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ハーレム第2章 可愛ければ何をしてもよい

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 心地よく吹く風。スポーツの秋。

 サッカーボールが地面と擦れるザザザッという音と、それを追いかけるワーワーという賑やかな声が、抜けるような青い空に消えていく。地元の少年サッカークラブは今日も盛況だ。
 俺はグラウンドのフェンスに寄りかかって、そっと目を凝らす。
 体操服姿の子供たちは全部で40人ほど。だが俺は、わらわらと動き回る集団からほんの数秒であの六人を見つけ出すことができる。離れたところからでも、後ろ姿でも、瞬時にあいつと、あいつと、それからあいつ・・・・・・と。彼らのシッターを始めてからの俺の得意技だ。
 
 彼らはバラバラの場所で、走り込みのトレーニングをしたり、実践練習に打ち込んでいたが俺はそれぞれの動きをまるで視界が複数個あるかのように目で追える。なんでそんなことできるのか自分でも不思議だし、一体どうやっているのかと言われても上手く説明できない。・・・・・・まあ言ってしまえば単にすごいスピードで目を動かしてるってだけだが。とにかく六人が何をやっているのか、ほぼ同時にと言っていいほど認識できるのは確かだ。

 外周でランニングをしている青太(せいた)が、他の子たちに半周遅れという差を付けられている様子を見ながら、俺は赤火(せっか)がスライディングして、数メートル先でドリブルされていたボールにキックを命中させたのを横目で捉えた。
 「おい赤火!スライディングは危険だからやめろって言ってるだろ!」
 コーチの怒声が飛ぶ。赤火は立ち上がり、ぺろりと舌を出して何事もなかったかのように駆けて行ってしまった。
 「・・・・・・ばかだなあ、あいつ」
 俺はそう呟いたが、一番ばかなのは自分だと思い当たり心がズンッと重くなる。
 「・・・・・・はあ。あと30分もある」
 スマホで改めて時刻を確認して俺は呻いた。
 あんなことがあったばかりなのに。たった二日前のことなのに。

 なぜ俺は彼らの迎えに、早々とこんなところで待機しているのだろうか。

 「いや、だって・・・・・・。いきなり顔見てもどんな態度でいけばいいかとか分からないじゃん・・・・・・」
 うじうじと自分に言い訳をする。フェンスに俺の上体が沈み込んだ。
 憎らしいほど空がきれいである。

 二日前。

 俺は日頃から可愛がっていた、幼少の男児六名に自宅で襲われた。
 抵抗はした。少し。大人の俺が暴れて、彼らが怪我などしない程度に。結果、俺は彼らの意のままに全裸にされ、視姦され撫でられ弄られ摘まれ舐められ喘がされ・・・・・・勃たされて泣かされて、そして最終的に・・・・・・。

 「うっ、ううう・・・・・・、小学生に、・・・・・・手コキでイかされたぁっ・・・・・・」

 恥辱が蘇ってきた。思わず自分の髪をぐしゃぐしゃと両手でかき回す。あれは、現実なのか。パンパンに勃起した俺のペニスにあの可愛い手が・・・・・・指が・・・・・・悪戯するように絡みついて、だがしっかりと俺を射精に導こうという意思を持って、昂ぶる俺をさらにかき乱そうと動いて・・・・・・。そして今までに味わったことのない快楽を俺に与え、大量の精を放たせ、俺を・・・・・・、屈服させた・・・・・・。あっていいのだろうか、そんなことが。本当にあったことなのだろうか。あれは。秋の空が見せた夢ではなくて。

 「はあ・・・・・・。いや、現実だ。現実を見ろ、俺」

 よろよろとフェンスを掴んで立ち直る。そう、あの射精の瞬間はまるで夢の中にいるみたいに意識が途切れ途切れになっていたが・・・・・・気持ちよすぎて。でもその後に起こったことはしっかり覚えている。
 意識を取り戻した俺が子供たちからかけられた言葉は、要約すると、「これからも一緒にエッチなことがしたい、それももっと過激なやつを」というものだった。そしてこれが主従の証、と言わんばかりのキスを全員から施され、ショックで何も言えないでいる俺に、その場でまさかの二回戦目をせがんできたのだ。

