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74話 出会いの旅路 2
しおりを挟む護衛依頼を受けることにして、まずはマーカス商会へ行った。
エリザベットさんと"アイテムストレージ"に持ち込む荷物について打ち合わせし、食事は冒険者の分も全てマーカス商会で提供してくれるということで、何店かに分けて大量に予約作成してもらい、後でオレの"時間停止倉庫"に入れる予定だ。
本命の護衛パーティーはハスキ…犬獣人のガルフが率いるパーティーに決まったので、ある程度面識のある人間ばかりの旅になりそうだ。
そしてその後は、ただただ勉強漬けの日々だ…
朝は6~7時から、夜の9~10時まで。
座学で疲れたら実技でリフレッシュ!みたいな地獄のような3日間だった。
まぁ、そのおかげでEランク中に合格しなきゃいけない講習は完了した。
この世界の護衛依頼は美味しい仕事だ。
魔物は余程の事が無い限り、自分たちのナワバリであるエリアから外へ現れる事はない。
その傾向は、魔物のランクが高くなればなるほど顕著で、街道にフラッと現れるような魔物は大抵ザコだ。
盗賊も「逃げ足が早くてアジトがどこか分からない」なんて事はなく、出没報告が挙がれば、すぐに高レベル探索者と国の兵士が合同で出向いて、アジトを探しだし即殲滅される。
だから、護衛の仕事というのはだいたいの場合、依頼者と一緒に旅するだけになる事がほとんどだ。
まぁつまり、護衛の勉強というのは、前世で言うところの、"資格取得の勉強"だ。
自分の得になるんだから我慢するしかない。
ちなみに、連日ギルドに通っていたら、Aランク斥候のデリックさんが依頼から帰って来ていた。
オレのアドバイス通り、上手く"夜の森"を迂回してオレの家に辿り着いたらしい。
あまり長話すると、
「今度生まれてくる子供の為に…」
とかまたフラグ発言しそうなので、早々に切り上げた。
それと、3日間の勉強漬けの間、朝晩とギルドの行き帰りで通りかかる【教会】を見ては、「う~ん…」と唸っては通りすぎていた。
本当は転生して町に着いたら、すぐにでも教会には行こうと思ってた。
冒険といえば戦闘、そして負傷だ。
そんな時の為に、回復魔法を覚えるには、言い方は悪いが教会が手っ取り早い。
この世界の回復魔法は【光属性】に分類され、【信仰心】によって習得出来るか判断される。
オレの場合神と暮らしていたので、教会に行ってお祈りすればすぐ覚えるよ! とティナが言っていたが…
いざ転生したら、想定外な事がちょくちょく起きて、挙げ句の果ては「ごめんね♥」だ。
あの"ごめんね"が"どれ"を指しているのか分からない以上、不用意に教会で祈って、
ピカーッ
「おお!この輝き、あなたは使徒様ですね!」
とかなったらシャレにならない。
この世界は実際に神が見守り、神託があり、下級とはいえ神が地上に現れる事すらあるところだ。
そんな世界なので、よくある「教会の内部は腐敗していて…」みたいなのはほとんど無い。
教会の役職は世襲が許されていないし、不正などを行えば【神職】と呼ばれる一部の職業は消える事がある。
そうなれば当然教会を追い出されるので、腐敗があるのは、管理の行き届かない地方の小さな町などごく一部らしい。
"使徒"なんてある意味"勇者"よりタチが悪い。
勇者の場合は、
「役目なんだから皆のために魔王を倒して」
みたいな、いわゆる悪意の"擦り付け"もあるが、
使徒なんて、
「皆の為に何かするために神から遣わされて来た」
と、何かしてくれるのが当然でしょとか、平気で思われそうだ。
…やっぱり教会はやめとこう。
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