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フィレンツェ

二度目のエッチ③

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「何が違うんですか?」
「あっ……」

 そう問いかけながら、両方の太ももを同時に撫でられ体が跳ねる。それを彼は楽しそうに見ている。

 本当はできないって分かっているくせに……。トモの意地悪……。いつもは優しいのにベッドの中だと優しくない。

 最中に垣間見えるSっ気に、どうしたらいいか分からなくて顔を俯けて唇をきゅっと引き結んだ。


「どうしたんですか? こっちを見てください」
「やっ」

 トモは意地悪な笑みを浮かべながら、両方の胸の先端を摘んでくる。その刺激に思わず腰が揺れてしまうと、膣内が擦れて気持ちよかった。

 膣内が蠕動して締まったのが自分でも分かって、さらに唇を引き結ぶ。

「花梨奈さん、嫌じゃ分かりませんよ。ちゃんと言ってください」

 胸を揉んだり、舌や指で先端を転がしたりしながら――すべてを見透かすような目で見つめてくる彼にお腹の奥がきゅうっとなった。

 目が合うと、彼は優しげに目を細める。

 言ったら優しくしてくれるの? 意地悪しない?


「は、恥ずかしいの……わ、私にはできない……から」
「できないから?」
「っ、ト、トモに、トモにしてほしい」

 両手で真っ赤な顔を隠しながらトモにお願いすると、彼は感嘆の息を漏らす。

「嗚呼……。ようやく素直になりましたね。可愛い」
「で、でもっ! き、気持ちよすぎるから、優しくして、ほしいのっ……意地悪なのは……嫌なの……」

 拗ねた顔で彼を見ると、トモがぎゅっと抱き締めてきた。そして、背中をさすってくれる。

「すみません。花梨奈さんの反応が可愛くて、つい意地悪をしてしまいました」
「……バカ」
「今日はもう意地悪なんてしません。それにそんなことをしている余裕は、そろそろ僕もないので全力で花梨奈さんを愛していいですか?」
「う、うん……」

 全力で?
 よく分からないままに頷くと、安堵の表情を浮かべた彼が私の首筋に吸いついた。その絶妙な力加減と甘い痛みに体が震える。


「あ……トモ……ッ」
「一緒に気持ちよくなりましょうね」

 彼にしがみついた瞬間、私の両脚に手を通し抱える。すると、お尻が浮いてゆっくりと引き抜かれた。そして、そのまま一気に奥まで穿たれる。

「ひゃあぁんっ!?」
「可愛い。ほら、見てください。こんなにも深く咥え込んで……とてもいい子ですね」
「ひうっ、ああ……待っ、ゆ、ゆっくりぃ……ああっ」

 意地悪しないって言ったのに……!

 体を好きに揺さぶられると気持ちよすぎて苦しい。熱に浮かされたように身悶え啼く私の最奥を彼の切っ先が抉る。

「やぁっ、ああっ……はげしい……やだぁ、イッちゃう。意地悪しないって、言ったのにぃ」
「意地悪なんてしていませんよ。全力で抱くと言ったでしょう。第一、花梨奈さんの中が気持ちよすぎて、意地悪している余裕なんてありません」

 繋がったままベッドに組み敷かれ、トモが腰を打ちつける。その激しさに彼の背中に爪を立てながら、体を弓なりにしならせた。

 も、もうダメ……ダメ、イッちゃう、イッちゃうからぁ。

「ほら、花梨奈さん。胸も触ってあげますね。中を擦られながら、胸を弄られるの好きでしょう?」
「ひうっ、あっ……やあぁっ」

 す、好きだけど、今はダメ!

 きゅっと胸の先端を摘まれると、甘い痺れが走る。繋がっているところから、とろとろと愛液があふれてこぼれた。

 やぁ……気持ちいい……これ、本当にもう無理っ!

 達する瞬間に唇が合わさって、くちゅくちゅと舌がすり合わされる。胸の先端を弄りながら、より深く穿たれると、体に累積された熱が解放を求めて一気に弾けた。

「――っ!! あっ、やっ、あぁああっ!」

 でも、イッても彼は止まってくれない。その激しさに目を見開いて、呼吸を求めてはくはくと息をした。

 イッたばかりの鋭敏な神経はすべての刺激を拾って苦しい。苦しいはずなのに気持ちがよくて、おかしくなってしまいそうだ。

 激しく穿たれて、体中に電気が駆け巡る。イクのが止まらない。

 変……もう変なのに……

 追い上げられて、イッても終わらない――処理しきれない熱に呑み込まれそうになって、私は何度も首を横に振った。

「やだぁ、も、無理……お、おねがいっ……ふっ、ふぁっ、ト、トモッ、ずっと……イッてるのっ」
「すみません。止まれそうにないので、もう少し付き合ってください」
「で、でも……っ、気持ちよすぎて、死んじゃう……イクの、止まらないのっ」

 すると、トモが宥めるように優しくキスを落としてくる。が、その優しい口付けとは違って、下のほうでは熱い昂りが容赦なくずぶずぶと押し入ってくる。トモは私の腰を掴み揺さぶりながら、奥深く穿つ。

 子宮口をグリグリと穿たれて、頭の中が真っ白に染まる。その瞬間、私の意識が弾けた。


 ***


「……」

 体が重い。それに腰も怠い。
 トモのせいだ。イッてもイッても止まってくれないから……

 今朝は彼の腕に縋りつきながら、何度も何度も泣かされた。気を失っても、すぐ揺り起こされて何度もだ……。そのせいか、喉が少し痛い。


「いま、なんじ……?」

 トモに解放されたあと泥のように眠ってしまったように感じたが、時計を確認してもまだ十三時頃だった。

 ふぅっと息を吐き、寝返りを打ってみても隣にトモはいない。トモは眠らなかったのかしら? それとも、先に起きたのかな?

