幹細胞・免疫細胞を凍結保存するビジネス…富裕層が殺到する「細胞の預金口座」

「保管サービスの善し悪しを見極めるポイントは、効能を語る言葉の強さではなく、むしろ逆です。特定細胞加工物製造事業者としての届出の有無、GMP水準の管理体制、災害時のバックアップ拠点の有無といった、地味だが検証可能な情報を開示しているかどうかが判断材料になります」(同)

長寿時代における「新しいインフラ企業」は誰か

 1990年代のIT黎明期において、データセンターがインターネット革命を支える物理インフラとなったように、ロンジェビティ時代においては「細胞・バイオデータの保管と解析基盤」が次世代ヘルスケアを支えるインフラになっていく可能性がある。

 その担い手は、必ずしも医療機関だけとは限らない。細胞や検体を安全に運ぶ物流(コールドチェーン輸送)、遺伝情報という機微データを守るIT・セキュリティ、同意取得と二次利用管理を担う法務・データガバナンス、万が一の細胞喪失に備える保険——医療の枠組みを超えた異業種からの参入余地は小さくない。

 もっとも、現時点でこの市場が提供しているのは「治療の確約」ではなく「将来の技術革新に備えた選択肢の保管」であるという点は、事業者・利用者双方が冷静に認識しておくべきだろう。市場規模の推計一つとっても調査会社によって数字が大きく異なるように、この産業はまだ発展の初期段階にあり、標準化されたビジネスモデルも確立されていない。誇大な期待でも過度な懐疑でもなく、法規制と品質管理という地味だが本質的な基盤の上に、どの企業がインフラとしての信頼を積み上げていくか——それが今後の焦点になる。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=三好泰一/医療アナリスト)