●この記事のポイント
壱番屋の2026年2月期決算は売上高655億円と過去最高ながら、コメ高騰で純利益19.2%減。一方、25年産米の大幅増産で民間在庫は329万トンに急増し、店頭価格は初の前年割れ。今秋の「コメ余り」は外食を救うのか。値下げ圧力や契約調達のタイムラグなど3つの罠と、調達改革・脱白米依存の生存戦略を解説する。
カレーハウスCoCo壱番屋を展開する壱番屋が4月に発表した2026年2月期連結決算は、売上高が前期比7.4%増の655億円と過去最高を更新しながら、営業利益は4.3%減の47億円、純利益は19.2%減の25億円という「増収減益」に終わった。同社が「過去に例がない」と表現した原材料価格の高騰、とりわけコメの仕入れコスト上昇が利益を直撃した格好だ。
ところが足元の市場では、まったく逆の現象が進行している。2025年産米の大幅増産で民間在庫は329万トンと前年比約70万トン増に膨らみ、スーパーの平均店頭価格は2026年3月、週次集計開始以来初めて前年同期を下回った。「足りない」「高すぎる」と騒がれたコメが、わずか1年で「余る」局面に転じたのである。今秋の新米シーズンには一段の値崩れを警戒する声すらある。
では、コメ高で利益を削られた外食産業は、この「コメ余り」で救われるのか。結論を先取りすれば、話はそれほど単純ではない。
●目次
壱番屋の決算を分解すると、外食における原材料構成の重みがよくわかる。同社は2025年8月に価格改定を実施し、国内既存店の客単価は前年同期比8%前後伸びた。しかし客数は3.5%減と回復が鈍く、値上げで単価を稼ぎながらコメ・食材・物流費の上昇に追いつけなかった構図だ。カレーライスという商品は文字通り「ライス」が主役であり、客単価1000円前後のビジネスモデルでは、コメ原価の数十円単位の上昇が利益率を直接侵食する。
この「白米依存リスク」は業態間で明暗を分けた。牛丼チェーンや定食チェーンなど白米を大量消費する業態は同様の逆風を受けた一方、パスタ・ピザ主体のサイゼリヤ、うどんの丸亀製麺など小麦・めん類主体の業態は相対的に影響が軽微だった。原材料ポートフォリオの「単一依存」が、有事にいかに脆弱かを市場は目の当たりにしたといえる。
外食産業のコスト構造に詳しい外食産業コンサルタントの杉田誠氏はこう指摘する。
「外食の食材原価率は一般に30〜35%。主食材が一つの穀物に集中している業態は、その穀物の価格変動がほぼそのままP/Lに転写される。今回の米騒動は、各社に『主食材ヘッジ』という新しい経営課題を突きつけた」
なぜコメは一瞬で余り始めたのか。要因は大きく三つある。
第一に、農家の猛烈な主食用米シフトだ。2024〜25年の記録的高値を見た生産者は、補助金対象の飼料用米や加工用米から、高く売れる主食用米へ一斉に作付けを寄せた。25年産主食用米の収穫量は前年比約67万トン増の746.8万トンと1割増。天候にも恵まれ、作況指数は豊作を示す104を記録した。
第二に、需要側の構造的縮小である。国内のコメ需要は人口減少と食の多様化で年間約10万トンずつ減り続けており、2025年産の需要量は697万〜711万トンと見込まれる。加えて高騰期に麺類やパン、パックご飯へ移った消費者が、価格が下がっても完全には戻っていない。2026年6月末の民間在庫は215万〜229万トンと直近10年で最多水準に達する見通しだ。