6000万IDの購買データを武器に…伊藤忠・ファミマ・ドコモ・CA「4社連合」が狙う次の市場

 その先行例としてウォルマートの名を挙げ、海外の成功事例がニュースとして伝わったことが、国内の小売事業者の背中を押したと国立氏は振り返る。データ・ワンにとっての転機は、今年8月に踏み切った「Consumer Intelligence Agency」という旗印だ。会社としては今年で6年目、最初の5年間はリテールメディアという市場そのものを作る「立ち上げ期」だったといい、事業規模も0から数百億円規模へと成長したタイミングで、次のフェーズへと舵を切った格好になる。

「単にデータを使っています、メディアを使っています、ではなく、そこから今まで見えていなかった価値をどう創出するか。クライアントが求めているのはそこですし、我々もそこを新たな価値として作り出さなければいけない。そこでブランディングを変えました」

ワンIDでつなぐ、生活者の「複数の顔」

 データ・ワンが「見えていなかった価値」を語るとき、核になるのが同社が「Life-Liveデータ」と呼ぶ、10兆円規模の生活消費データだ。コンビニで平日に何を買い、週末にスーパーでどんな食料品を買い、夕方にドラッグストアで何を買うか――業態をまたいだ購買行動が、一つのIDでひも付いている。

「今、多くの事業者さんは、コンビニはコンビニ、ドラッグはドラッグでデータが屋号ごとに切り分かれていて、つながっていません。我々は、世の中でおそらく唯一、それをワンIDでつないでいます」

 この横断がもたらす発見は、単純な購買データだけでは見えてこないものだという。国立氏が挙げた例が象徴的だ。

「コンビニで毎日エナジードリンクを購入している人がいて、激務に耐えるビジネスマンタイプなのかなと思ったら、実は週末はドラッグストアで高級な入浴剤を買っていた。平日は体を酷使しても、週末はたっぷりお金をかけてでも自分の体をケアしたい、意識の高い人だったということが、データをつなげて初めてわかるんです」

 平日と休日、昼と夜、自宅の近くとオフィスの近く――同じ生活者でも、買い物の文脈によって「人格」は2面にも3面にも分かれる。それを横断して見なければ、生活者が本当に求めているものは見えてこない、と国立氏は語る。この分析を支えるもう一つの要素が、AIの活用だ。同社では200万SKU、10兆円規模の購買データを管理しており、人間の手だけでは分析しきれない規模のデータから、AIが購買ニーズの重なりを洗い出しているという。

AIは事実を出すだけ、解釈するのは人間

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 分析エンジンの中身について踏み込んで聞いた。需要予測やプロファイリングを支えるシステムは、自社開発なのか、それとも外部の技術に頼っているのか。

「自社でDMP(データマネジメントプラットフォーム)を開発して、そこに全部のデータを入れています。AIも、ジェミニやクロードなど、いろいろなAIを組み合わせて使い倒しています」

 インフラの部分では、AWSやDatabricksといった外部のクラウド基盤を利用しているが、その上に乗せるアルゴリズムそのものは自社で開発しているという。分析基盤の土台は外部の技術を借りつつ、その上の知見は自分たちで積み上げる――このハイブリッドな構成が、データ・ワンのAI活用の実態だ。

 ここで国立氏が強調したのが、AIと人間の役割分担についての明確な線引きだった。

「AIが出してくるアウトプットは、あくまで参考にしかしないということを全社で徹底しています。ファクトデータと照らし合わせるところもAIを使いますが、最後にそれを解釈して、お客様に出すものにするところは、必ず人が入るようにしています」