真実の愛に生きたいのが自分だけと思うなよ

フラグス編

12

　適度に敵対派閥の方々とお話をしてから別れて皇太子様を探しますとまだパラディ様の傍にいらっしゃいました。
　まったくなにをしているのでしょうか？
　側近予定の方々も何か言ってくださればいいのに、それとも言っても聞かないか、一緒になって夢中になっているのでしょうか？
　この国の将来が不安で仕方がありませんわね。
　成長するにつれ色々変わることはございますけれども、高位の立場になればなるほど生まれた時から基本的に生きる道は決まっていると言っても過言ではございません。
　もちろん予備や選考、才能などもございますので必ずというわけではありませんけれども、少なくとも十歳のころにはある程度に道筋が出来上がっているのでございます。
　かくいう私も五歳のころから皇妃教育が始まっておりますもの、もう九年も皇妃教育をしているということになりますわね。
　皇妃教育と言いましても多岐にわたりまして、行儀作法や学問だけではなく、帝王学ももちろん学ぶことになっております。
　皇帝陛下に何かあった時に動くのがまず皇妃陛下なのですから収めていて当然のことでございますわね。
　他にも、他国の方がいらっしゃったときに披露するために歌唱や楽器の手ほどきを受けたり、身を守るための武術を学んだりも致します。
　はっきり言えば、ある意味男性よりもやることが多いのかもしれませんわね。
　もちろん、殿方、皇太子様の教育が甘いと言っているわけではございませんが、多岐にわたるという点では女性に負けているのではないでしょうか？
　そのように多岐にわたる教育を受けている私が皇太子妃にならずに何になるのだというわけなのですけれども、皇太子様はわかっているのでしょうか？
　すでに他国からの大使の方々にも次期皇太子妃だと紹介されているようなものなのですが、今更変わりましたと言うようなことになれば、付け入られる隙を作ってしまう事になってしまいますわ。
　それに何よりも、真実の愛に生きたいというような方が、まともに政務に取り組んでくださるのかが私は不安で仕方がありません。
　愛しい方がああしたいとおっしゃれば自分の意思を曲げてしまうかもしれないではありませんか。
　私はそのようなことがないように、距離を取っておりますのに、皇太子様だけがあのように真実の愛を声高に叫ぶのは納得がいきませんわね。
　真実の愛に生きたいというのであれば、ひっそりと隠して生きればよろしいのに、なぜ私に堂々と仰って婚約破棄をしたいなどとおっしゃるのでしょうね、全く持って理解が出来ませんわ。
　……はあ、考えていても仕方がありませんし、皇太子様をパラディ様から離すためにもあちらに行ったほうがよさそうですわね。
　それにしても、同じ場所で同じ方々とばかりおしゃべりをしているようですけれども、パラディ様はこれを機に人脈作りをしようとは思わないのでしょうか？それとも今の方々…高位の子息との人脈作りで終わらせる気なのでしょうか？