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連載
エドヴァルド 旅立つ
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「エドヴァルド、わしの手の者も貸すぞ。」
「お気持ちはありがたいのですが、表立って陛下が動かれてはいけません。まずは少数で探ってまいります。その間、カティをよろしくお願いします。」
エドヴァルドは魔法を使う敵が多くいる国を調査するのは自分しかいないと国王に頼み、長期間空けることを詫びるとともにカティの身の安全をお願いした。
エドヴァルドはエンヤ、ミルカ他数人の魔術師とレオ、少数の騎士を連れて旅だった。
エドヴァルドを上回る魔術師となったカティはついていくときかなかったが、
「今回はまだ調査だけだから心配はない。それに大切なお前を守るのは私の役目だ。いくらお前の力がすでに私を凌駕しようとも、お前を危険なところに連れて行くつもりはない。ここで朗報を待つといい。」
そう言って、カティの頭のてっぺんにいつもより長いキスをして出立していった。ふにゃらと溶けきったカティを残して。
遠い国、往路だけで1週間、往復で半月。調査に時間がかかるとしても2カ月前後でエドヴァルドが帰ってくる予定だ。
まだ帰ってくるはずがない翌日からカティは毎日窓から外を眺めた。
エドヴァルドが旅立ってからも刺客はやってきた。強固な結界に阻まれて入れないようにするだけでは敵の様子がつかめない。
カティはわざと結界の一部をとき庭の一部に入り込めるようにして大きな落とし穴を掘っておいた。落とし穴にはどれほどあがいても出れない魔法。
名付けて暗殺者ほいほい。
粘着の強い液体にからめとられて動けなくなる。またその液体には魔法を封じる作用もある。
面白い様に獲物がかかり、カティはそんなに狙われているんだとまた凹んだ。
そして、襲撃のしつこさにエドヴァルドの身が心配になる。苛立ちと不安とで捕らえた襲撃者に八つ当たりをせずにはおれなかった。
見えない蔦に拘束されたように動けない黒装束の男たちの頭巾を取りカティは睨みつけた。
「とう様を傷つけたらあなたたちの仲間全員許さないんだから!」
一生消えない染料で、右頬に「暗殺辞めますか」、左頬に「それとも人間やめますか」と標語を書いた。そして目を閉じても開いて見えるように瞼の上に目を描いた。そのうえでバーバーカティで前髪を剃って恐ろしく広い額(ひたい)に仕上げてやった。
その雁首を並べた男たちの仕上がりに、芸術作品の完成に満足するような顔でカティはうなづいた。
カティの事を頼むといわれている国王は、カティへの助力を惜しまなかった。
騎士を派遣して暗殺者たちを連行するつもりが、カティに八つ当たりされた賊の顔を見て、笑ってはいけないが堪えられず笑ってしまう。日頃訓練をしている騎士たちも思わず笑ってしまうしまりのない連行となった。
王宮の牢屋に連れてこられた賊たちは、辱められたとはいえ拷問を受けることもなく、子供のお遊び程度の処罰をなめてかかっていた。
「お前たちはバートランド国から来たのだろう?なぜ幼気な子供の命を狙う?命を狙った相手にこのような可愛い処罰しかできない子にむごいとは思わないのか?」
国王の問いかけに誰も答えることはない。
国王もそれはわかっていたようで、気にすることはなく
「まあよい。期待はしておらぬ。やれ。」
世間話のついでのように国王が命じると、側に控えていた処刑人が賊の胸を剣で貫いた。
一人が床に倒れ込むと他の者は、目をむいた。どうせ監禁、拷問くらいだと高をくくっていたのだ。
「ま、まて。」
しかし国王は首を振ると、全員の始末を命じた。
「・・・惜しいな。出来る事ならその姿で母国へ送り返してやりたかったな。お前たちの主も笑ってくれたであろう。」