 「もう一回見たーい!お兄ちゃんのエッロい顔―!」と未だ瞳の奥に消えない炎を燃やしている六人が再び飛び掛ってこようとしたので、俺は「殺す気かあああああ」と叫んでほうほうの体で逃げ出した。だがまだ体中に快感の余韻があちこち残っていて、満足に立ち上がることもできない俺は、沈みかける身体をなんとか両腕で支えようとして、這い蹲るような姿勢になってしまう。
 後ろの方で、「えっ、ひーちゃん死んじゃうのっ!?」と、緑葉(りょくは)がガーンという効果音の幻聴と共に悲鳴を上げているのが聞こえた。あっ、あっ、可哀想な緑葉。お前が心を痛めているのはとんでもなく悲しい。今すぐ頭を撫でに行ってやりたい。
 が、よろよろと力なく床に手を着いている俺の腰に、背中に、あっという間に二、三人がしがみつく。
 「きゃははっ、捕まえたぞーっ!」
 「ひかりにいちゃーん!さあこっち来いっ!」
 獲物を捕らえた歓喜にアドレナリンを爆発させた彼らにもみくちゃにされかける・・・・・・。数の暴力っ・・・・・・。圧倒的・・・・・・数の暴力っ・・・・・・。あと可愛さの暴力もっっっ・・・・・・。
 ・・・・・・本当可愛いなあこいつら。
 俺は歯を食い縛って身をよじり、今度こそ彼らを制止すべく大声を出した。
 「やめろーっ!やめろやめろっ!!一旦ストップだ!散っっっ!!!!」

 「えー!」
 俺の背中に覆いかぶさっていた梨黄(りお)がふくれっ面をしてきたが、「や!!め!!ろ!!!」とほんの1ミリ程度残っていた大人の矜持を奮い立たせて威圧する。
 「あはは、怒ってる顔も可愛いなあお兄ちゃん」
 ころころと俺の足元で笑っている真白(ましろ)の言葉は聞かなかったことにして。
 何とか身体に纏わり付いてくる手を払いのけた俺は、六人全員に一箇所に纏まって座るよう目で促す。全裸でだけど。全裸でだけどここはちゃんと大人としての振る舞いを見せなきゃいけないところだろう。目の端にうっすら涙の跡まで残ってるけどさあ。それでもだ。

 彼らを目の前に、俺はラグの上に座りなお・・・・・・そうとしたけどちんこ!ちんこ見えちゃうじゃんこれどう足掻いても!ちんこ出したままお説教するわけにいかないじゃんもう!
 「おい」
 俺は数十分前に俺の下着ごとズボンを脱がせた張本人・・・・・・青太に顎で示す。お前だお前。今思いっきり眉間に皺寄せたお前!
 「取って来い、俺の服」
 そう低い声で告げる。青太は一瞬、ニンジン食べるまで席を立っちゃいけません、と言われた時みたいな表情をしたが、口元を歪めつつも両手を前に着いて膝立ちの自分の身体をずるずると引き寄せるような動きで部屋の隅まで向かう。捨て置かれていた俺の服を拾い上げ、また怠惰にずるずると床を擦りながら片手で自分の身体を移動させるようにしてこっちにやって来た。その間に俺は手の届く範囲に落ちていたTシャツを首から身体に通す。
 青太は服を俺に手渡しながら、「脱がすの大変だったのに」とジト目で一言。知るか!
 大急ぎでパンツとズボンを履くと、やっと六人とまともに顔を合わせられるようになった。皆お行儀よく座りながらも、口を尖らせて目を床に伏せている者、両手で頬杖をついて不満そうな表情の者・・・・・・和やかな空気とは言いがたかったが、俺は密かに胸を撫で下ろしていた。よかった、俺に情欲を燃やして犯しまくってやろうという空気はなくなっていた。いつものみんなに戻ったみたいだ。

