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番外編
ミトとレベッカ
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出会いは必然で、決められていたことで、それに対しては何の感情も抱かなかった。
ただ、少し年が離れていてその分他の面子よりも子供の年齢が離れてしまうかな、ぐらいの考えだったとミトは考えている。
しかし、よくよく考えれば、王妃レースからは外れ、学友コースからも外れることが出来て、子供を自由に育てることが出来る、いい人材なのではないかと気が付いたのは、実はつい最近だ。
ミトの家とレベッカの家は、古くから家ぐるみの付き合いがあり、家同士の婚姻も何度か会ったほどで、ミトはレベッカが婚約者だと言われたときは「あ、そうなんだ」と言った感じの反応だった。
それよりも、新しく友人になったアイリの方が心配でたまらなかったぐらいだ。
アイリは、考え無しに触れてしまえば壊れてしまいそうなガラスの工芸品のようで、ミトにとっては最初はおっかなびっくり接していたが、ラルクと、そして何よりもターニャの献身的な支えによって落ち着きを取り戻したアイリに、誰よりもホッとしたのは実はミト自身なのかもしれないと今では思うときもある。
「ミト様、どうかなさいましたか?」
「いや、レベッカは俺との婚約をどう考えてるのかなって思って」
「ミト様との婚約をですか?家の決めたことですし、別に何とも思っておりませんけれども、それがなにか?」
「……そうだよなあ。婚約者に何かを求めるのっていうこと自体が珍しいんだよなあ、普通は」
「そうですわよ」
その普通ではない人々が自分の周りにいすぎて感覚がマヒしてしまいそうだ、とミトは独り言ちる。
「なんですの、いったい」
「いや。こっちの話。レベッカはそのままでいいよ」
「変われと言われましても、急に変わることは難しゅうございますわ」
「うんうん、変わんなくていいよ」
「あら、でも私も女ですもの。今にミト様があった驚くようないい女になって見せますわよ」
「花姫には成れそうにはないけどな」
「むぅ。それは仕方がありませんは。私にはそこまでの資格も教養もないのですから」
どこか寂し気にいうレベッカにミトは思わず、と言った感じで口を開く。
「花姫に推薦してやってもいいんだぞ?」
「まあ!」
レベッカは驚いたように目を見開くと、馬鹿にされたと言った感じにキッとミトのことを睨みつけた。
「冗談じゃありませんわ。そんな出来レースのような物、嬉しくも何ともありませんわ」
「だよなあ」
「全く、何を考えていらっしゃいますの。私はそこまで馬鹿ではありませんわよ。花姫は周囲に認められてやっと慣れるものですわ。自分の婚約者可愛さに推薦するようなものではございませんわよ」
「悪かったって。そんなに怒るなよ、ほら、お菓子でも食べて機嫌直せよな」
「……むぅ、ミト様は私のことを時折必要以上に年下扱いなさいますわよね」
「事実年下だしな」
「いずれそんなに気にならなくなりますわよ」
「今は気にする」
「むぅ……」
レベッカは納得がいかないと言わんばかりに、頬を膨らませたが、その様子すら、ミトにとっては年下らしい、可愛らしいしぐさに見えて仕方がないのだ。
アイリに感じるのとはまた別の、それこそ家族愛的な何かをレベッカには感じているのだとミトは考えている。
ラルクとは違い、アイリには間違いなく友愛を抱いていると自負しているミトだからこそ、レベッカには別の感情を抱いているとはっきりとわかる。
「レベッカ」
「なんですの?」
「好きだって言ったらどうする?」
「ミト様が私のことをですか?」
「うん」
「そうですわねえ、ありがとうございます。と言っておきますわ」
「自分も好きだって言わないんだ?」
「あら」
そこでレベッカは年不相応に大人びた表情を浮かべる。
「好きだって言われたいんですの?」
「……どうかな。わっかんねー」
「ふふ、変なミト様」
レベッカはミトが用意したケーキを食べながらくすくすと笑い、ミトはそれを見ながら困ったように笑った。
ただ、少し年が離れていてその分他の面子よりも子供の年齢が離れてしまうかな、ぐらいの考えだったとミトは考えている。
しかし、よくよく考えれば、王妃レースからは外れ、学友コースからも外れることが出来て、子供を自由に育てることが出来る、いい人材なのではないかと気が付いたのは、実はつい最近だ。
ミトの家とレベッカの家は、古くから家ぐるみの付き合いがあり、家同士の婚姻も何度か会ったほどで、ミトはレベッカが婚約者だと言われたときは「あ、そうなんだ」と言った感じの反応だった。
それよりも、新しく友人になったアイリの方が心配でたまらなかったぐらいだ。
アイリは、考え無しに触れてしまえば壊れてしまいそうなガラスの工芸品のようで、ミトにとっては最初はおっかなびっくり接していたが、ラルクと、そして何よりもターニャの献身的な支えによって落ち着きを取り戻したアイリに、誰よりもホッとしたのは実はミト自身なのかもしれないと今では思うときもある。
「ミト様、どうかなさいましたか?」
「いや、レベッカは俺との婚約をどう考えてるのかなって思って」
「ミト様との婚約をですか?家の決めたことですし、別に何とも思っておりませんけれども、それがなにか?」
