JAL・ANA「国内線共同運航」は実現するか…“実質赤字”の苦境が生んだ異例の蜜月

 加えて、原油価格の高止まりと歴史的な円安が燃油コストを押し上げ、パイロットや整備士の人材不足による人件費高騰がダブルパンチとなっている。「黒字」という言葉の裏に、経営の断崖が迫っている——それが国内線の現実だ。

着々と進む「地ならし」…すでに始まっている共闘のフェーズ

●地方路線での「系列越え」の成功体験

 両社の協調は、突然始まったわけではない。2022年以降、九州を中心に伏線は張られていた。JALグループのオリエンタルエアブリッジ(ORC)とANAグループ系列との実務的な協力体制が、コードシェアの形で静かに進行していた。長崎や対馬、五島といった離島路線では、便数の維持自体が社会インフラとしての意味を持つ。採算よりも「路線の存続」が優先される離島・地方便では、競争より協調の方が合理的という認識が、現場レベルで共有されていったのだ。

●グランドハンドリングの共通化…「資格の壁」を崩した意義

 2025年に入り、両社の協調は本体レベルでの実務統合へと踏み込んだ。その象徴が、グランドハンドリング(地上支援)業務における機材・人員の共同利用だ。

 空港の制限区域内でのけん引車(プッシュバックトラクター)・給水車・汚水処理車などは、これまでJAL系とANA系で完全に独立して運用されていた。利用頻度の低い地方空港ではそれが顕著な非効率を生んでいたが、「安全基準やオペレーション手順が異なる」という理由で共有化は長年タブーとされてきた。

 この壁を崩したのが、人材不足という現実だ。地方空港でのグランドハンドリング人員の確保は限界に来ており、両社の現場が「やむを得ず」協力する状況が先行した。そこに経営レベルの合意が追いつく形で、正式な共同利用スキームが整備されつつある。資格要件の統一というかつては「不可能」とされた課題が、現場の切迫感によって解決への道が開かれた点は特筆に値する。

「グランドハンドリングの共同化は、表面的には地味な変化ですが、実は非常に深い意味を持ちます。作業手順書(マニュアル)の統合、無線周波数の共有、そして何より『誰の指揮命令系統に従うか』という問題を解決しなければならない。それをやり遂げつつあるということは、両社の間で相当な信頼関係と実務的な擦り合わせが積み上がっている証拠です」(同)

●国内75空港でのシステム統一…「一国二制度」の終焉

 さらに踏み込んだのが、国内約75空港(国内線対応空港の約8割)における搭乗ゲートシステムと手荷物保安検査システムの共通化だ。これまでJALとANAはそれぞれ独自の機器・システムを導入しており、同一ターミナル内に2系統の設備が並立するケースも珍しくなかった。

 設備投資・保守コストの重複は莫大だ。「競争のシンボル」として維持されていたその非効率さを解消するには、それ相応の「背に腹は代えられない」という経営判断が必要だった。2025年の共通化は、まさにその決断の表れである。乗客にとっても、チェックイン端末や保安レーンを案内するスタッフの相互補完が実現することで、利便性の向上が期待される。

JAL・ANA本体による「コードシェア」は実現するか?

 インフラの共通化が進む先に浮かぶのが、「コードシェア(共同運航)」の本体間実施だ。一つの便に両社の便名を付け、互いの顧客を相乗りさせるこの仕組みは、現在は国際線での一部運用や、系列会社間での限定的な活用にとどまる。しかし経済合理性という観点から、本体間でのコードシェアは無視できない選択肢になりつつある。

●現実的なシナリオ:採算の厳しい路線での「便の分け合い」

 羽田—伊丹・福岡など競争激しい主要幹線で両社が共同運航するシナリオは現実的ではない。問題はそれ以外の路線、特に「地方幹線」と呼ばれる中規模都市間の路線だ。例えば、大阪—鹿児島や名古屋—秋田といった路線では、すでに便数が絞られており、空席率が高止まりしているケースが多い。