「既存店の買取が伸びているのは、店舗網と査定への信頼が効いている証拠だとみています。金相場の追い風だけでは説明しきれません。ただ、相場に連動する部分は反動も起こり得る。今後は買取の件数や新規客の推移が、成長の持続性を測るうえで大事になるでしょう」(流通コンサルタント・永田由紀氏)
これだけ好調なら、今のやり方を伸ばせばよいようにも見える。それでも銀行と組む理由は、市場の形を見るとわかりやすい。
リユース経済新聞社の推計では、国内リユース市場は2024年で3兆2,628億円。コメ兵HDは2040年に5兆円規模へ拡大するとの見通しを資料で示している。一方で、メルカリの調査は、家庭に眠る不要品などの「かくれ資産」を約91兆円と推計する。コメ兵HDの説明資料は、このうち実際に売買されている「顕在市場」は3.6%にとどまると整理している。
つまり、伸びしろの大半は店の外――各家庭のクローゼットの中にある。店舗を増やし、査定の精度を上げるだけでは、「そもそも売ろうと思っていない人」には届きにくい。ここに金融を組み合わせる意味がある。
BaaSとは、銀行が口座や振込、決済といった機能をAPIで「部品」として提供し、金融以外の企業が自社のサービスに組み込めるようにする仕組みだ。利用者から見れば、普段使うアプリの中で銀行の機能が動いている状態になる。GMOあおぞらネット銀行は2018年7月の開業以来この分野に力を入れており、BaaSの契約数は累計1,401件(2026年9月末)に達する。
今回の発表で示されたのは、「モノの価値を適正に評価し、経済的価値のある資産として活用できるエコシステム」を目指すという方向性だ。対象には、店舗やECを使う個人顧客と、法人サービスやオークションを使う法人顧客の双方を想定。必要な許認可・ライセンスの取得も併せて検討し、サービスは段階的に提供するとしている。具体的な中身や開始時期は、現時点では公表されていない。
「組込型金融の価値は、利用者が『銀行を使っている』と意識せずに済むことです。売却から入金、その先の支払いや貯蓄までが一つの流れになれば、売ることの心理的な重さはかなり変わります。ただし組み込む側の企業にも、本人確認や不正対策で金融機関と同じ水準の運用が求められます」(同)
ここからは、公表内容を踏まえた筆者なりの整理である。両社が具体的な機能を発表したわけではない点は、あらかじめ断っておく。
これまでのリユースは、引っ越しや衣替えのついでに不要品を手放す「一回きりの処分」になりがちだった。BaaSを使えば、その位置づけを変える余地がある。たとえば買取代金の受け取りを口座に直結させることや、手元の品の参考価格を把握できるようにすることは、発表にある「資産として活用できるエコシステム」の延長線上にある。自宅のバッグや時計を「いくらになるか分かっている資産」として捉えられれば、売ることは特別な用事ではなく、家計や資産形成の中の一つの選択肢に近づく。
法人側の影響も小さくない。コメ兵HDのオークションには多くのリユース事業者が参加している。仕入れ代金の支払いや入金管理は中小の事業者にとって日々の負担であり、法人口座に強みを持つGMOあおぞらネット銀行との連携は、この領域でも工夫の余地がありそうだ。
一方で、乗り越えるべき課題もはっきりしている。第一に、ブランド品や貴金属の価格は相場で変わる。「資産」として見せるなら、その数字が確定した買取額なのか、参考値なのかを利用者が取り違えない設計が要る。第二に、金融機能を扱う以上、個人情報とセキュリティへの要求水準は一段上がる。コメ兵HDは10月23日、外部委託先のEC管理システムへの不正アクセスにより、ECでの注文情報473件が漏えいしたと公表し、調査と再発防止に取り組んでいる。委託先を含めた管理体制をどう示すかは、金融連携を進めるうえでも利用者が注目する点になるだろう。