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別れと再会
二人からの提案
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姫との顔合わせが終わると、すぐにルーイがこちらへ視線を向ける。
「まさか、本気で連れてくると思ってなかった。」
「其方がここで匿うと言ったではないか。それよりも先にクリュスエント様に椅子を。」
「言ったよ。言ったけどさ……」
「そしてステフ。」
「ぼ、僕ですか?!何かしました?」
私とルーイの会話を横目に、姫に椅子を勧めていてくれたステフが、わたしに名前を呼ばれて身体を硬直させる。
「先程の剣。良い動きだった。」
「ありがとうございます!あの後も毎日欠かさず振ってたんです。」
「よくねぇって!あんなところで剣振り回して、誰か来たらどうするんだよ。」
「誰か……やはり来たのか?」
「あぁ。ここに着いて何度か。俺達は山へ隠れていてさ。荒らして行かなかったから、カミュートの兵かな。」
「最近は?」
「そういえば落ち着いてるなぁ。門の周辺の兵士も減ってきた。」
国境門周辺は完全に制圧し終わったということだろうな。
「王女さまのこと匿うのは良いけどさ、この後戦はどうなる?いつまでもこんな所で4人は暮らせねぇよ?」
「いや、3人だ。」
「3人?!」
「あぁ。ここで姫のことを匿っていて欲しい。」
「アイシュタルトは?どうするんだ?」
「私はもう一度コーゼへ戻る。やらなければならぬことがある。」
目を白黒させているルーイを放って、姫のお側に寄っていく。椅子に座って私たちの話を聞いていた姫は、ルーイと同じように動揺しているようにも見える。
私はその場に跪き、姫の顔を見上げた。
「クリュスエント様。しばらくの間、ここで彼らとお待ちいただけますか?」
「ア、アイシュタルトはどちらへ行かれるの?」
「私はクリュスエント様の護衛騎士ですから、クリュスエント様に害を為した者をこのままにはしておけません。」
私の目的はただ一人。国王リーベガルドだ。
私の中の怒りは消えぬことはない。腹の奥でくすぶり続ける怒りを、叩きつけてやらねば気が済まぬ。
「まさか……王族に手を出してはなりません!」
「私が無事に戻りましたら、シャーノまでお送りしますから。フェリス様のことも、お連れして参ります。」
「フェリス……ですが!」
「クリュスエント様。私は護衛騎士ではありますが、カミュート国の一傭兵です。敵対する者を討って、何を咎められましょうか。」
姫が私の言葉に頷きそうになる。
「ちょ、ちょっと待て!」
その時、ルーイが口を挟んだ。
「何だ?」
「話に割り込んで悪い。それは謝る。でもさ、いつ出発するつもり?」
「それは、今すぐにでも。」
「って言うと思ったんだよ。だから止めたの!」
「どういうことだ?」
「出発は明日にしろ!もう日も暮れる。一晩休んで、朝出れば良い。」
「一刻も早くコーゼに戻らねば。」
ルーイが私を止める意味がわからない。早く出れば早くあちらにたどり着くというのに。
「ふふ。アイシュタルト、昨夜寝てないのではないですか?兄さんはそれを心配してるんです。」
「そう!酷い顔してる!」
「昨夜は……」
「クリュスエント様を守ってたんですよね。わかってます。だからこそ、今夜は休んで下さい。」
「この家なら、ステフがいてくれるから。」
この二人には隠せないな。確かに昨夜は眠れなかった。マントで顔を隠したままの姫を宿には連れて行けず、森の木陰で夜を明かした。
私が眠るわけにはいかなかった。
「アイシュタルト、わたくしのせいですよね。ごめんなさい。」
姫が表情を曇らせる。
「お気になさらないで下さい。それが私の仕事です。」
「アイシュタルト、兄さんの言う通りです。今夜は僕がちゃんと見張りますから。剣の腕は、先程褒めてくれましたよね。」
