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10.異変
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「クローディア様、メリル殿はオーティス様に急遽呼ばれて、わたくしが代わりに参りました」
なるほど、それならば仕方ありません。
きっとオーティスは、国王陛下のご用でメリルの手が必要になったのでしょう。
「そう。申し訳ないけれど、お茶を頂けるかしら。喉が渇いていて」
「かしこまりました。まずはこちらを」
侍従はデザートの皿をわたくしの前のテーブルに置くと、フォークを添えました。
「まあ、おいしそうね」
お世辞ではなく、本心で言いました。
小さな三種のケーキとアイスクリームの周りをラズベリーソースで美しく飾られたデザート皿は食欲をそそります。
……今度、庶民向けの少し高級路線の店でこういう感じのものを出してみたらどうかとお父様に進言してみようかしら。おしゃれなもの好きな女の子に受けそうな気がします。
ナッツとドライフルーツの入ったアイスクリームはクリームチーズ味でとてもおいしい。隣のチョコレートケーキは濃厚そう。淡い緑色をしたムースはピスタチオかしら。ああ、でも苺の乗ったケーキも捨てがたいわ。
「お気に召されたようでなによりでございます」
わたくしの様子を窺っていた侍従がほっとしたように笑顔で言いました。
そんなに顔に出ていたかしら。口には出さないでしょうけど、がっついていたと思われるのは嫌だわ。
「お待たせ致しました」
目の前に紅茶が置かれると、わたくしはカップを持ち上げてその香りを堪能しました。……ああ良い香り。グランゼリアに帰る時に、少し茶葉を分けてもらってもいいかしら。
そんなことを考えながら、わたくしは紅茶に口をつけます。アイスクリームで緩和されていたとはいえ、喉が渇いていたので半分ほども飲んでしまいました。高価いお茶なのに、ろくに味わわないなんてもったいないわ。
「──!?」
カップをソーサーに戻したところで、わたくしは眩暈にも似た感覚に襲われました。
デザートに顔を突っ込んでしまうのを避けるため、ソファに体を預けると、急激な倦怠感が攻め寄せます。
たまらずに体を傾けたところで、冷ややかにこちらを見つめる侍従と目が合いましたが、わたくしの意識はそのまま暗い闇に包まれていきました。
──なんだか肌寒い。
それに胸が痛くて……いえ、別に心が痛いというわけではありません。もっと物理的な……。
そこでわたくしの意識は急激に覚醒しました。
「きゃあっ!?」
なんと目の前には息も荒い第三王子がいて、わたくしの胸をじかに揉みしだいていました。
「はっ、気づいたか! おまえのような生意気な女は大嫌いだが、おまえは体だけはいいからな。このわたしが抱いてやるんだから感謝しろ!」
馬鹿王子の上から目線の言葉に思わずむっとします。あなたのような傲慢馬鹿はこちらから願い下げですわよ。
──それにしても、なんという不覚。
この馬鹿王子の処分も決まっていないし、残党もいるのについ楽観してしまったことが悔しくてなりません。
せめてメリルかオーティスが戻ってきてから、なにかを口にすべきだったと後悔しても既に時は遅し。
わたくしは、情けなくも下の下着しか着けていない状態で、馬鹿王子に胸を弄ばれています。
なにが楽しいのか分かりませんが、ぎゅうぎゅう揉まれるのは痛いだけなので、やめてほしいです。手形がついてしまいますわ。
「おまえをものにすれば、わたしはグランゼリアの王になれるのだ! そうなったら、わたしを見下したこの国など滅ぼしてくれるわ!」
……この馬鹿、殺されるんじゃないかしら。
それにわたくしの夫は王にはなれませんし、なれても王配です。女王に助言はできますが、政務を執ることはできません。
それにしてもこの馬鹿王子、さっきからハアハア言ってわたくしの胸を揉んでいますけど、正直変態みたいで気持ち悪いですわ。
なるほど、それならば仕方ありません。
きっとオーティスは、国王陛下のご用でメリルの手が必要になったのでしょう。
「そう。申し訳ないけれど、お茶を頂けるかしら。喉が渇いていて」
「かしこまりました。まずはこちらを」
侍従はデザートの皿をわたくしの前のテーブルに置くと、フォークを添えました。
「まあ、おいしそうね」
お世辞ではなく、本心で言いました。
小さな三種のケーキとアイスクリームの周りをラズベリーソースで美しく飾られたデザート皿は食欲をそそります。
……今度、庶民向けの少し高級路線の店でこういう感じのものを出してみたらどうかとお父様に進言してみようかしら。おしゃれなもの好きな女の子に受けそうな気がします。
ナッツとドライフルーツの入ったアイスクリームはクリームチーズ味でとてもおいしい。隣のチョコレートケーキは濃厚そう。淡い緑色をしたムースはピスタチオかしら。ああ、でも苺の乗ったケーキも捨てがたいわ。
「お気に召されたようでなによりでございます」
わたくしの様子を窺っていた侍従がほっとしたように笑顔で言いました。
そんなに顔に出ていたかしら。口には出さないでしょうけど、がっついていたと思われるのは嫌だわ。
「お待たせ致しました」
目の前に紅茶が置かれると、わたくしはカップを持ち上げてその香りを堪能しました。……ああ良い香り。グランゼリアに帰る時に、少し茶葉を分けてもらってもいいかしら。
そんなことを考えながら、わたくしは紅茶に口をつけます。アイスクリームで緩和されていたとはいえ、喉が渇いていたので半分ほども飲んでしまいました。高価いお茶なのに、ろくに味わわないなんてもったいないわ。
「──!?」
カップをソーサーに戻したところで、わたくしは眩暈にも似た感覚に襲われました。
デザートに顔を突っ込んでしまうのを避けるため、ソファに体を預けると、急激な倦怠感が攻め寄せます。
たまらずに体を傾けたところで、冷ややかにこちらを見つめる侍従と目が合いましたが、わたくしの意識はそのまま暗い闇に包まれていきました。
──なんだか肌寒い。
それに胸が痛くて……いえ、別に心が痛いというわけではありません。もっと物理的な……。
そこでわたくしの意識は急激に覚醒しました。
「きゃあっ!?」
なんと目の前には息も荒い第三王子がいて、わたくしの胸をじかに揉みしだいていました。
「はっ、気づいたか! おまえのような生意気な女は大嫌いだが、おまえは体だけはいいからな。このわたしが抱いてやるんだから感謝しろ!」
馬鹿王子の上から目線の言葉に思わずむっとします。あなたのような傲慢馬鹿はこちらから願い下げですわよ。
──それにしても、なんという不覚。
この馬鹿王子の処分も決まっていないし、残党もいるのについ楽観してしまったことが悔しくてなりません。
せめてメリルかオーティスが戻ってきてから、なにかを口にすべきだったと後悔しても既に時は遅し。
わたくしは、情けなくも下の下着しか着けていない状態で、馬鹿王子に胸を弄ばれています。
なにが楽しいのか分かりませんが、ぎゅうぎゅう揉まれるのは痛いだけなので、やめてほしいです。手形がついてしまいますわ。
「おまえをものにすれば、わたしはグランゼリアの王になれるのだ! そうなったら、わたしを見下したこの国など滅ぼしてくれるわ!」
……この馬鹿、殺されるんじゃないかしら。
それにわたくしの夫は王にはなれませんし、なれても王配です。女王に助言はできますが、政務を執ることはできません。
それにしてもこの馬鹿王子、さっきからハアハア言ってわたくしの胸を揉んでいますけど、正直変態みたいで気持ち悪いですわ。
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