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悩める勇者の話
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ベッドの中で眠る勇者の瞼が震えた。
「……ここは?」
「えっと一応、宿屋?の客室です。気を失っていたので運ばせて頂きました」
ヒュウガがね……。
アスがもう脅威は無いと言ったから大丈夫なんだろうが、少しまだ怖い。
「気を失って……?何が……うっ!!思い出せない!!頭が痛い……!!ここはどこなんだ?俺は誰だ?」
うわっ!!ベタな記憶喪失の反応だ!!
ベタベタすぎて演技なんじゃないかと疑ってしまう。
「ここはルクスリアのダンジョンで貴方は勇者ジークフリートらしいです」
どこから来た勇者なのか、何でこのダンジョンにいたのか……それは知らないので説明できない。
「おっ!?俺が勇者!?そんな訳無いじゃないですか!?ルクスリアのダンジョンなんて……魔物はおろか魔獣とだって戦えないのにどうしてこんなところに……」
………。
「……ヒュウガ!!」
ーーーーーー
「目を覚ましたのか、何かされたら危ないからすぐ呼べと言ったろう」
俺の声を聞いて飛び込んできたヒュウガは俺を守る様に胸の中に収めた。
「ひぃぃぃぃっっ!!亜人!!しかも人狼!!」
勇者は飛び上がって布団に潜った。
こんもりと山になった布団がガタガタ震えている。
……演技ではなさそう……。
本当に記憶喪失?
そんな勇者の姿を見てヒュウガは頭を掻きながら深い溜め息を吐いた。
「あいつ……頭の中を弄りやがったな……」
頭の中?
弄る?
「精神操作系の魔法で記憶や性格を都合の良い様に弄るんだよ……失敗が多くて、受けた奴が精神に異常をきたす事が多いから……あんまりやる奴はいないが」
「へぇ……洗脳みたいなもん?そんな難しい魔法なのにアスはスゴいね」
さすがアス。何でも出来るんだなぁ。
「壊れてもいいと思ってるだけだろ……もしかしてカラスマも……」
「俺が何?」
ヒュウガは何でも無いと勇者の方へ向かった。
布団を無情にもはぎ取ると悲惨な程、怯えた顔。
「……どうするカラスマ?今のコイツがここから出たら多分、即死だぞ?」
勇者が悲鳴を上げて、ベッドの上に体育座りして顔を隠して縮こまってしまった。
「ヒュウガがダンジョンの外まで連れて行ってあげるのは?」
「こんな足手まとい連れてなんて無理。最近ダンジョン内の魔物が増えたし、レベルが上がってきてる。俺も死ぬな」
「最近?ヒュウガ外に出てるの?」
「………………」
俺の質問にブスッとしてそっぽを向いた。
「体が鈍っちまうから……守れねぇじゃん」
あ……この前、勇者にやられたこと気にしてる?
可愛いなぁ。
頭を撫でてあげると、
「カラスマ達が家に帰ったら暇だからな」
抱き付いてきて、寂しそうに見下ろしてくる。
そんな捨てられた子犬みたいな目で見ないで……申し訳ない気分になる。
「たまにはこっちに泊まっても良いんじゃないか?勿論カラスマだけで」
顔を寄せられて唇を軽く吸われた。
「日中はずっとヒュウガと一緒にいるじゃん」
頬を撫でられ、もう一度キスされた。
「う……うわぁぁぁぁ!!きっ……君たちは男同士で!!人間と人狼が付き合っているのか!?」
顔を真っ赤にした勇者の大声に、はっとした。
すっかり忘れてた。
最近キスぐらいならと……ハードルが下がってきてるな。
気をつけないと……スキルの思うつぼだ。
「違うよ。ヒュウガは俺の……なんだろ?」
「はぁ……俺に聞くなよ……そんな事よりコイツをどうするかだろ?」
勇者は赤くなったり青くなったり、せわしなく顔色を変えオロオロしている。
「アス……送ってってくれないかな?」
「カラスマの前ではわかったって言うだろうな。この場所から出たとたんポイッだろうけど?」
え~アスはそんな事しないと思うけどなぁ……。
「あいつが物分り良い様に見えるのはお前の前だけだぞ。俺の事だって生きてても死んでてもどうでもいいと思ってるだろうよ」
え~!?
そんな事無いってアスは優しいよ?ヒュウガ、アスのイメージ悪すぎない?
「取りあえず……コイツの事はしばらくここに置いておいて……様子見するか?」
「じゃあ、ヒュウガよろしく」
押し付けて逃げようとしたら腰に抱きつかれた。
「待って下さい!!人狼と2人きりなんて無理です!!一緒にいて下さい!!」
なっ!!内蔵が潰れる!!
