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第一章 いざ、異世界のダンジョンへ!
特殊ステータスの集い
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「俺の事、怖がったりしないんだね」
「と申しますと?」
「神様から聞いているよ、君は俺が持っている称号を知っているって」
「ああ、そうですわね。確かに知っていますがご自分の命が狙われたのでしたら仕方がありません。生憎、わたくしは自己防衛による殺人を責める気はありませんのよ。わたくしだって同じ立場なら躊躇なく相手を殺すでしょうしね」
「ふーん、見た目の割に物騒なのかな? まあいいか。この称号の意味を知って怖がらないでいてくれる人がいるっていうのは、俺にとってもありがたいよ。言いふらすような称号じゃないからね」
「確かに一部の方は騒ぎだすかもしれませんね」
「俺が殺した相手は、モンスターにやられたって事になったけど、死んだ奴の所持金とアイテムボックスの中のアイテムや装備品、ステータス値がまるまる俺に入って来て、正直戸惑った」
「え! ステータス値がそのまま入ってきたのですか?」
「ああ、一気にステータスが膨れ上がって、称号の件もあるけど他人には見せられないものになってる。もし勇者を殺すと相手の勇者の一切合切を手に入れることが出来るなんて事が知れ渡ったら地獄絵図の始まりだ」
「そうですわね」
確かに、その情報は危険ですわね。
「その事をご存じなのは?」
「今の所君だけ。君は他言しないと思ったからね」
「信用していただきありがとうございます。わたくしの名に誓って他言いたしませんわ」
「ありがとう。それに、実は俺も君の事を少しだけ神様から聞いているんだ」
「あら」
「最初に一人で対処しなくちゃいけなくなったから、特典としてステータスを多めに設定されてるんだってね」
「そうですわね」
流石に経験値四倍の事は言いませんでしたか。
「お互いに、突飛なステータスを持つと苦労するね」
「本当ですわね。わたくし、皆様が初期ステータスを晒すスレッドを見て驚きましたもの」
「だろうねえ。俺も初期ステータスは高い方だけど、それよりも高いんだろう?」
「ええ」
流石に他の方の四倍のステータスでしたとは言えませんわ。
「それにしても、眷属とはいえ女性と男性が同じ拠点に住むというのは大丈夫なのかい?」
「僕はそのような目でご主人様を見たことはありません。ご主人様には純粋に忠誠を誓っています」
「もちろん、そうだと信じておりましてよ。よく眷属だとお判りになりましたわね」
「黒スライムを眷属にしているっていう話は聞いていたし、そこの九尾の狐の女性も特殊変異体だよね。普通は男性体で現れるから。その流れから、君の周りにいるのに全く話題に上がってこないナティル君も勇者じゃないって推測、それで全員眷属なのかなって思ったんだよ」
「ご明察ですわ。ナティルはわたくしが元の世界で教皇様に頂いた禁書の化身なのです」
「そうなんだ。ティタニアちゃんは元の世界では聖女をしていたんだよね」
「はい。その関係で神様にこの世界に気分転換に来ないかと誘われましたの」
「気分転換にしては物騒な世界に召喚されたものだよな」
「まあ、物騒ではありますけれども、悪くはありませんわよ。元の世界の親しい方々とお別れするのは辛かったですが、こちらに来てわたくしの知らない色々なことを学べますし」
「ティタニアちゃんはあのシャーレちゃんのお姉さんなんだよね? 生活とかは大丈夫なのかい?」
「はい。婚約破棄をされてからこちらの世界に来るまでに時間がありましたので、身の回りの事や料理に関しては学ぶ時間が十分にありました」
「そっか、ならよかったんだ。シャーレちゃんは公爵令嬢が召使いのようなこと出来るわけがないって騒いでいたからね。エドワルド君も王子である俺がどうしてこんな目に、なんて言っていたから」
「あの二人ならそう言いますわね」
「それにしても、シャーレちゃんがテンマの所に移住するとは前から予想していたけど、あんな風にエドワルド君と喧嘩別れしてよかったのかな?」
「さあ? 子供まで居りますのに、やはり真実の愛で結ばれた方は長続きしないという話は本当ということですわね」
「という事は、君の世界では真実の愛を語る人が多いんだ?」
「ここ数年の流行りなのです。子息が他の女性に手を出して『真実の愛を見つけた、婚約破棄をする!』とか、その際にありもしない罪をでっちあげたりと、最近では定番化してしまっておりますので、浮気相手の女性がいじめを受けたと言われても、じっくり精査するまで誰も信じなくなりましたわね。特に令嬢達は」
