ドコモの銀行、最大4.5%還元は本当にお得か…楽天・au・PayPay包囲網への勝算

出血大サービスか、計算された投資か

 次に問われるべきは、この還元原資をどう回収するのかという持続可能性の視点だ。銀行業は決済手数料だけで見れば利幅の薄いビジネスであり、4.5%相当のポイント原資を決済収益だけで賄うのは難しい。住信SBIネット銀行はこれまで預金残高約10兆円、口座数800万超を有するネット銀行大手であり、この規模の経済を生かした低コスト運営が土台にはある。ただし、ドコモが目指す真の収益源は、住宅ローンや資産運用(マネックス証券連携)、カードローンなど、利幅の厚い高単価金融商品へのクロスセルにあるとみるのが自然だ。

 実際、ドコモSMTBネット銀行は三井住友信託銀行との連携も強化し、住宅ローンの取扱拡大や資産運用・相続関連商品の提供を計画している。決済還元はあくまで「入口」であり、そこで獲得した顧客基盤をいかに高単価商品へ誘導し、LTVを最大化できるかが、この事業モデルの持続可能性を左右する。

 過去には楽天銀行やauじぶん銀行も、サービス開始当初は手厚い還元を打ち出しながら、その後段階的に条件を見直してきた経緯がある。ドコモの「初年度最大4.5%」という表現にも、還元条件が将来的に変わりうることを示唆する含みがある。預金獲得による資金調達コストの低減と、住宅ローン・資産運用商品への還元循環をどれだけ早く軌道に乗せられるかが、還元水準を維持できるかどうかの試金石になるだろう。

競合にはない全国約2,000のドコモショップという対面チャネル

 ドコモの金融戦略においてもっとも特徴的なのは、楽天銀行やPayPay銀行のような純粋ネット銀行にはない、全国約2,000店舗規模のリアル店舗網(ドコモショップ)を持つ点だ。スマートフォン契約手続きのオンライン化や格安プランの普及によって、ドコモショップへの来店動機はこの数年で減少傾向にあり、店舗数自体も見直しが進められてきた経緯がある。その既存インフラを、住宅ローン相談や資産形成といった対面ニーズの受け皿として再定義できるかどうかは、今後の収益性を左右する重要な論点になる。

 デジタル完結を好む若年層に対して、対面での説明や相談を重視するシニア層や、住宅ローンのような高額・長期の意思決定を伴う商品を検討する層には、店舗での対面サポートが後押しになりうる。一方で、店舗スタッフに金融商品の説明・提案ができる知識や資格を持たせる教育コストは新たな課題であり、単純な既存インフラの転用では済まない運用面のハードルも残る。

「ネット銀行同士の競争は基本的に低コスト・低金利・高還元の消耗戦になりやすい。対面チャネルを併せ持つドコモの銀行は、住宅ローンや資産運用のような“相談を伴う商品”で差別化できる可能性がある。ただし、店舗スタッフの金融リテラシー教育をどこまで本気で行うかが、絵に描いた餅で終わるかどうかの分かれ目になる」(同)

通信キャリア金融バトルの到達点と、他業種への示唆

 住信SBIネット銀行の商号変更とブランド刷新により、NTTドコモ、KDDI(auじぶん銀行)、ソフトバンク(PayPay銀行)、楽天(楽天銀行)という携帯大手4社すべてが、通信・決済・銀行・証券のフルラインナップを揃えたことになる。通信キャリアを軸にした「経済圏」competitionは、これで一つの区切りを迎えたと言えるだろう。

 ここから他業種が学べる示唆は、単体のデジタル施策だけでは顧客獲得に限界があるという点だ。強力なデジタルインセンティブで新規の入口をつくり、リアル拠点の信頼感を使って高単価・高関与商品へつなげるというハイブリッドモデルは、金融業に限らず、小売や不動産、保険など「対面での説明」が購買決定を左右する業種にも応用できる考え方である。ドコモの銀行の成否は、そうした対面・非対面融合ビジネスの一つの試金石として、今後も注視する価値があるだろう。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=川﨑一幸/金融アナリスト)