西友、営業益28%増の裏側…トライアルの「タイパ戦略」と大手GMS衰退の真相

 それでも中期的には、トライアルは2029年6月期に売上高1.6兆円という目標を掲げ、2027年6月期から3年間で西友の30店舗を「トライアル西友」業態に転換する計画を公表している。低コストのオペレーションを土台に、浮いた原資を価格や体験の改善に再投資するというサイクルが軌道に乗れば、業界内での存在感はさらに増す可能性がある。

スーパーは「モノを買う場所」から「時間を買う場所」へ

 西友とトライアルの事例が示すのは、DXの本質が「自社の効率化」だけでなく「顧客のストレスや無駄な時間の削減」に置かれたときに初めて、業績という結果に結びつくという点だ。老舗の看板を掲げたまま長く苦戦してきた企業であっても、体験価値の再設計によって数字を伴う回復軌道に乗せられることを、西友の事例は示している。

 一方で、イオンやセブン&アイをはじめとする大手グループも、値上げ環境下でのコスト吸収や事業構造の見直しに手をこまねいているわけではなく、店舗網の再編や商品戦略の見直しを進めている最中だ。今後は、西友の店舗改装がどのペースで進むか、そして競合各社がどのような形でテクノロジー投資と収益性の両立を図っていくかが、日本の小売業界全体の行方を占ううえで注目される。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=永田由紀/流通コンサルタント)

【主な参照データ】
・トライアル、「スーパー」テックで西友復調 27年6月期営業益28%増(日本経済新聞)
・西友/楢木野社長「業績好調の要因は顧客の支持回復と現場の適応力」(流通ニュース)
・トライアルHD 決算/6月期売上高1兆3471億円、西友の統合で大幅な増収増益(流通ニュース)
・西友をのみ込んだトライアルが1兆円企業へ! 決算から今後を読み解く(Impress Watch)
・トライアル、Amazonも開発 スマートショッピングカートがもたらす、真の顧客価値とは?(ITmedia ビジネスオンライン)
・関東スーパー業績ランキング/各社増収もイオン系は減益、6月決算のトライアルも注目(流通ニュース)
・セブン&アイ、イトーヨーカ堂などもつ「ヨーク・ホールディングス」売却手続き完了 米ベインに(日本経済新聞)
・九州発のスーパー・トライアルが「小売業のAI化」を実現できた理由(ダイヤモンド・オンライン)
・「リテールAI技術を活用し、流通業界を変革」を掲げる、トライアルHDが新会社Retail AIを設立(PR TIMES)