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12.若い受付嬢が~ウッフン! 

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「げっ、俺の剣が消えたぞ! どういう事だ?」
「ジャイアントの兄貴――剣だけじゃないでやんす。服や鎧も全部なくなってるでやんすよ」
「なに? うわーーー、何で俺たち裸になっているんだ? ……そうかクソガキ、てめえの仕業だな! ふざけたまねしやがって、只じゃおかねえぞ!」

 怒り心頭のジャイアントがフルチンで殴り掛かってくるが、既に予想済みである。私はスネーオが投げた短剣を床から引き抜き、二人の影に投擲した。

「秘技、影縫い!!!」

 二人の影に短剣が突き刺さる。同時に二人の体はピクリとも動かなくなるのであった。

「さて、受付のおねえさん――荷造り用のロープはありませんか?」

 喚き散らしている凸凹コンビを尻目に、茫然としている若い受付嬢の元におもむき、爽やかな笑みを浮かべる。我に返った受付嬢であったが、私の顔をマジマジと見つめ、ほんのりと頬を赤らめている。
 
「は、はいっ、これをどうぞ」
「ありがとう、美しいおねえさん」

 備品を漁りロープを手渡す受付嬢であったが、手が少し触れただけでうっとりと夢見るような表情を浮かべている。イケメンはどこの世界でもお得のようだ。そう言えば元の世界で――イケメンはブサイクな男性よりも年収が17%高く、生涯賃金では約2500万円の違いになる――という話を聞いたことがあった。この世界でもイケメンは、優先的に実入りの良い仕事を回してもらえそうである。私は、若くイケメンに容姿を変えてくれたピロテース様に感謝するのであった。

「さて、あまり乗り気はしないけど……」

 むさいオッサンたちなど触りたくないが、暴れられると面倒なのでロープで淡々と縛り上げていく。美人でエロエロボディのピロテース様を緊縛した時はハイテンションであったが、今のテンションはだだ下がりである。やがて美しく淫猥なピロテース様の亀甲縛りと相反するような、見苦しい裸のオッサンたちの緊縛姿が衆目に晒されるのであった。

「うぷっ、見ただけで吐き気を催すな」

 ジャイアントとスネーオの首から縄をかけ、後ろに回した両手を厳重に縛り上げる――いわゆる高手小手にしたのだ。習得した緊縛術(Lv3)のスキルは優秀なようで、難しい縛りもあっけなく出来た。しかし自分で緊縛しといて何だが、ハッキリ言って醜悪すぎて目が腐りそうである。そして憂鬱な気分の私に、凸凹コンビは激しく喚き立てている。

「やかましい! 汚物は消毒だ!」

 キレた私は、風魔法で二人を吹っ飛ばす。足も縛られている凸凹コンビは、ゴロゴロと転がるようにギルドの建物の外に飛び出していく。当然、外から悲鳴や怒声が響き渡る。

「キャーーーーー、変態よ、変態!」
「うわー、何で裸で縛られたオッサンたちが転がってくるんだ! ……衛兵だ、衛兵を呼べ!」
「オイオイ、あれってCランク冒険者のジャイアントとスネーオじゃねえか?! 誰かにやられたのか?」
「へっ、いい気味だ! 散々威張りくさっていた罰が当たったんだろ!」

 うら若き女性たちは薄汚い裸のオッサンを見て悲鳴を上げ、男たちは侮蔑の声を上げている。騒然とする外を一瞥すると、私はギルドで登録するのであった。


「お待たせしましたアスカさん、こちらがギルドの登録証です。アスカさんはFランクからの「ちょっと待ちな、レイラ!」」
「ギ、ギルド長! なぜこんな所に……」

 受付嬢の説明も終わり、ギルドの登録証を受け取ろうとしたのだが、再び厄介ごとが発生したようだ。頬に派手な裂傷がある迫力満点の筋肉オヤジが、ノシノシと階段を降りてこちらにやってくきた。ここはギルドでなく、どこぞの組事務所だったのだろうか?――そう思えるほどの人相の悪さであった。

「ジャイアントとスネーオ相手に騒動を起こしたのはお前か? ギルド内での冒険者同士の私闘は禁止されているんだが?」
「それなら私は無罪ですね。冒険者でもない一般人に、喧嘩を売ってきたのはあの二人ですよ。私でなく、冒険者を統率できていないギルド長の責任では?」
「ぐわっはははは、言うじゃねえか坊主! 俺相手にそこまで言うとは、いい度胸しているじゃねえか。気に入ったぜ!」

 豪快に笑いながら、私の肩をバンバン叩くギルド長。凄い力で肩が外れそうである。

「おいレイラ、この坊主はDランクからのスタートだ。それから一般人に喧嘩を売って、返り討ちにされたアホ二人はDランクに格下げだ!」
「えっ、新人のアスカさんをいきなりDランクにするんですか?」
「この坊主は、ただ者じゃねえよ。アホとはいえCランク冒険者二人を、無傷で返り討ちにしやがったんだ。その上、見た事がねえ術や魔法まで使えるんだぞ。そしてなによりな……こいつは、まだ本気を出してねえ。まったくとんでもねえ奴が来やがったな」
「わ、分かりました。……ギルドマスター公認のアスカさんは、Dランクからのスタートになります。そしてこれが登録証です無くさないで下さいね。それから貴方の担当は、私がやらせていただきますが宜しいでしょうか?」

 金属板に刻印が打ち込まれた登録書を渡しながら、レイラさんは私の手を握りしめる。胸の谷間を見せつける前のめりの姿勢があざといが、スケベな私の視線は正直である。ついついレイラさんの胸に目が行ってしまうのであった。

