
●この記事のポイント
Startale Japanが、年利5%・1口10万円・総額9990万円の「ステーブルコイン普及債」を発表した。利息と償還金を円建てステーブルコイン「JPYSC」で支払う日本初の試みだ。一方、JPYSCは現状SBI VCトレード外へ移せず、発行体の信用力や流動性、親会社保証の実効性など、個人投資家が確認すべきリスクも残る。
日本に「金利のある世界」が戻り、債券が個人投資家の視野に入り始めた。だが個人向け社債は、証券会社を通じて発行できる巨大企業の領域にとどまってきた。発表会で示された資料では、2025年までの個人向け社債の平均発行額は470億円に上る。
この壁を、ブロックチェーンで権利を記録する「デジタル社債」と、円建てステーブルコインで崩せないか。そう挑むのが、株式会社Startale Japan(スターテールジャパン)が発行する「ステーブルコイン普及債」である。ステーブルコインとは法定通貨に価値を連動させたデジタル通貨のこと。今回の利払いと償還には、今年6月にSBI新生信託銀行が発行した信託型の円建てステーブルコイン「JPYSC」を使う。条件は年利5%、1口10万円、総額9,990万円だ。
10月5日、赤坂Bizタワーで開かれた発表会には、Startale Groupの渡辺創太氏(CEO)と、デジタル社債市場を解説する博報堂キースリーの重松俊範氏(代表取締役社長)が登壇した。渡辺氏は米ニューヨークを拠点に、ソニーグループとの合弁を通じたブロックチェーン「Soneium」の共同開発などを手がける。
本稿では、約30分の説明と両氏の発言から、商品の仕組みと狙いを整理した。
●目次
では、発表された「ステーブルコイン普及債」とは、具体的にどのような商品なのか。まず骨格を整理しておく。
発表によれば、本社債は募集総額9,990万円、1口10万円、年限1年、年利5.00%(固定・税引前)。募集期間は10月6日から11月10日までで、特設サイトは6日午前10時に公開される予定だ。投資家は日本円で申し込み、利息と償還金をJPYSCで受け取る。利払いは6カ月に1回。親会社のStartale Group Pte. Ltd.(シンガポール)が元本・利息・遅延損害金を保証する設計で、募集から償還までの事務は、デジタル社債プラットフォーム「OwnerShip」を運営するオーナーシップ株式会社が担う。
利払いに使われるJPYSCについても触れておく。SBI新生信託銀行が発行し、Startale Groupが技術開発を担った信託型の円建てステーブルコインで、今年6月24日にイーサリアム上で発行された。ステーブルコインは資金決済法上「電子決済手段」に位置づけられる。信託銀行などが発行する信託型は、資金移動業型にある100万円の滞留・送金制限を受けない点が特徴だ。
発表会では、その規模を示す数字も語られた。渡辺氏は「累計約270億円」と述べ、別の箇所では発行残高約200億円、レンディング需要約70億円にも言及している。一方、SBI新生信託銀行とSBI VCトレードが9月7日に公表した数字は、発行残高が約201億円、レンディング申込分が約69億円で、合わせて約270億円相当だ。発表会での数字の呼び方と、公表値の定義は、必ずしも一致していない。