ここは、ステフの言葉に甘えようか。緊張の連続で確かに私も疲れていた。
「ステフ、ルーイ。その言葉に、甘えさせて貰う。」
「まさか、本気で連れてくると思ってなかった。」
「其方がここで匿うと言ったではないか。それよりも先にクリュスエント様に椅子を。」
「言ったよ。言ったけどさ……」
「そしてステフ。」
「ぼ、僕ですか?!何かしました?」
私とルーイの会話を横目に、姫に椅子を勧めていてくれたステフが、わたしに名前を呼ばれて身体を硬直させる。
「先程の剣。良い動きだった。」
「ありがとうございます!あの後も毎日欠かさず振ってたんです。」
「よくねぇって!あんなところで剣振り回して、誰か来たらどうするんだよ。」
「誰か……やはり来たのか?」
「あぁ。ここに着いて何度か。俺達は山へ隠れていてさ。荒らして行かなかったから、カミュートの兵かな。」
「最近は?」
「そういえば落ち着いてるなぁ。門の周辺の兵士も減ってきた。」
国境門周辺は完全に制圧し終わったということだろうな。
「王女さまのこと匿うのは良いけどさ、この後戦はどうなる?いつまでもこんな所で4人は暮らせねぇよ?」
「いや、3人だ。」
「3人?!」
「あぁ。ここで姫のことを匿っていて欲しい。」
「アイシュタルトは?どうするんだ?」
「私はもう一度コーゼへ戻る。やらなければならぬことがある。」
目を白黒させているルーイを放って、姫のお側に寄っていく。椅子に座って私たちの話を聞いていた姫は、ルーイと同じように動揺しているようにも見える。
私はその場に跪き、姫の顔を見上げた。
「クリュスエント様。しばらくの間、ここで彼らとお待ちいただけますか?」
「ア、アイシュタルトはどちらへ行かれるの?」
「私はクリュスエント様の護衛騎士ですから、クリュスエント様に害を為した者をこのままにはしておけません。」
私の目的はただ一人。国王リーベガルドだ。
私の中の怒りは消えぬことはない。腹の奥でくすぶり続ける怒りを、叩きつけてやらねば気が済まぬ。
「まさか……王族に手を出してはなりません!」
「私が無事に戻りましたら、シャーノまでお送りしますから。フェリス様のことも、お連れして参ります。」
「フェリス……ですが!」
「クリュスエント様。私は護衛騎士ではありますが、カミュート国の一傭兵です。敵対する者を討って、何を咎められましょうか。」
姫が私の言葉に頷きそうになる。
「ちょ、ちょっと待て!」
その時、ルーイが口を挟んだ。
「何だ?」
「話に割り込んで悪い。それは謝る。でもさ、いつ出発するつもり?」
「それは、今すぐにでも。」
「って言うと思ったんだよ。だから止めたの!」
「どういうことだ?」
「出発は明日にしろ!もう日も暮れる。一晩休んで、朝出れば良い。」
「一刻も早くコーゼに戻らねば。」
ルーイが私を止める意味がわからない。早く出れば早くあちらにたどり着くというのに。
「ふふ。アイシュタルト、昨夜寝てないのではないですか?兄さんはそれを心配してるんです。」
「そう!酷い顔してる!」
「昨夜は……」
「クリュスエント様を守ってたんですよね。わかってます。だからこそ、今夜は休んで下さい。」
「この家なら、ステフがいてくれるから。」
この二人には隠せないな。確かに昨夜は眠れなかった。マントで顔を隠したままの姫を宿には連れて行けず、森の木陰で夜を明かした。
私が眠るわけにはいかなかった。
「アイシュタルト、わたくしのせいですよね。ごめんなさい。」
姫が表情を曇らせる。
「お気になさらないで下さい。それが私の仕事です。」
「アイシュタルト、兄さんの言う通りです。今夜は僕がちゃんと見張りますから。剣の腕は、先程褒めてくれましたよね。」
ここは、ステフの言葉に甘えようか。緊張の連続で確かに私も疲れていた。
「ステフ、ルーイ。その言葉に、甘えさせて貰う。」
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