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114.告白って、苦しいんだな?

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 こういうのは勢いが大事だと、両手をグッと固く握り――「レイド、ごめんな。さっき、レイドの気持ちが知りたくて、意地汚いこと言っちゃってさ……」と謝る。

 俺が、急に畏まったように言ったからか、レイドは「え、ああ……俺の方こそ」と戸惑ったような声を上げている。

 そんなレイドを、真っ直ぐに見て――。

「あ、あのな、レイド。本当は……俺、もう好きな人いるし、その人とも両想いなんだ」と声に出してから。一度、深呼吸する。

 心臓が高鳴り過ぎて、息が苦しく感じる。

 こ、告白って、こんなにドキドキするんだな……。レイド、なんで……あんなに好き好き言えるんだ?

 非常に恥ずかしくなり……頬に、じわじわと熱が上がってくる。けど、気合いを入れて口を開く。

「お、俺っ、レイ――」
「――成る程な……」


 レイドは、冷ややかな表情を浮かべ。身だしなみを整えて、スクッと立ち上がった。
 
 しかも、俺を拒絶するかのように背を向けている。


「え、ちょっと……? レイド、何処に行くんだ? まだ、話が……」
「言わずとも、分かっている。それは、炎竜だろう? すまないが、ヤツが核としての力を使う為に、俺が口づけることだけは許して欲しい。炎竜にも、それを伝えに――」
「バッカヤローーーーーっっ!!!」


 ――後ろを向いているレイドの背を、おもいっきり蹴り飛ばした。

 レイドは、ズザザザーーーとスライディングした後。俺に蹴られたところを、痛そうな顔をして押さえている。


 ふんっ! 人の話を最後まで聞かずに、変な解釈するからだよ!

 さっきまでは高鳴っていたはずの心臓が、ヒヤリと冷たくなり、しかも押し潰されたように痛む。

「……お前、馬鹿なの? 俺、言ったよな? レイドが好みだから、禁術機のことがあったとしても、身体を許せたってさ……」
「……それは、容姿だけではなかったのか?」

 は? やっぱり、馬鹿かよっ!!

「んなわけあるかっ!! だとしたら、俺どんだけ尻軽なんだよ! 顔だけ好きな奴を誘って『子供孕ませて?』って言うなんて、ヤバすぎだろ~がっ!! ――レイドのこと、昔も今もスッゲー愛してるんだよっ! それこそ、俺の命をかけられるくらいに、心からなっ!!」


 そう……。だから、ヤツィルダの時にも……レイドを助ける為なら――命だって捧げることが出来た。


「……え?」


 レイドが、ピタリと動きを止めた。


「ってかさ~……。俺が誘うようなこと、言っているの……レイドはどんな風に捉えてたんだよ? 普通に考えたら、俺の気持ちに勘づくだろ?」
「……ヤツは、今回の件などで、俺に凄く感謝をしていた。だから、俺が喜ぶように、感謝の気持ちでそれをしてくれようとしたのかと……」
「感謝でやらんわっ! あほんだらっ!!」


 脱力してしまい。ため息を吐き、地面にストンッと座り込む。


「…………ヤツ。隣、良いか?」
「ど~ぞ」


 地面にふかふかと生えている、光粒の花達をポンポンと手で軽く叩く。

 そうっと反らせてから手を離すと――ビヨンッ! と元の位置に戻るから……。

 なんだか面白くて、激しくそれをやったら。ビュンッ! ビュンッ!! と空気を切る音も鳴る。


 何これ、凄く楽しい! めっちゃ弾力性あるじゃん!!


 光粒の花の、新事実に感動していると――レイドが、俺の名前を呼んできた。


「なに? 次、くだらない話をしたら、出て行ってもらうから」

 俺、勇名レベルが500になったし。レイドを、ダンジョンから閉め出しすることも出来るんだからな!

「ヤツ、すまなかった……。ちゃんと話も聞かずに、酷いことを言った」

 レイドが、俯いた俺の顔を覗き込み。酷く申し訳なさそうに、謝っている。

「あ~あ~、そうだな~! 炎竜に伝えるとか、容姿だけとか、感謝の為にとかさ~。俺、どうすれば良いか分からなかったけど、スゲー頑張って誘って……告白も……。レイド、マジで酷――ぅっ……っ、グスッ!」

 あっ、もぅ……っ! 違うことを考えて、堪えてたのに……。

「――ッ!! あ……す、すまない…っ! 本当に、ああ、どうすれば……」

 レイドがオロオロとして、俺に手を伸ばしたり、引っ込めたりしている。


 なんだよ~。そこはガバッ!! と抱き締めて、ブチュ~!! のシーンだろ~?

 レイドって、ヘタレになったな?


 まぁ~……。そんなレイドを、可愛いとか思う俺も……昔とだいぶ変わったんだろうけど――。


「じゃあ、さ……。レイドを、俺にくれよ。俺のことも、レイドに、あげるから……」


 俺はしゃくり上げ、途切れ途切れになりながらも。落ち着きのない様子のレイドに、自分の気持ちを伝えた。


「ああ……! 俺の、全て、全てが……ヤツのものだ。ヤツも、俺の――……」


 レイドは、柔らかな笑みを浮かべ。まだ、言葉を紡いでいる途中であったその唇を、俺の唇へと優しく重ねた――。


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