アマゾン、「打倒スターリンク」に1.8兆円の大勝負…アップルを巻き込む巨大包囲網

ビジネスの勝者は「宇宙」で決まる

 アマゾンにとって1.8兆円という投資は、EC覇者が「次の10年のインフラ」を確保するための必要経費として位置づけられる。注目すべきは、競争の質的変化だ。かつての宇宙ビジネスは「いかに低コストで衛星を打ち上げるか」という技術競争だった。しかし今や、スペクトラムライセンスの取得、主要デバイスメーカーとの排他的提携、クラウドとの統合——すなわち「プラットフォームの囲い込み」が勝負の本質になっている。

 アマゾンが2028年のD2D本格始動を見据えて描く青写真は、「数億のエンドポイントを世界中でつなぐ宇宙ネットワーク」だ。スターリンクとの衛星数の差は依然として大きいが、iPhoneという世界最大のデバイスエコシステムと、AWSという世界最大のクラウド基盤の両方を味方につけることができれば、単純な衛星数の比較は本質的な競争指標ではなくなる。

 地上でAmazon.comが「翌日配送」という物流インフラで流通を支配したように、アマゾンは今度は宇宙という次元でインフラを握ろうとしている。その野望が成就するかどうかは、規制当局の判断、アップルとの関係深化、そして技術展開のスピードにかかっている。1.8兆円の「空中戦」は、まだ始まったばかりだ。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=小平貴裕/ITジャーナリスト)