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第一章
第11話 旅路
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祖父が亡くなってひと月が過ぎた。
親戚の人達はみんなよく看てくれたね頑張ったねと明里に言ってくれた。
口には出さないけど、家族みんながこれで楽になれると思った。
学校が改修工事の為の特別休校日で今日から休みだ。三連休だった。
明里はこの連休を利用して行きたい場所があった。
この日の為に準備をし、親にも許可をもらった。
◇
最寄り駅の改札で大門君に出会った。
「よう、どこに行くの?すげぇ荷物だな」
明里は防寒具に身を固めて、大きなリュックを背負っていた。
「……ちょっと……ね」
どこに行くかは言いたくないし、話せば長くなる。
言葉に詰まってるんだから、大門君、察してくれと思った。
苦笑いして軽く手を挙げた。
『じゃあね』の意味。
手を振って改札を抜けた。
ふと後ろを見ると、まさかの大門君。
彼は私について来ていた。
大門君は明里と同じ電車に乗ると明里の横の席に座った。
電車は十分に空いていた。
7席横並びのシートには私とサラリーマンが両端に座り、真ん中五席が空いている。向かいのシートには誰も座っていない、同じ車両のほかの座席も似たような状況だ。
平日の昼下がりだ乗客は少ない。
「しってる?空席でガラ空きなのに、人のすぐ隣に座る人を、トナラーって言うんだって」
「知らない人同士に使うんだろう。友達同士でも言うの?」
大門君のくだらない質問を無視した。
何処までついてくるのか知らないけど、 いちいちかかわるのは面倒くさい。
どうぞお好きにという感じで放っとく事にする。
「おじいさん。残念だったな……えっと、ご愁傷様ですとかなんとか言うのかな」
「……まぁ、もう、年だったし」
もともとそんなに話が上手なタイプではない大門君が、遠慮がちに言葉を選んで話している。少し気の毒に思えた。
電車がカーブに差しかかる時、スピードがガクンと落ちた。その振動で明里は、大門君に寄っかかってしまった。
ラガーマンらしくガッシリした体つき、大人の人みたいだなと思った。
明里は電車を乗り換えて羽田へ向かった。
大門君は何処まで来るのか知らないけど、このまま私について来てもあまり意味がない。最後まではついてこられないんだから、今言った方が、親切だなと明里は思った。
「私、今から北海道に行くんだけど、大門君何処までついてくるの?」
「北海道!?」
驚いたようだった。大門君は鉄道のICカードで乗ったんだろう。適当なとこで折り返した方がいい。
「北海道か……一人で行くの?」
明里は頷く。大門君は財布の中身を確認している。
「ちょっとコンビニ寄って金下ろせば、なんとか行けるかも」
冗談きついな。目を丸くして眉根を寄せる。
「ははは、無理だよ。飛行機予約してないでしょ」
そっか飛行機かと大門君は考えている。
どの便か大門君は聞いてきた。どうせついて来れないだろうと思い明里は素直に教えた。
大門君はスマホでいろいろ調べているみたいだった。
明里一人におじいちゃんの面倒を見させて、申し訳なく思っていたのか、お姉ちゃんがお小遣いをくれた。十万円、大金だった。好きに使えと言ってくれた。
兄は学生の身分だからと、財布から五千円出して明里にくれた。「気持ちわる」っと言いながらも有り難く頂戴した。
親戚の叔父さんもお葬式の時にお小遣いをくれた。
そのお金で北海道まで行けるなと考えた。
一応、姉兄二人とも明里に悪いと思っていたようだ。自分たちは家を出ている。
明里が介護を手伝う為に陸上部に入らなかった事を彼らは知っているし、申し訳なく思っていたらしい。
足は速かったけど、それで大学へ行けるほど速いわけではなかった。タイムもどんどん落ちてきていたので、ここら辺が限界かもなと自分で思っていた。
確かに自分が部活動をしなければ、親が助かるとは思ったが、そこまで部活に対して熱意を持っていた訳でもなかったから別に良かった。
