「グーグル終焉」説一転、純利益18兆円…検索広告を捨てずに脱皮したアルファベット

「クラウド事業の82%という成長率は、単なる需要の取り込みだけでなく、アンソロピックなど生成AI企業への出資を通じて自社インフラの”バイヤー”を囲い込んでいる効果も大きい。検索とクラウドの二本柱化は、広告市況の変動に対する保険としても機能している」(国内証券会社 テクノロジーセクター担当アナリスト)

脱皮② 11年前の900万ドルが数兆円規模に…スペースX投資という「隠れた含み益」

 もう一つの脱皮は、投資先企業の株式評価益だ。今回の純利益を押し上げた最大の要因は、保有株式の評価益を中心とする投資利益で、その規模は990億3100万ドルにのぼる。この評価益が税引き後ベースで純利益を771億ドル押し上げたとみられ、前年同期の評価益がわずか12億9000万ドルだったことと比べると、その膨らみ方は突出している。

 この評価益の中心にあるのが、宇宙開発企業スペースXへの出資だ。アルファベットは2015年、スペースXに約9億ドルを投資したとされる。その後スペースXは非上場のまま企業価値を拡大させ続け、2026年6月についにIPO(新規株式公開)を果たした。米当局への開示資料によれば、アルファベット傘下のグーグルは2025年末時点でスペースX株式の6.11%を保有していたとされ(その後のxAIとの合併により持ち分は5%前後に希薄化したとの見方もある)、IPO時の評価額(2兆ドル規模)を踏まえると、その持ち分価値は日本円換算で10兆円を優に超える水準に達していたと試算されている。

 つまりアルファベットは、11年前にリスクを取って投じた出資額を、非上場のまま静かに育て続け、上場という「出口」のタイミングで一気に会計上の利益として顕在化させたことになる。なお上場後のスペースX株価は変動しており、含み益の規模は今後の株価動向次第で増減する点には留意が必要だ。

「スペースXへの出資は、グーグルの衛星通信事業(スターリンクと競合する分野)との緊張関係も指摘されてきたが、結果として財務面では”最大の外部投資家”としての地位が莫大なリターンを生んだ。事業シナジーだけでなく、純粋な財務リターンを狙う視点も、テック企業の投資判断には必要だという好例だ」(スタートアップ投資に詳しい金融アナリストの川﨑一幸氏)

 こうして見ると、アルファベットはもはや「検索会社」という枠には収まらない。自社の技術と、有望な未上場テック企業を長期で育てる、いわば超巨大なメガファンドとしての性格を強めている。

なぜ日本の大企業は「同じ真似」ができないのか

 ここまでの構図を踏まえると、多くの日本企業が抱える課題が浮かび上がってくる。それは「時間軸」と「投資判断の基準」の違いだ。

 日本企業も企業内投資(CVC:コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を通じて新規事業の種を探す取り組みは行っている。しかし実務の現場でよく指摘されるのが、次のような傾向だ。

 出資判断の基準が「本業とのシナジー(相乗効果)」に偏りがちで、本業と直接関係の薄い事業には投資判断がおりにくい
 本業の業績が悪化すると、真っ先に新規事業やCVCの予算が削減され、撤退の判断が下される
 単年度・数年単位の投資回収を前提とするため、投資規模が小粒にとどまりやすい

 一方でアルファベットは、検索広告という圧倒的なキャッシュフローを背景に、クラウドやスペースXのような「未来の巨大市場」に対して、10年単位の時間軸で投資を継続してきた。2015年の出資から2026年の上場まで、実に11年である。この間、事業シナジーが目に見える形で語られることはほとんどなく、あくまで財務的なリターンを狙った長期保有だった点も特徴的だ。