「えーーっ、ズルいよレイラ! アスカさんを独り占めにしようたってそうはいかないわよ! ウフフッ、初めましてアスカさん――私の名前はレベッカです! レイラより私の方が胸が大きくて魅力的ですよ♡ それと、よろしければ一緒にお食事でも……」

 だっちゅ~のポーズで胸を強調させながら、新たなギルド嬢が割り込んできた。レイラさんより大人っぽい感じの長身の美女である。制服の胸元は豊かな膨らみでムッチリと盛り上がり、深い胸の谷間を見せつけながら男の劣情を煽ってくる。

「おにいさんのエッチ! 浮気者! 女たらし! もう知らないんだから!」
「モテモテだな坊主――まっ、みんな将来のことを考えて、若くて優秀な奴とねんごろな関係になりたいって考えてんだよ。坊主が誰と付き合おうと何人と付き合おうと勝手だが、情事の果ての刃傷沙汰だけは勘弁してくれよ。がははっ!」

 プリプリと怒るセシルちゃんにはお尻を抓られ、目の色が変わった受付嬢の猛アピールは激しさを増していく。美人の受付嬢に憧れている冒険者たちは、血の涙を流しながら私に呪詛の言葉を吐きかけてくる。カオス状態に陥ったギルドから、私はセシルちゃんを連れて逃走するのであった。


「おにいさんは、本当にエッチなんだから! ギルドのおねえさんたちの胸ばっかり見て……そんな見たいなら私の胸を見ればいいのに!」

 ギルドでの登録も終わり、セシルちゃんの自宅である宿屋に向かっているのだが、彼女のご機嫌は未だ斜めである。それでも決して手を握ったまま離さないところが、セシルちゃんの可愛ところである。私は、ついつい彼女の頭を撫ででしまうのであった。

「そ、そんな事で騙されないんだからね」

 そう言いながら横を向いてしまうセシルちゃんだが、お顔は真っ赤である。この可愛い生物の機嫌を直すべく、私は奮闘し続けるのであった。


「お客様、オリオン亭にようこそいらっしゃいました。私がこの宿の女将のセレナです。セシルがご迷惑をお掛けしたようで、申し訳ございませんでした」

 セシルちゃんの自宅である宿に辿り着くと、おっとりとした感じの女性が私を出迎える。艶やかなブロンドの髪と美しいグリーンの瞳が目を引き、脂の乗った熟れた身体は、子を持つ母親とは思えぬほど美しいフォルムを保っていた。

「いえいえ、セシルちゃんに色々と教えてもらって感謝しています。見ての通り私は他国から来たもので、この国の諸事情に疎くて困っていたんですよ」
「そうだよ、お母さん――おにいさんは凄く強いけど、とんでもない世間知らずなんだよ。だから、しっかり者の私が、面倒を見てあげたんだよ」
「ふふっ、セシルったらお客さんの事がよほど気に入ったのね。お客さんが迷惑でなければ、セシルの話し相手になってくださいね」
「暫く、この街に滞在するつもりなので構いませんよ。それから5日ほど泊まりたいと思ってるんですが、宿代はどれくらいでしょうか?」
「素泊まりで1日銀貨3枚で、朝食、夕食付きで1日銀貨5枚となっておりますが、よろしいでしょうか?」
「では、食事付きで5日間お願いします」

 代金を手渡すと、セシルちゃんは私の手を引き部屋まで案内してくれる。私としては、セレナさんともう少し話をしたかったので非常に残念であった。
 
 しかし美人の女将さんだなぁ~、優しくておっとりとした感じがピロテース様に似ているし、何より熟れきって肉感溢れるエロエロボディが最高だよ。セシルちゃんの母親だから30代だと思うけど、元々アラフォーのオッサンの私には、心惹かれる女性だなぁ。――そんな事を考えていると、セシルちゃんがジッと私の顔を覗き込んでいる。

「セ、セシルちゃん――どうしたのかな?」
「おにいさん――お母さんに手を出したらダメだからね!」
「な、な、何を言ってるのかなぁ~。人妻に手を出すなんて、そんな非常識な事はしないよ!」 
「お父さんは3年前に亡くなったから、お母さんは今一人だよ」
「そ、そうなんだ! それなら何の問題もなく……ギャーーー、痛い痛い!」

 セシルちゃんに思いっきりお尻を抓られる。その後、顔をムッとさせたセシルちゃんにお小言を貰いながら、漸く部屋に辿り着くのであった。

「此処がおにいさんの部屋だよ。それから、おにいさんの部屋の掃除は私が担当するからね」
「えーーっ、別にセレナさんでも構わないんだけど!」

 ギロッ!!!

「はいっ……セシルちゃんでお願いします」

 少女のひと睨みで、あっけなく前言撤回をさせられるのであった。

「おにいさん――これが部屋の鍵だよ。それから、女の人を部屋に連れ込むのは禁止だからね」
「や、やだなー、そんな事するわけないよ!」
「エッチで女好きのおにいさんの言う事なんか信じられません」

 苛立たしそうにバタンとドアを閉めると、セシルちゃんは何処かに行ってしまうのであった。

「ふぅ~、やれやれ!」

 溜息をついた後、改めて部屋の中を見回してみる。部屋には西日が差しむ小さな窓が一つあり、オレンジ色の光が室内を照らしていた。窓の傍には木のベッドが一つあり、部屋の端には小さなテーブルや木の椅子が置いてある。壁にはランプが掛けられており、部屋の中の清掃は行き届いているようでかなり清潔であった。私はベッドに腰を下ろすと、これからの事を考えるのであった。

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みんなの感想(1件)

スパークノークス

おもしろい!
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悪代官と越後屋
2021.09.01 悪代官と越後屋

感想ありがとうございます。
オヤジギャグ、エロネタが多いと思いますが、どうぞよろしくお願い致します。

解除
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