だから気にすることないのに。
親戚の人達はみんなよく看てくれたね頑張ったねと明里に言ってくれた。
口には出さないけど、家族みんながこれで楽になれると思った。
学校が改修工事の為の特別休校日で今日から休みだ。三連休だった。
明里はこの連休を利用して行きたい場所があった。
この日の為に準備をし、親にも許可をもらった。
◇
最寄り駅の改札で大門君に出会った。
「よう、どこに行くの?すげぇ荷物だな」
明里は防寒具に身を固めて、大きなリュックを背負っていた。
「……ちょっと……ね」
どこに行くかは言いたくないし、話せば長くなる。
言葉に詰まってるんだから、大門君、察してくれと思った。
苦笑いして軽く手を挙げた。
『じゃあね』の意味。
手を振って改札を抜けた。
ふと後ろを見ると、まさかの大門君。
彼は私について来ていた。
大門君は明里と同じ電車に乗ると明里の横の席に座った。
電車は十分に空いていた。
7席横並びのシートには私とサラリーマンが両端に座り、真ん中五席が空いている。向かいのシートには誰も座っていない、同じ車両のほかの座席も似たような状況だ。
平日の昼下がりだ乗客は少ない。
「しってる?空席でガラ空きなのに、人のすぐ隣に座る人を、トナラーって言うんだって」
「知らない人同士に使うんだろう。友達同士でも言うの?」
大門君のくだらない質問を無視した。
何処までついてくるのか知らないけど、 いちいちかかわるのは面倒くさい。
どうぞお好きにという感じで放っとく事にする。
「おじいさん。残念だったな……えっと、ご愁傷様ですとかなんとか言うのかな」
「……まぁ、もう、年だったし」
もともとそんなに話が上手なタイプではない大門君が、遠慮がちに言葉を選んで話している。少し気の毒に思えた。
電車がカーブに差しかかる時、スピードがガクンと落ちた。その振動で明里は、大門君に寄っかかってしまった。
ラガーマンらしくガッシリした体つき、大人の人みたいだなと思った。
明里は電車を乗り換えて羽田へ向かった。
大門君は何処まで来るのか知らないけど、このまま私について来てもあまり意味がない。最後まではついてこられないんだから、今言った方が、親切だなと明里は思った。
「私、今から北海道に行くんだけど、大門君何処までついてくるの?」
「北海道!?」
驚いたようだった。大門君は鉄道のICカードで乗ったんだろう。適当なとこで折り返した方がいい。
「北海道か……一人で行くの?」
明里は頷く。大門君は財布の中身を確認している。
「ちょっとコンビニ寄って金下ろせば、なんとか行けるかも」
冗談きついな。目を丸くして眉根を寄せる。
「ははは、無理だよ。飛行機予約してないでしょ」
そっか飛行機かと大門君は考えている。
どの便か大門君は聞いてきた。どうせついて来れないだろうと思い明里は素直に教えた。
大門君はスマホでいろいろ調べているみたいだった。
明里一人におじいちゃんの面倒を見させて、申し訳なく思っていたのか、お姉ちゃんがお小遣いをくれた。十万円、大金だった。好きに使えと言ってくれた。
兄は学生の身分だからと、財布から五千円出して明里にくれた。「気持ちわる」っと言いながらも有り難く頂戴した。
親戚の叔父さんもお葬式の時にお小遣いをくれた。
そのお金で北海道まで行けるなと考えた。
一応、姉兄二人とも明里に悪いと思っていたようだ。自分たちは家を出ている。
明里が介護を手伝う為に陸上部に入らなかった事を彼らは知っているし、申し訳なく思っていたらしい。
足は速かったけど、それで大学へ行けるほど速いわけではなかった。タイムもどんどん落ちてきていたので、ここら辺が限界かもなと自分で思っていた。
確かに自分が部活動をしなければ、親が助かるとは思ったが、そこまで部活に対して熱意を持っていた訳でもなかったから別に良かった。
だから気にすることないのに。
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