中身は変わっても力はそのままだからタチが悪い!!本人はわかってないようで力一杯締め上げてくる。
「わかった!!わかったから離してっ!!死ぬ!!」
怖くは無くなったけど、まためんどくさい事になりそう……。
深く息を吐き出した。
「……ここは?」
「えっと一応、宿屋?の客室です。気を失っていたので運ばせて頂きました」
ヒュウガがね……。
アスがもう脅威は無いと言ったから大丈夫なんだろうが、少しまだ怖い。
「気を失って……?何が……うっ!!思い出せない!!頭が痛い……!!ここはどこなんだ?俺は誰だ?」
うわっ!!ベタな記憶喪失の反応だ!!
ベタベタすぎて演技なんじゃないかと疑ってしまう。
「ここはルクスリアのダンジョンで貴方は勇者ジークフリートらしいです」
どこから来た勇者なのか、何でこのダンジョンにいたのか……それは知らないので説明できない。
「おっ!?俺が勇者!?そんな訳無いじゃないですか!?ルクスリアのダンジョンなんて……魔物はおろか魔獣とだって戦えないのにどうしてこんなところに……」
………。
「……ヒュウガ!!」
ーーーーーー
「目を覚ましたのか、何かされたら危ないからすぐ呼べと言ったろう」
俺の声を聞いて飛び込んできたヒュウガは俺を守る様に胸の中に収めた。
「ひぃぃぃぃっっ!!亜人!!しかも人狼!!」
勇者は飛び上がって布団に潜った。
こんもりと山になった布団がガタガタ震えている。
……演技ではなさそう……。
本当に記憶喪失?
そんな勇者の姿を見てヒュウガは頭を掻きながら深い溜め息を吐いた。
「あいつ……頭の中を弄りやがったな……」
頭の中?
弄る?
「精神操作系の魔法で記憶や性格を都合の良い様に弄るんだよ……失敗が多くて、受けた奴が精神に異常をきたす事が多いから……あんまりやる奴はいないが」
「へぇ……洗脳みたいなもん?そんな難しい魔法なのにアスはスゴいね」
さすがアス。何でも出来るんだなぁ。
「壊れてもいいと思ってるだけだろ……もしかしてカラスマも……」
「俺が何?」
ヒュウガは何でも無いと勇者の方へ向かった。
布団を無情にもはぎ取ると悲惨な程、怯えた顔。
「……どうするカラスマ?今のコイツがここから出たら多分、即死だぞ?」
勇者が悲鳴を上げて、ベッドの上に体育座りして顔を隠して縮こまってしまった。
「ヒュウガがダンジョンの外まで連れて行ってあげるのは?」
「こんな足手まとい連れてなんて無理。最近ダンジョン内の魔物が増えたし、レベルが上がってきてる。俺も死ぬな」
「最近?ヒュウガ外に出てるの?」
「………………」
俺の質問にブスッとしてそっぽを向いた。
「体が鈍っちまうから……守れねぇじゃん」
あ……この前、勇者にやられたこと気にしてる?
可愛いなぁ。
頭を撫でてあげると、
「カラスマ達が家に帰ったら暇だからな」
抱き付いてきて、寂しそうに見下ろしてくる。
そんな捨てられた子犬みたいな目で見ないで……申し訳ない気分になる。
「たまにはこっちに泊まっても良いんじゃないか?勿論カラスマだけで」
顔を寄せられて唇を軽く吸われた。
「日中はずっとヒュウガと一緒にいるじゃん」
頬を撫でられ、もう一度キスされた。
「う……うわぁぁぁぁ!!きっ……君たちは男同士で!!人間と人狼が付き合っているのか!?」
顔を真っ赤にした勇者の大声に、はっとした。
すっかり忘れてた。
最近キスぐらいならと……ハードルが下がってきてるな。
気をつけないと……スキルの思うつぼだ。
「違うよ。ヒュウガは俺の……なんだろ?」
「はぁ……俺に聞くなよ……そんな事よりコイツをどうするかだろ?」
勇者は赤くなったり青くなったり、せわしなく顔色を変えオロオロしている。
「アス……送ってってくれないかな?」
「カラスマの前ではわかったって言うだろうな。この場所から出たとたんポイッだろうけど?」
え~アスはそんな事しないと思うけどなぁ……。
「あいつが物分り良い様に見えるのはお前の前だけだぞ。俺の事だって生きてても死んでてもどうでもいいと思ってるだろうよ」
え~!?
そんな事無いってアスは優しいよ?ヒュウガ、アスのイメージ悪すぎない?
「取りあえず……コイツの事はしばらくここに置いておいて……様子見するか?」
「じゃあ、ヒュウガよろしく」
押し付けて逃げようとしたら腰に抱きつかれた。
「待って下さい!!人狼と2人きりなんて無理です!!一緒にいて下さい!!」
なっ!!内蔵が潰れる!!
中身は変わっても力はそのままだからタチが悪い!!本人はわかってないようで力一杯締め上げてくる。
「わかった!!わかったから離してっ!!死ぬ!!」
怖くは無くなったけど、まためんどくさい事になりそう……。
深く息を吐き出した。
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