 俺は改めてラグの上にあぐらをかき、全員を見渡して言う。
 「いいかお前ら。大人と子供がな、あんなことをしちゃいけません!」
 子供たちは大きな瞳を微かに揺らしたりつんっとそっぽを向いたり。
 「なんなんだ一体!本に書いてあったからって!嫌がる人に無理矢理やったらだめだろ!?」
 普段彼らにこんな風に怒ることはほぼない。彼らが本格的に悪いことをするなんてほぼないからだ。たまに遊びの最中加減を間違えて、やれ手が当たっただの何だのといちゃもんからの言い争いが始まったり、(主に赤火が)危ない遊びに周りを誘おうとしてたり、そういう時はこんな風に当事者をきちんと座らせて言い聞かせているけど。そんなの本当にたまにだ。彼らは一人一人性格が違うのに実に仲が良い。物は譲り合うし、誰かを仲間外れにしたりすることもない。よく出来た子たちだと実に感心する。あとこういう時に、言いだしっぺである梨黄一人のせいにしようとする子がいないのも何気に偉いなと思う。
 でももしかしたら今回のことは、そんな仲の良さがアダになったのではと俺は思っていた。最初は他愛もない雑談だ。梨黄が家で読んだエロ本に書いてあったことを実践してみたいと言い出し、そのうち話が大きくなりだして、でも止めるやつが誰もいないと。そんな経緯があったのではと想像される。大勢で話しているとよくあることだ。止めたほうがいいんじゃない、と言うタイミングを逃しているうちに、みんな気が大きくなってきて、あとは子供ゆえの無謀さでもってとうとう決行に至った・・・・・・おおよそこんなとこなのではないか。

 俺は目の前の床を見つめながら頭を悩ませる。ちゃんと上手に言えるだろうか。

 「・・・・・・あのな、エロ本に書いてあることは、本当に試そうとしたらいけません」
 注意深く言葉を選びながら切り出す。
 「なんでー?あれって本当にやってることじゃないの?」
 納得できない、と言った口調で梨黄が口を挟んだ。上目遣いで。ああ、可愛い・・・・・・。
 梨黄の眉間に皺が寄る。
 「裸の人がキスしたりおちんちんとか触ったりしてたよー?本当だよー?俺もやってみたいと思って、それで最初に赤火に話したんだ。ひかりにいちゃんとやってみたいねって」
 「だ、だからそれは、・・・・・・本当に好きな人としかやっちゃダメなの。誰とでもしていいことじゃないの」
 負けるな、俺。可愛さに押されるな。
 すかさず赤火が異を唱える。
 「えー!俺ひかりのこと本当に大好きだよ!だから梨黄に話聞いたとき、まずひかりとしてみたいねってことになったんだよ!」
 「そうそう、俺もそう思って、まず赤火に話したんだ。そしたら青太や緑葉や紫音や真白も一緒にみんなでしようってことになって・・・・・・」

 「ああー、そ、そうか」
 頭がクラクラするのを感じ、俺は必死で自分の気を保たせる。やはり俺の想像通りの展開があったのだ。
てか、真昼間に向かい合ってなんちゅう会話してんだ俺たちは。
 「あのな、まずな、そういうことする時は、相手に確認しないといけないな。一緒にこういうことやってもいいか?って。俺にちゃんと聞かないといけなかったな?」
 そう彼らに言い含める。
 「俺はお前らとあんなことしたいとは思ってなかった。・・・・・・い、いや違うぞ、お前らが嫌いってことじゃないから。好きだよ、大好きだからー!緑葉そんな顔するな!大好きだって、本当!」
 子供が傷つかないように傷つかないように顔色に注意しながら話す。これは難しいぞ。
 「俺はみんなのこと大好きだけど、でもああいうことはしたくないって人もいるから、事前にちゃんと言わないといけないの!な?分かった?」

 「・・・・・・」
 六人は黙りこくっている。だ、大丈夫かな?緊張しているのを彼らに悟られないよう俺は必死に顔を作る。普段は無邪気に走り回る姿が微笑ましいのに、今はみんなが何を考えているのか読み取れなくて怖い。
 「なあひかり」
 やがて、赤火が顔を上げ口を開く。
 「ん?」
 「ひかりは俺たちのこと好きなんだよな?」
 「お、おう」
 「なのにしたくなかったの?」
 大きな瞳が俺を真っ直ぐ見据えている。何だか俺の心の柔らかい部分を鷲掴みにされたような気分になり、一瞬言葉に詰まった。
 「そ、そうだよ。子供は自分が誰かとエッチなことをしていいのかどうか上手く判断できないから。だからエッチなことしちゃダメって決まってるの」
 例え18禁的な内容でも、大人として子供の疑問には向き合ってやらねばならない。嘘のないように、かつ分かりやすい言葉で慎重に俺は答える。
 「でもさあ・・・・・・」

 赤火の目がカエルに狙いを定める蛇になる。

 「ひかり、気持ちいいって思ってたよね?」
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