「……そうだよなあ。婚約者に何かを求めるのっていうこと自体が珍しいんだよなあ、普通は」
「そうですわよ」
その普通ではない人々が自分の周りにいすぎて感覚がマヒしてしまいそうだ、とミトは独り言ちる。
「なんですの、いったい」
「いや。こっちの話。レベッカはそのままでいいよ」
「変われと言われましても、急に変わることは難しゅうございますわ」
「うんうん、変わんなくていいよ」
「あら、でも私も女ですもの。今にミト様があった驚くようないい女になって見せますわよ」
「花姫には成れそうにはないけどな」
「むぅ。それは仕方がありませんは。私にはそこまでの資格も教養もないのですから」
どこか寂し気にいうレベッカにミトは思わず、と言った感じで口を開く。
「花姫に推薦してやってもいいんだぞ?」
「まあ!」
レベッカは驚いたように目を見開くと、馬鹿にされたと言った感じにキッとミトのことを睨みつけた。
「冗談じゃありませんわ。そんな出来レースのような物、嬉しくも何ともありませんわ」
「だよなあ」
「全く、何を考えていらっしゃいますの。私はそこまで馬鹿ではありませんわよ。花姫は周囲に認められてやっと慣れるものですわ。自分の婚約者可愛さに推薦するようなものではございませんわよ」
「悪かったって。そんなに怒るなよ、ほら、お菓子でも食べて機嫌直せよな」
「……むぅ、ミト様は私のことを時折必要以上に年下扱いなさいますわよね」
「事実年下だしな」
「いずれそんなに気にならなくなりますわよ」
「今は気にする」
「むぅ……」
レベッカは納得がいかないと言わんばかりに、頬を膨らませたが、その様子すら、ミトにとっては年下らしい、可愛らしいしぐさに見えて仕方がないのだ。
アイリに感じるのとはまた別の、それこそ家族愛的な何かをレベッカには感じているのだとミトは考えている。
ラルクとは違い、アイリには間違いなく友愛を抱いていると自負しているミトだからこそ、レベッカには別の感情を抱いているとはっきりとわかる。
「レベッカ」
「なんですの?」
「好きだって言ったらどうする?」
「ミト様が私のことをですか?」
「うん」
「そうですわねえ、ありがとうございます。と言っておきますわ」
「自分も好きだって言わないんだ?」
「あら」
そこでレベッカは年不相応に大人びた表情を浮かべる。
「好きだって言われたいんですの?」
「……どうかな。わっかんねー」
「ふふ、変なミト様」
レベッカはミトが用意したケーキを食べながらくすくすと笑い、ミトはそれを見ながら困ったように笑った。
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おもしろかったです!!!ざまぁ加減が絶妙に素晴らしかったです。メイリンは
全然微塵も可哀そうではなく ほぼ一瞬なので逆に温情でしょう。アイリは10年間?のネグレクト。
ありがとうございます!
メイリンは、まあそこまで悪いことをしているわけではないですからね。
初めまして、茄子センセの当作品が好きで何回も繰り返して読ませて抱いております!
メイリンとの会話でのキャッチボールにもならない堂々巡りな感じが凄く好きです!
実際に、メイリンやその周囲(両親やエイミール)の様な人間っていますから、生々しさを感じました。
しかし、それと同時にアイリ達のメイリンへの対応に疑問を感じる事もしばしば……ある種、アイリの扱いはメイリンがされてきたモノに近いモノにも思え、いくらアイリの境遇が悲惨だったとはいえ、寄って集って1人の女性に嫌みなどを言うのは成人の淑女や紳士としてどうなのかなぁ…と。
中学生の集まりの様に見えました。
それと、気になるのですが
「そうなんですのね」等、作中に出てくる言葉遣いが気になりました。ただ私自身の勉強不足なだけなのかもしれませんが、とても違和感を感じてしまいました(汗)
初めて感想を書いた身として、このような失礼な事を言ってしまい申し訳ございません。
あと「なっ」や「まぁ」も乱用それてて、目が滑る時がありました(汗)
茄子センセのお気持ちをご不快にさせてしまう内容を送ってしまい申し訳ございません。
これからもセンセの小説を楽しみにして拝読して行きます!
お目汚し失礼致しました
読んでいただきありがとうございます。
そうなんですよね、メイリンへの態度もこの作品では考えるものになっております。
アイリが可愛い側としては、メイリン及び両親は絶対に許せない敵なのですが、メイリンからしてみたらアイリ達こそが間違っている、という、中々に難しいものになっています。
言葉遣いに関しては、私の修行不足ですね、すみません(><)
乱用もまだまだ修行しないといけない部分だと思ってます。
ご指摘いただけることは嬉しいので、これからもよろしくお願いします!
周りが頭悪いせいでメイリンまで悪影響でお花畑になったとしか思えない
主人公に愛を向けられなくて心がぶっ壊れとか言うわりに幼少期自分から没交渉しているし
歩み寄りたい善意無視して悪意を妹にぶつけるのはちょっと筋違いじゃないんかな
親を恨むのはまだわかるけどメイリンの扱いが逆にこっちの心に刺さる
「そんな・・・」ってセリフ見る度に自分も悲しくなってしまった
メイリンについては、親から優しい虐待を受けていますので、お言葉はもっともです
でもアイリも自分の心を守るために精一杯だったんです、ごめんなさい