なぜシャトレーゼは加盟店が儲かるのか?“ロイヤリティなし”経営の構造分析

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シャトレーゼ本社工場(「Wikipedia」より)

●この記事のポイント
シャトレーゼは「ロイヤリティ0%」という異例のFCモデルを武器に、2025年3月期売上高1,613億円、国内外1,000店舗体制へ急拡大した。利益源はSPA型の製造・物流一体運営による卸売マージンにある。一方で、工場稼働遅延による外国人労働者問題や下請法勧告も発生。急成長を支える供給網とガバナンス強化が次の成長局面の焦点となっている。

●目次

「ロイヤリティ0円・加盟金実質ゼロ」でも儲かる仕組みの正体

 2024年1月、和洋菓子大手のシャトレーゼ(山梨県甲府市)は国内外1,000店舗目となるフランチャイズチェーン(FC)店を横浜市にオープンさせた。直近では年間100店を超えるペースで店舗網を広げており、売上は2019年3月期の662億円から2023年3月期には1,327億円へと5年で倍増している。さらに2025年3月期の連結売上高は1,613億円に達した。

 この急成長を支えるFCモデルの最大の特徴は、ロイヤリティ(加盟金ランニングフィー)を徴収しないという点だ。セブン-イレブンは粗利益の43〜76%の定率制チャージを採用しており、高い場合は70%に達することもあるのに対し、シャトレーゼは加盟店から売上の一部を徴収しない。この数字の差は、加盟店経営者にとって死活問題に等しい。

 では、本部はどこで利益を得るのか。

 答えは「製造マージン」にある。シャトレーゼは農家との直接契約から製造・物流・販売まで一貫して自社で完結させるSPA(製造小売)モデルを採用しており、問屋・卸業者が介在しない。問屋を通さない工場直売店を1985年に実験的に出店したことが好評を博し、翌86年から全国展開が始まった。本部は商品を加盟店に「卸す」ことで利益を確保し、加盟店は低い仕入れコストで高い利益率を維持できる。ロイヤリティという「上納金」の概念そのものが不要な収益構造が成立しているのだ。

 FC・フランチャイズビジネスの実務に精通するコンサルタントはこう解説する。

「一般的なFCは本部がブランドとノウハウを提供し、加盟店から定期的なロイヤリティで収益を得ます。シャトレーゼの場合、収益の源泉がロイヤリティではなく製品の卸売マージンです。本部が製造能力を維持しさえすれば、加盟店が増えるほど卸売収入が増加するため、スケールメリットが本部・加盟店双方に作用する設計になっています」(経営コンサルタント・田辺晃成氏)

広告費ゼロに近い「素材への再投資」が口コミを生む

 コスト競争力の源泉はもう一つある。シャトレーゼはテレビCMをほとんど打たない。大手食品メーカーは売上高の数%を広告宣伝費に充てるのが一般的だが、シャトレーゼはその分を原材料費と素材開発に振り向ける。「安いのに美味しい」という顧客体験そのものが最大の集客装置となり、口コミが新規顧客を呼ぶ好循環を生み出している。

 この構造は加盟店オーナーのモチベーション設計とも連動している。ロイヤリティが0%であれば、売れば売るほど自店の利益が積み上がる。過剰な廃棄ロスにさえ気をつければ、接客や品揃えへの自発的な工夫が直接オーナーの収益に反映される。「本部のために売る」ではなく「自分のために売る」という動機付けが、チェーン全体のサービス品質を底上げする効果がある。

 シャトレーゼが体現するのは、創業者・斉藤寛氏が掲げた「三喜経営」——顧客・取引先・社員の三者が喜ぶ経営——という理念だ。FCオーナー(取引先)が儲かる仕組みを先に担保することで、本部のプラットフォーム(製造・物流網)が自ずと拡大するという逆転の発想は、現代のプラットフォームビジネスの文脈でも示唆に富む。