「うーん、まるで小説の中のような世界なんだね、ティタニアちゃんの居た世界は」
「わたくしからしましたら、科学という文明が発展している世界からいらした方の方が物語の中から飛び出してきたようですわ。神様に異世界のことを聞いたり実際に夢で見せていただいたりしましたが、未だに空を飛ぶ鉄の塊だとか、馬車より早い箱だとか、この世界にも実装されておりますけれども電子機器だとか、マジックアイテムよりもすごいと思えてしまいますもの」
「マジックアイテムの方が俺はすごいと思うけど、これは文明の違いってやつかな」
「そうですわね」
その後、わたくしとシンヤ様は楽しく会話をいたしまして、その間に沸いたエレメントはネーロ達が狩ってくれました。
指の一振りでエレメントを倒してしまうナティルに驚いた様子はありましたが、禁書の化身のせいか、ナティルはステータスがおかしいんですと説明をしておきました。
「さて、そろそろ夕食の時間かな?」
「そうですわね、拠点に戻って夕食を作らないといけませんね」
「和食、次は失敗しないといいね。電子機器の使い方も」
「もっと異世界人にわかりやすい説明書が欲しかったですわ」
「うーん、俺の世界だと学校っていう教育機関で基礎的なものは学ぶからなぁ」
「そうなのですね。まあ、次の休養日も和食の研究をする予定ですので頑張りますわ」
「きんぴらごぼう」
「はい?」
「簡単だし美味しいよ」
「お好きなのですか?」
「かなり。お酒のつまみにもいいしね」
「お酒を嗜むのですね」
「たまにね」
「では今度はきんぴらごぼうなるものにチャレンジしてみます」
「無理はしないでね、焦がしそうだ」
「大丈夫ですわよ、多分」
わたくしがそう言いますとシンヤ様は笑って「本当に?」とおっしゃいました。
その後、わたくし達は別れてそれぞれ拠点に戻りまして、わたくしは早速手を洗ってから夕食作りを始めましたが、卵スープを煮込んでいる間にアイテムボックスから和食のレシピ本を取り出してきんぴらごぼうの作り方を確認しまして、これなら何とか作れそうだと思いました。
それにしてもお酒ですか。
わたくしの世界では十五歳以上で飲酒が可能になっておりますので飲めるのですが、神殿の方達に止められているのですよね。
どうも、初めてお酒を頂いた時に随分な醜態をさらしてしまったようで、全く覚えていないのですけれども、必死に止めてくる所を見ると余程の事をしてしまったのでしょうね。
第一章 完
「と申しますと?」
「神様から聞いているよ、君は俺が持っている称号を知っているって」
「ああ、そうですわね。確かに知っていますがご自分の命が狙われたのでしたら仕方がありません。生憎、わたくしは自己防衛による殺人を責める気はありませんのよ。わたくしだって同じ立場なら躊躇なく相手を殺すでしょうしね」
「ふーん、見た目の割に物騒なのかな? まあいいか。この称号の意味を知って怖がらないでいてくれる人がいるっていうのは、俺にとってもありがたいよ。言いふらすような称号じゃないからね」
「確かに一部の方は騒ぎだすかもしれませんね」
「俺が殺した相手は、モンスターにやられたって事になったけど、死んだ奴の所持金とアイテムボックスの中のアイテムや装備品、ステータス値がまるまる俺に入って来て、正直戸惑った」
「え! ステータス値がそのまま入ってきたのですか?」
「ああ、一気にステータスが膨れ上がって、称号の件もあるけど他人には見せられないものになってる。もし勇者を殺すと相手の勇者の一切合切を手に入れることが出来るなんて事が知れ渡ったら地獄絵図の始まりだ」
「そうですわね」
確かに、その情報は危険ですわね。
「その事をご存じなのは?」
「今の所君だけ。君は他言しないと思ったからね」
「信用していただきありがとうございます。わたくしの名に誓って他言いたしませんわ」
「ありがとう。それに、実は俺も君の事を少しだけ神様から聞いているんだ」
「あら」
「最初に一人で対処しなくちゃいけなくなったから、特典としてステータスを多めに設定されてるんだってね」
「そうですわね」
流石に経験値四倍の事は言いませんでしたか。
「お互いに、突飛なステータスを持つと苦労するね」
「本当ですわね。わたくし、皆様が初期ステータスを晒すスレッドを見て驚きましたもの」
「だろうねえ。俺も初期ステータスは高い方だけど、それよりも高いんだろう?」
「ええ」
流石に他の方の四倍のステータスでしたとは言えませんわ。
「それにしても、眷属とはいえ女性と男性が同じ拠点に住むというのは大丈夫なのかい?」
「僕はそのような目でご主人様を見たことはありません。ご主人様には純粋に忠誠を誓っています」
