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第55話:誰か助けて(Side:シホルガ⑥)

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 しばらくしても何も起こらない。
 ど、どうしたの?
 もしかして、アタクシは死んでしまったの?
 怖くて仕方なかったけど、そっと目を開ける。
 何も起こらないどころか、黒いもやが少しずつ消えていた。

「え? ど、どうして?」

 黒いもやは端っこからちぎれていく。
 まるで、空気に溶けていくようだ。
 アタクシが手をかざすと、さらにポロポロと崩れていく。
 何が何だかよくわからないけど良かったわ。
 急に清々しい気持ちになってきた。
 闇魔法が消えたからか、衛兵たちの元気な声も聞こえてくる。

「急いで怪我人の手当てをするんだ! そして、シホルガはどこにいる!?」
「わかりません! どこに隠れているのか! いくら探しても見つかりません!」
「逃げられる前にすぐ捕まえるぞ! 動ける者はついてこい!」

 衛兵たちがアタクシの名前を呼んでいる。
 きっと、ずっと探していたのだ。
 部屋の外に出たら、衛兵たちが猛スピードで走ってきた。

「「おい! シホルガ・チェックがいたぞ! 間違いない、ド派手なピンクの髪だ! あんなヤツ王宮に二人といない!」」

 はいはい、シホルガはここにいますよ。
 まったく、モテる女は辛いわね。
 少しサービスしてあげようかしら。
 ふぁさぁ……と髪をなびかせる。
 私を見ると、衛兵たちは血相を変えて駆け寄ってきた。
 あらあら。
 そんなに焦らなくても、アタクシはどこにも行かないわ。
 それにしても、こんなところをフーリッシュ様に見られたら嫉妬されてしまいますわね。

「「それっ、捕まえろ!」」
「きゃああっ!」

 いきなり、たくさんの衛兵がのしかかってきた。
 ちょっとみんな焦りすぎじゃない!?
 と、思ったら、縄でぐるぐると縛られていく。
 あっという間に、全身をぐるぐる巻きにされてしまった。
 何が何だかわからない。

「ちょ、ちょっと! いきなり何するのよ! 痛いじゃないの!」
「「うるさい! お前が闇魔法を見逃したせいで大変なことになったんだぞ! わかっているのか!」」
「ひっ……」

 衛兵たちの目はモンスターのように怖かった。
 顔だって怒りに満ちあふれている。
 それを見るだけで怖くて何も言えなくなってしまった。

「お前のせいで俺たちは、いや、国民全員が死ぬところだったんだぞ!」
「王宮だってめちゃめちゃに壊されてしまったじゃないか!」
「さあ、来るんだ! 裁かれるんだよ! お前は王国が始まって以来の大罪人だ!」
「や、やめて……!」

 ずるずると乱暴に引きずられていく。
 いくら暴れてもビクともしなかった。
 ア、アタクシはこれからどうなるの?
 まさか、本当に裁かれるの?
 そ、そんなのイヤ!
 だ、誰か助けてよ!
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