路地裏のアン

ねこしゃけ日和

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 翌日。
 真広と真理恵は休みを取って伯父が入院する県立病院に向かった。病院までは車で一時間半もかかった。
 行ってみると近所にある病院とは違い、建物が高くて新しかった。医大が隣接している為に学生もちらほら見える。
 駐車場もショッピングモールみたいな立体駐車場で、しかも車が多く、中々空きが見つからない。ようやく車を駐めて渡り廊下から病院内に入ると受付は人で溢れていた。
 五分ほど並んでから受付で親戚が入院している旨を伝えると隣の入院棟に行ってくれと言われ、また移動させられる。
 入院棟は人が少なく、受付もスムーズに終わった。エレベーターに乗って言われた部屋まで向かう途中、病院独特の匂いがする。
 母親が入院している時に二人が何度も体験した匂いだった。悪い匂いではないが、どこか不吉な匂いでもある。少なくとも二人にはそうだった。
 病院側の説明では高野に知り合いや家族はおらず、持っていたメモに書いていたあった電話番号から真広達に電話をしたという話だった。
 四人部屋の病室に入ると右奥のベッドで伯父が横になって窓の外を見つめていた。その瞳は二人が想像していた以上に穏やかで、それが逆に不安を与える。
 真広達が声を掛ける前に窓に映った二人を見て伯父の高野は口を開いた。
「悪かったな。色々と」
「いや、まあ…………」
 真広は気まずそうにベッドのそばで立ち止まり、真理恵は持ってきた紙袋を近くの机に置いた。
「でも無事でよかった」と真理恵は告げた。「外で倒れたって聞きましたよ」
 高野は遠くを見つめて小さく嘆息した。
「……一人はダメだな。人間が自分のために頑張れることはたかが知れてる。それがよく分かった」
 話が見えず真広と真理恵はチラリと互いを見合った。
 二人には聞きたいことがあった。小白のことだ。小白のこれまで、そしてこれからの話をしたかった。
 このお見舞いは半ばそのために来ただけだ。
 小白を捨てた高野に自分達の気持ちを伝えるつもりだった。
 だが高野は二人が思っていたような男には見えなかった。
 真広は尋ねた。
「……なにがあったんですか?」
 高野は窓の外を見つめたままだったが、その瞳は記憶を辿っているようだった。
 しばらく沈黙したあと、高野は静かに語り始めた。
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