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アルマ

穏やかな日

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やはりヴィーは容姿が綺麗なのでハンターのような格好をしていても目立つ。
護衛をつけていて良かった。
人が寄ってきても、護衛が立ち塞がればそれ以上ヴィーに近づこうとする者はいなかった。


「アルマ様、あれが食べたいです。」
「ん?マシュマロか?いいぞ。」

珍しいな。ヴィーが何かを欲しがるのはタイピンの時以来だ。
こんな屋台の串に刺さったマシュマロなんかでいいのか?
ヴィーは甘いものが好きなのか。もっと高級な店でお菓子を買ってやれば喜ぶかな?
どうしたら彼を喜ばすことができるのかを考えている自分に驚いた。

「ほら。」

屋台で買ったカラフルなマシュマロの串をヴィーに渡してやると、ヴィーは今までに見た中で一番の笑顔を見せた。
そんなにマシュマロが好きだったのか。ちょっと意外だな。


マシュマロか。あれは何年前だっただろうか。戦争に出る少し前だったか?
確かあれは王都だったな。男に絡まれているまだ成人前の幼い女の子を助けたことがあった。
その時に震えるその子に屋台で買ったカラフルなマシュマロを渡して、その子はマシュマロを食べるのが初めてだったようで恐る恐る一口食べると、笑顔を見せてくれた。

まぁ、絡んだ男も怖かっただろうが、俺も怖かったんだろうな。
ヴィーのような綺麗な青い髪の可愛らしい子だったな。あの子は元気にしているだろうか。
よく考えてみれば、大人になってから俺に笑いかけてくれる女の子なんて、あの子しかいなかったな。


そんな懐かしい思い出を回想しながら、マシュマロを食べるヴィーを眺めた。
なぜか笑顔のヴィーが、思い出の中の女の子と重なって見えた。



一緒に寝たいというヴィーの希望により、王都の屋敷でも一緒のベッドで寝ることになった。
やはり、夜には手を繋いで寝ても、朝になるとヴィーを抱きしめて寝ているのだが、もうそれは何というか無意識なので仕方ないことなのだと割り切ることにした。


「大将とヴィヴァーチェ様は仲睦まじくて何よりですな。」

護衛として連れてきた隊長にそんな風に冷やかされても、そう悪い気はしなかった。

「あぁ、まあな。」
「惚気ですか?どこへ行くのも一緒ですもんね。
令嬢ではそうはいきませんし、ヴィヴァーチェ様を嫁にもらってよかったですね。」
「あぁ、そうだな。」

確かにそうか。令嬢であれば馬で遠駆けなどできないし、狩りや剣の打ち合いなどもってのほか。ヴィーと一緒だから楽しいのか。


手入れされた庭園のガゼボでヴィーと並んでのんびりとティータイムを過ごす。
これは俺が結婚したらやってみたかったことの一つなのだが、相手は男のヴィーなのに、とても温かい気持ちになった。
だから思い切って、手を繋いで庭園を2人で散歩してみた。
憧れがまた一つ叶った。

こういう日常の小さな幸せがいいんだ。
このような幸せな時間を過ごせることに俺は感謝した。
ヴィーのおかげだな。俺の荒んだ心が、少しずつ解れて、穏やかになっている気がした。


「ヴィー、領地に戻ったら一緒にピクニックに行かないか?」
「はい。行きたいです。」
「それから、街にも出かけよう。」
「はい。楽しみです。」

なんの迷いもなく行きたいと言ってくれるのは、それはヴィーだからなのかもしれないと思った。
なぜヴィーはそんなに俺によくしてくれるんだろうか?

その答えを、俺は知っているようで知らなかった。

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