原状回復・撤去工事の需要:大型マシンの解体・搬出や防音床の撤去には専門的なノウハウが必要であり、フィットネス施設特有の工事に慣れた業者への発注が増えている可能性はある。ただしこれも個別の受注動向として公表されている統計は乏しく、あくまで倒産件数の増加から論理的に推測される派生需要として捉えるべきだろう。
「閉店した店舗の造作をそのまま引き継げる居抜き物件は、初期投資を抑えたい次の出店者にとって魅力的です。ただし、前のテナントがなぜ退店したのかという収益構造上の問題まで引き継いでしまうと、同じ轍を踏みかねません。立地や設備だけでなく、なぜ撤退に至ったのかを分析した上で出店を判断することが重要です」(同)
一連の倒産増加は、単純な「筋トレブームの終わり」ではない。コロナ禍を機に急拡大した「低価格・省人化」モデルが、円安による輸入コスト増、エネルギー価格の高止まり、人件費上昇という外的要因と、消費者の可処分所得縮小・タイパ志向という内的要因の両面から同時に締め付けられた結果と見るのが実態に近い。
TDBが年間40件到達の可能性に言及するように、当面この淘汰の流れが急速に収まる材料は見当たらない。今後は、圧倒的な店舗数と会員基盤を武器にコストを吸収できる大手チェーンのスケールメリットと、パーソナルトレーニングや専門コンセプトなど明確な付加価値を打ち出せる特化型事業者への二極化が一段と進むとみられる。逆に言えば、価格の安さだけを訴求し、体験価値や継続動機を提供できない「中間層」の無特徴な店舗から淘汰されていく構図は、今後も業界再編の基本パターンとして続く可能性が高い。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=田辺晃成/経営コンサルタント)
【主な参照データ・出典】
東京商工リサーチ「『フィットネスクラブ』の倒産が過去最多を更新へ 1-8月は26件、市場拡大もレッドオーシャンの兆し」(2026年9月7日)
東京商工リサーチ「フィットネスクラブの倒産が急増、過去最多を更新中」(2024年3月7日)
帝国データバンク「『フィットネスクラブ』の倒産動向(2026年1-7月)」(2026年8月13日)