そう言って倒れている亡骸が目を開いているように見えて、また笑いそうになり、顔を引き締めた。
「お気持ちはありがたいのですが、表立って陛下が動かれてはいけません。まずは少数で探ってまいります。その間、カティをよろしくお願いします。」
エドヴァルドは魔法を使う敵が多くいる国を調査するのは自分しかいないと国王に頼み、長期間空けることを詫びるとともにカティの身の安全をお願いした。
エドヴァルドはエンヤ、ミルカ他数人の魔術師とレオ、少数の騎士を連れて旅だった。
エドヴァルドを上回る魔術師となったカティはついていくときかなかったが、
「今回はまだ調査だけだから心配はない。それに大切なお前を守るのは私の役目だ。いくらお前の力がすでに私を凌駕しようとも、お前を危険なところに連れて行くつもりはない。ここで朗報を待つといい。」
そう言って、カティの頭のてっぺんにいつもより長いキスをして出立していった。ふにゃらと溶けきったカティを残して。
遠い国、往路だけで1週間、往復で半月。調査に時間がかかるとしても2カ月前後でエドヴァルドが帰ってくる予定だ。
まだ帰ってくるはずがない翌日からカティは毎日窓から外を眺めた。
エドヴァルドが旅立ってからも刺客はやってきた。強固な結界に阻まれて入れないようにするだけでは敵の様子がつかめない。
カティはわざと結界の一部をとき庭の一部に入り込めるようにして大きな落とし穴を掘っておいた。落とし穴にはどれほどあがいても出れない魔法。
名付けて暗殺者ほいほい。
粘着の強い液体にからめとられて動けなくなる。またその液体には魔法を封じる作用もある。
面白い様に獲物がかかり、カティはそんなに狙われているんだとまた凹んだ。
そして、襲撃のしつこさにエドヴァルドの身が心配になる。苛立ちと不安とで捕らえた襲撃者に八つ当たりをせずにはおれなかった。
見えない蔦に拘束されたように動けない黒装束の男たちの頭巾を取りカティは睨みつけた。
「とう様を傷つけたらあなたたちの仲間全員許さないんだから!」
一生消えない染料で、右頬に「暗殺辞めますか」、左頬に「それとも人間やめますか」と標語を書いた。そして目を閉じても開いて見えるように瞼の上に目を描いた。そのうえでバーバーカティで前髪を剃って恐ろしく広い額(ひたい)に仕上げてやった。
その雁首を並べた男たちの仕上がりに、芸術作品の完成に満足するような顔でカティはうなづいた。
カティの事を頼むといわれている国王は、カティへの助力を惜しまなかった。
騎士を派遣して暗殺者たちを連行するつもりが、カティに八つ当たりされた賊の顔を見て、笑ってはいけないが堪えられず笑ってしまう。日頃訓練をしている騎士たちも思わず笑ってしまうしまりのない連行となった。
王宮の牢屋に連れてこられた賊たちは、辱められたとはいえ拷問を受けることもなく、子供のお遊び程度の処罰をなめてかかっていた。
「お前たちはバートランド国から来たのだろう?なぜ幼気な子供の命を狙う?命を狙った相手にこのような可愛い処罰しかできない子にむごいとは思わないのか?」
国王の問いかけに誰も答えることはない。
国王もそれはわかっていたようで、気にすることはなく
「まあよい。期待はしておらぬ。やれ。」
世間話のついでのように国王が命じると、側に控えていた処刑人が賊の胸を剣で貫いた。
一人が床に倒れ込むと他の者は、目をむいた。どうせ監禁、拷問くらいだと高をくくっていたのだ。
「ま、まて。」
しかし国王は首を振ると、全員の始末を命じた。
「・・・惜しいな。出来る事ならその姿で母国へ送り返してやりたかったな。お前たちの主も笑ってくれたであろう。」
そう言って倒れている亡骸が目を開いているように見えて、また笑いそうになり、顔を引き締めた。
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