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 二つ目のストロベリーパイを半分つけたあたりで、「元気でた?」と声をかけられた。

「……? わたしはいつでも元気ですよ」

 わたしが働けなくなったら、使用人の給料が払えなくなってしまう。わたしの給料が丸々使用人に渡っていることは彼らも察しているのか、「住み込みで衣食住を保障してもらっているのだし、今は無理をしなくてもいい」と言ってくれているのだが、そう言われるからこそ払わねば、という気持ちになるのだ。基本的に古株を残した人員整理をしたので、それこそわたしが赤ん坊の頃からいるような人ばかりなのである。
 だからこそ、健康管理には結構気を使っているつもりだ。

「――……この間、疲れてそうだったから」

「いつですか?」

「僕に変装を教えてくれた日」

 何かあったかな、と思い返して――もしかしたら、ソルヴェード様にどこまで教えたものか、悩んでいたのを見られたのかな。
 折角だからこのタイミングで聞いちゃう? でも、聞き方を気を付けないと気分悪くするかな……。
 わたしが言葉を考えていると、「ごめん、また悩ませた?」とソルヴェード様が眉を下げて聞いてきた。

「ごめんね、そんな顔させたいつもりじゃなかったんだけど」

 そんな表情をするほど、眉間に皺が寄ってたんだろうか。わたしは思わず、眉間を触ってしまった。……よく分からないな。

「ちょっと言葉を選んでいただけで……。……あの、少し聞いてもいいですか?」

「うん? なあに」

 わたしは少し視線を泳がせ、迷ってから、単刀直入に「いつまで働くつもりでいます?」と聞いた。

「別に、やめてほしいとか、そういう話ではないんですけど。でも、働く期間によって、教えることも変わってくるので……」

 わたしが気を使いながら聞くと、ソルヴェード様は、一瞬、きょとん、とした顔を見せた後に、「僕のことで悩んでたの?」とゆるく笑った。

「まあ、貴方のことと言えばそうですけど……」

 なんだかその言い方をされると、わたしがソルヴェード様が気になってるみたいな言い方だからやめてほしい。
 その考えが顔に出ていたのか、また声を出して笑われた。

「ごめん、ごめん。……ああ、でも、いつやめるか、かあ」

 彼の目線が落ちる。……やっぱり、聞かないほうが良かったのかな。たとえ、無駄になるとしても、仕事はどんどん教えていった方がよかったのかも。
 失敗したな、と思う反面、ソルヴェード様の表情は、そこまで曇っていなかった。
 ――……それが、本当に気にしていないからこその表情なのか、作っている顔なのか、わたしには分からないけど。
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