「闇バイト強盗」が生んだ防犯バブル…警備員不足のなかで利益24%増のカラクリ

 ある警備会社の経営者はこう語る。

「正直に言えば、人を採用できないことが、結果的に会社の利益体質を強くしました。警備員を張り付けるコストは年々上がる一方ですが、AIカメラと遠隔監視センターを組み合わせれば、少人数で広い範囲をカバーできる。お客様にとっても、常駐警備よりコストを抑えられるケースが多く、双方にメリットがある提案として受け入れられています」

防犯ビジネスは一過性の「特需」から「社会インフラ」へ

 ここまで見てきたように、防犯業界の好業績は、単なる一時的な「事件特需」ではない。「社会の不安の高まり(需要)」「サブスク化による収益構造の転換(ビジネスモデル)」「人手不足を起点にしたAI遠隔警備の普及(DX)」という3つの要因が同時に噛み合った結果としての、構造的な高収益化だと捉えるのが実態に近い。

 一方で、この変化は新たな課題も生み出しつつある。まず懸念されるのが、防犯にコストをかけられる層とかけられない層のあいだに生まれる「防犯格差」だ。月額課金型のサービスは、初期費用に加えて継続的な支出が前提となるため、経済的に余裕のある世帯ほど手厚い防犯対策を講じやすくなる。侵入窃盗・強盗のリスクが、支払い能力によって偏在するような構図が固定化すれば、社会全体としての防犯力の底上げにはつながりにくい。

 もう一つの課題は、テクノロジー依存そのものが抱えるリスクだ。クラウド経由で映像を確認・記録する仕組みは、通信障害が発生した際に機能が止まってしまう可能性がある。また、ネットワークに接続された防犯カメラそのものが、サイバー攻撃の標的となるリスクも指摘されている。侵入者から住まいや資産を守るための機器が、別の経路から狙われるという皮肉な事態を避けるためにも、防犯機器メーカーやサービス事業者には、物理的な防犯性能だけでなく、通信の冗長性やサイバーセキュリティ対策への継続的な投資が求められる。

「闇バイト強盗」への恐怖が社会に広がるなか、防犯業界が急成長を遂げていること自体は、多くの人にとって歓迎すべき側面もあるだろう。ただし、その成長を支える構造を正しく理解しておくことは、消費者が防犯サービスを選ぶうえでも、業界の持続可能性を考えるうえでも、決して無駄にはならないはずだ。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=岩井裕介/経済ジャーナリスト)