「もちろん、そうだと信じておりましてよ。よく眷属だとお判りになりましたわね」
「黒スライムを眷属にしているっていう話は聞いていたし、そこの九尾の狐の女性も特殊変異体だよね。普通は男性体で現れるから。その流れから、君の周りにいるのに全く話題に上がってこないナティル君も勇者じゃないって推測、それで全員眷属なのかなって思ったんだよ」
「ご明察ですわ。ナティルはわたくしが元の世界で教皇様に頂いた禁書の化身なのです」
「そうなんだ。ティタニアちゃんは元の世界では聖女をしていたんだよね」
「はい。その関係で神様にこの世界に気分転換に来ないかと誘われましたの」
「気分転換にしては物騒な世界に召喚されたものだよな」
「まあ、物騒ではありますけれども、悪くはありませんわよ。元の世界の親しい方々とお別れするのは辛かったですが、こちらに来てわたくしの知らない色々なことを学べますし」
「ティタニアちゃんはあのシャーレちゃんのお姉さんなんだよね? 生活とかは大丈夫なのかい?」
「はい。婚約破棄をされてからこちらの世界に来るまでに時間がありましたので、身の回りの事や料理に関しては学ぶ時間が十分にありました」
「そっか、ならよかったんだ。シャーレちゃんは公爵令嬢が召使いのようなこと出来るわけがないって騒いでいたからね。エドワルド君も王子である俺がどうしてこんな目に、なんて言っていたから」
「あの二人ならそう言いますわね」
「それにしても、シャーレちゃんがテンマの所に移住するとは前から予想していたけど、あんな風にエドワルド君と喧嘩別れしてよかったのかな?」
「さあ? 子供まで居りますのに、やはり真実の愛で結ばれた方は長続きしないという話は本当ということですわね」
「という事は、君の世界では真実の愛を語る人が多いんだ?」
「ここ数年の流行りなのです。子息が他の女性に手を出して『真実の愛を見つけた、婚約破棄をする!』とか、その際にありもしない罪をでっちあげたりと、最近では定番化してしまっておりますので、浮気相手の女性がいじめを受けたと言われても、じっくり精査するまで誰も信じなくなりましたわね。特に令嬢達は」
「うーん、まるで小説の中のような世界なんだね、ティタニアちゃんの居た世界は」
「わたくしからしましたら、科学という文明が発展している世界からいらした方の方が物語の中から飛び出してきたようですわ。神様に異世界のことを聞いたり実際に夢で見せていただいたりしましたが、未だに空を飛ぶ鉄の塊だとか、馬車より早い箱だとか、この世界にも実装されておりますけれども電子機器だとか、マジックアイテムよりもすごいと思えてしまいますもの」
「マジックアイテムの方が俺はすごいと思うけど、これは文明の違いってやつかな」
「そうですわね」
その後、わたくしとシンヤ様は楽しく会話をいたしまして、その間に沸いたエレメントはネーロ達が狩ってくれました。
指の一振りでエレメントを倒してしまうナティルに驚いた様子はありましたが、禁書の化身のせいか、ナティルはステータスがおかしいんですと説明をしておきました。
「さて、そろそろ夕食の時間かな?」
「そうですわね、拠点に戻って夕食を作らないといけませんね」
「和食、次は失敗しないといいね。電子機器の使い方も」
「もっと異世界人にわかりやすい説明書が欲しかったですわ」
「うーん、俺の世界だと学校っていう教育機関で基礎的なものは学ぶからなぁ」
「そうなのですね。まあ、次の休養日も和食の研究をする予定ですので頑張りますわ」
「きんぴらごぼう」
「はい?」
「簡単だし美味しいよ」
「お好きなのですか?」
「かなり。お酒のつまみにもいいしね」
「お酒を嗜むのですね」
「たまにね」
「では今度はきんぴらごぼうなるものにチャレンジしてみます」
「無理はしないでね、焦がしそうだ」
「大丈夫ですわよ、多分」
わたくしがそう言いますとシンヤ様は笑って「本当に?」とおっしゃいました。
その後、わたくし達は別れてそれぞれ拠点に戻りまして、わたくしは早速手を洗ってから夕食作りを始めましたが、卵スープを煮込んでいる間にアイテムボックスから和食のレシピ本を取り出してきんぴらごぼうの作り方を確認しまして、これなら何とか作れそうだと思いました。
それにしてもお酒ですか。
わたくしの世界では十五歳以上で飲酒が可能になっておりますので飲めるのですが、神殿の方達に止められているのですよね。
どうも、初めてお酒を頂いた時に随分な醜態をさらしてしまったようで、全く覚えていないのですけれども、必死に止めてくる所を見ると余程の事をしてしまったのでしょうね。
第一章 完
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