこれを「不当な取引制限」と認定するリスクは排除できない。

 ただし、欧米では経営危機にある地方路線を守るための「例外的独禁法適用除外(アンチトラスト・イミュニティ)」が認められた事例がある。日本でも、離島・過疎地路線については特別扱いの余地があり、路線ごとの個別審査というアプローチが現実的だ。まずは採算悪化が顕著で代替交通手段のない路線での試験的実施を、規制当局に対して申請する流れが考えられる。

ハードル② マイレージプログラムの「棲み分け」問題

 ブランド競争の最前線はマイレージプログラムだ。JALマイレージバンク(JMB)とANAマイレージクラブは、それぞれ数千万人規模の会員を抱える。コードシェア便を利用した場合、マイルをどちらのプログラムに積算するのか、上級会員の優先搭乗・ラウンジ利用権はどう扱うのか——これらは技術的な問題でなく、顧客ロイヤリティの根幹に関わる。

 最悪の場合、両社の上級会員が「自分の権利が劣後している」と感じ、乗り換えが起きかねない。コードシェアの恩恵よりも、マイレージ価値の毀損リスクの方が大きいと判断すれば、両社の経営陣は慎重にならざるを得ない。

ハードル③ オペレーションと安全基準の「微細な差」

 グランドハンドリングの共通化が示すように、両社のオペレーションは細部に至るまで独自の手順が積み重なっている。パイロットの訓練方式、キャビンアテンダントのサービス基準、機体メンテナンスのチェックリスト——これらは長年の社内文化として染みついており、統合には時間と摩擦を要する。

 安全基準の「どちらが高い・低い」ではなく、「違う」ことが問題だ。万が一インシデントが発生した場合、責任の所在があいまいになるリスクは、航空業界では絶対に避けなければならない。この問題を解決するには、慎重かつ段階的なパイロットプログラムが必要になる。

結論:もはや「メンツ」を語れる段階ではない

 JALとANAの協調は、2024〜2025年にかけて「競争の演出」から「生存のための協力」へと、その意味を変えた。グランドハンドリングの共同化、システムの統一——これらは単独では地味なニュースに見えるが、俯瞰すれば「共同運航という最後から二番目のステップ」が粛々と踏まれていることがわかる。

 両社が「フルサービスキャリア」として独立した路線網を維持するモデルは、人口減少・単価下落・コスト増という三重苦の中で持続可能性を失いつつある。ここで問われるのは、「JALかANAか」を競わせるという既存の競争観を、社会が手放せるかどうかだ。