 そう思いながら、もぞもぞと布団にくるまっていると、「起きましたか?」とトモが寝室に入ってくる。


「トモ……」

 なぜだろう? ぼろぼろの私と違って、彼はとてもツヤツヤしている。

「ああ、少し目が赤くなっていますね。すみません。花梨奈さんが僕の余裕や理性を奪うから……」
「ちょ、ちょっと、人のせいにしないで……」
「花梨奈さんのせいですよ。君が可愛すぎるのがいけないんです」

 何よ、それ……
 私がむすっとしながらトモを睨むと、彼がくつくつと笑いながら私の頭を撫でる。


「トモが絶倫すぎるのがよくないんだわ。き、気持ちいいけど……気持ちよすぎて辛いの。だから困るのよ。本当におかしくなったら、どうするの?」
「花梨奈さん……、それは襲ってほしいって意味ですか?」
「は? な、なんで!? なんでそうなるの?」
「気持ちよすぎておかしくなりそう、だなんて言われると……煽られているとしか思えません」

 何それ。意味分かんない。私は煽ってなんていないもん。

 布団にくるまりながら、彼をキッと睨む。


「研究室に籠って研究ばかりしていた私の体力はないに等しいの。トモみたいな無尽蔵な体力はないのよ。それより結局何回したの? 私、途中から記憶が曖昧なんだけど」
「五回くらいです」
「えっ!?」

 五回も!?


「私のこと殺す気?」
「まさか……! 無茶をさせている自覚はあるんですよ。すみません。でも花梨奈さんが可愛すぎて、つい……」
「……この性欲おばけ」
「……ルームサービスを頼んでおくので、花梨奈さんはお風呂に入ってきてください。そろそろ起きるかなと思い、湯をためておきました」

 性欲おばけという言葉をスルーする彼に嘆息しつつ、私は素っ気なく「ありがとう」と言い、トモの手からバスタオルを受け取った。

 バスルームへ向かうためにベッドから立ちあがろうとすると、脚に力が入らずにその場に座り込んでしまう。


「あれ? 力入らない……」
「すみません。僕のせいですね」

 戸惑っていると、トモが抱き上げてくれる。そしてバスルームまで連れて行ってくれた。

 抱き上げられながら、リビングを抜ける時にパソコンやら書類やらが目に入って仕事をしていたんだなということが分かる。


「私こそ、お仕事を中断させてごめんなさい」
「そんなことを悪いと思う必要はありませんよ。この二週間は貴方と過ごすためにあるんですから」
「そっか……」
 
 トモのそういうところが好きだな。仕事を中断させちゃっても怒らない。いつも私を第一に考えて、とても優しくしてくれる。ベッドの中で意地悪だったり絶倫なのは玉に瑕だけど、それでもこんな素敵な人に心惹かれずにはいられない。


「きゃっ!」

 そんなことを考えていると、トモが私をお風呂に浸けたので驚いて飛び上がってしまう。そんな私に彼もびっくりしたらしく、目を瞬いている。

「すみません、熱かったですか?」
「ううん。ごめんなさい……。ぼーっとしていたから……。そ、それより、先に髪や体を……」
「ですが、今とても疲れているでしょう? 洗うのは、先にお湯にしっかりと浸かって少しでも疲れを取ってからのほうがいいですよ」
「そうね……。そうするわ」

 両膝を抱えて頷くと彼が「いい子ですね」と頭を撫でてくれる。顔を赤くして俯くと、彼は一度ぎゅうっと力強く抱きしめたあと、私の額にキスをして耳元で囁く。


「ルームサービスを頼んでおくので、花梨奈さんはゆっくり入っていてください。もし手伝いが必要なら、いつでも呼んでください」
「ん、ありがとう……」
「あと、今日はどうしますか? 大聖堂に行く気力は残っていますか?」
「!」

 そうだ、大聖堂!
 私が顔を上げるとトモが微笑んで、私の頰を撫でる。

 行きたい。絶対に行きたいけど、めちゃくちゃ全身が重い……

「行きたいけど、足腰が……」
「なら、もう少し休んで花梨奈さんの体の様子を見てから決めましょうか? ホテルから近いので、焦る必要はありませんよ」

 トモの提案にさっきまで落ち込んでいた気持ちが嘘みたいにパァッと明るくなる。

 そうよね、焦る必要はないわよね。


「そうだね。そうしよう」
「あと、歩いて行ける距離ですし短時間なので今日はシモーネさんには来ていただきませんがいいですか?」
「あ、そうだね。きっと彼も今日はお休みだと思っていそうだし、それでいいと思う」

 フィレンツェ滞在中は、シモーネのスケジュールをすべて貸し切っている。なので、トモから声がかからなけらばシモーネはお休みだ。

 私もシモーネの休みを邪魔したいとは思わないので、快く頷いた。すると、トモが立ち上がって「それでは、ゆっくり温まるんですよ」と言ってバスルームから出て行く。

「ん~っ」

 温かくて、気持ちいい。

 私は彼の気配が遠ざかるのを感じて、四肢を思いっきり伸ばし、お湯の中に身を沈めた。
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