特筆すべきは、業界最大手マクドナルドとの向き合い方の巧みさである。真っ向勝負を避けながらも、競合の動きを緻密に観察し、世間の「ハンバーガー関心度」が高まるタイミングに独自のキャンペーンを重ねる「波乗り戦略」を採用した。2020年に秋葉原の隣接するマクドナルドが閉店した際には「22年間たくさんのハッピーをありがとう」と記したポスターを掲出。文面の縦読みには「私たちの勝チ」というメッセージが隠されており、SNSで瞬く間に拡散した。渋谷センター街店では、対面のマクドナルド客席から見た場合にのみ正対して読める屋外広告を設置し、推計3億円相当の広告効果を生んだとされる。
2024年には、顧客から空き物件情報を募集し、契約成立時に紹介者へ10万円を贈呈するキャンペーン「バーガーキングを増やそう」を実施。「お金配り」への批判リスクを承知で踏み切ったこの施策は炎上することなく、12件以上の物件成約という実績とともに大きな話題を集めた。
「バーガーキングの手法は、限られた予算で最大の認知拡大を狙うPRドリブン型マーケティングの好例です。競合他社をあからさまに貶めることなく、ユーモアで”共感の連鎖”を生むアプローチは、日本市場においても十分機能することを証明しています」(同)
ブランド戦略と並行して整備されたのが、顧客の購買行動を段階的に設計するカスタマージャーニーの仕組みだ。
かつての「高い・食べにくい」というイメージを払拭するため、同社は「オールデイキング」と呼ぶEDLP(Everyday Low Price)型セットメニューを導入した。時間帯や曜日を問わず550〜650円程度の一定価格で利用できるこのセットは、価格に敏感なライト層をファストフードの日常利用圏に引き込む役割を担う。
一方、アプリを活用した個別クーポン戦略では、購買履歴をもとに限定バーガーや高単価のワッパー類へのステップアップを促す。安売りで終わらせず、「本格バーガーを食べるならバーガーキング」という指名買いへとつなげるワンオンワンマーケティングの設計が、客単価と来店頻度の双方を向上させた。
成長エンジンのもうひとつの柱がフランチャイズ(FC)戦略だ。2026年には年間99店舗の出店を計画しており、2028年末までに600店舗体制を目指す。現在FC店舗は50店舗程度だが、将来的には全体の約半分をFCで担う計画だ。
最大の訴求ポイントは、投資回収期間の短さにある。同社によれば、バーガーキングの店舗投資は平均3年未満で回収できるケースが多いという(食品産業新聞社、2026年3月報道)。2025年の平均月商は約1,700万円と公表されており、外食FC業界の平均的な回収期間が5〜7年とされることを踏まえると、異例の効率性といえる。
2026年4月には既存飲食FCからの「乗り換えプラン」も発表し、設備投資の最大半額(最大4,000万円)をバーガーキング側が負担するという積極策も打ち出した。好立地での駅前出店ではドラッグストアとの競合が激化しているという課題も存在するが、郊外ロードサイド型でのドライブスルー展開(2028年以降を想定)も視野に入れており、出店の多様化を図っている。
持続的成長を支えるのは、ブランドや商品だけではない。組織の人材構造にも、バーガーキングの独自性がある。
2025年時点で、本部組織の99%は転職者で構成されており、全国1万人超のスタッフのうち約3分の1を外国籍の人材が占める(ITmedia Business Online、2025年5月報道)。慢性的な人手不足が続く外食産業において、外国籍スタッフの積極採用と、日本語教育支援などの長期的なキャリア投資は、定着率とモチベーションの向上につながっているとみられる。