アップル、Mac・iPadを最大9万円超値上げ…なぜiPhoneだけ価格据え置き?

 iPhoneが優先的に価格を守られる背景には、iPhoneがApple Watchやサービス部門(App Store、iCloudなど)へ顧客を呼び込む最大の「入り口」であるという収益構造がある。ITジャーナリストの小平貴裕氏は、「iPhoneはアップルにとって単体の収益源というより、周辺機器やサブスクリプション型サービスへの導線としての役割が大きい。価格を急に引き上げてユーザー離れを起こせば、経済圏全体の収益に響きかねない。他製品での値上げで利益を確保しつつ、iPhoneの値上げは可能な限り先送りする、というポートフォリオ戦略が透けて見える」と分析する。

 実際、複数のアナリスト予測では、2026年秋に発表が見込まれる「iPhone 18」シリーズについて、ベースモデルの価格は現行の「iPhone 17」シリーズと同水準を維持する「アグレッシブな価格設定」になる一方、大容量ストレージモデルでは100〜200ドル程度の値上げが行われる可能性が指摘されている。既存モデルの価格を急に上げるより、新モデルの価格設定という形で調整するほうが消費者の反発を抑えられる、という読みがあるとみられる。

流通現場で先行する「事実上の値上げ」

 アップル公式の価格が据え置かれる一方で、流通・キャリアの現場ではすでに異なる動きが出ている。ソフトバンクは2026年6月12日、オンラインショップでiPhone 17(256GB)の本体価格を15万9840円から16万4160円へ、iPhone 17e(256GB)を12万4560円から13万3200円へと、それぞれ数千円規模で引き上げた。ドコモも同年4月17日、iPhone 17e(256GB)を11万9900円から13万1219円に値上げしている。いずれも端末購入プログラムの残価(下取り想定額)を同時に引き上げることで、実質負担額自体は据え置く設計にしているのが特徴だ。

 家電量販店では、ヨドバシカメラのSIMフリー版iPhoneがアップル公式より1万〜3万円ほど高い価格で販売されている状況が確認されており、ビックカメラやAmazonでも一部モデルが品薄・販売休止となるなど、流通網の対応にばらつきが出ている。この価格差については、単純な便乗値上げではなく、2026年11月に予定される消費税免税制度の見直し(購入時免税から出国時リファンド方式への移行)を見据えた対応という見方もあり、背景は一様ではない点には注意が必要だ。いずれにせよ、アップル公式価格が据え置かれているからといって、実際の店頭・キャリア価格まで変わっていないとは限らない、というのが現時点での実態である。

伸びる「認定中古」市場

 こうした価格高騰を受けて存在感を増しているのが、キャリア各社が展開する「認定中古品」市場だ。ドコモの「docomo Certified」では、5G WELCOME割の適用によりiPhone一部モデルが2万円を切る価格で販売されるケースもあり、バッテリー最大容量80%以上を保証する検品体制や30日以内の初期不良交換対応など、安心材料を整えたうえでの販売が特徴となっている。

 市場全体の数字でも、この動きは裏付けられる。MNP総研の調査によれば、2024年度の中古スマートフォン販売台数は321万4000台と前年度比17.7%増となり、過去最高を更新した。要因の一つとして、キャリアやメーカーによる「認定中古品」の取り扱い拡大が挙げられている。給与水準が大きく伸びない中で、20万円近い最新機種を2年ごとに買い替えるという従来型のサイクルが、多くの消費者にとって現実的な選択肢ではなくなりつつある状況がうかがえる。