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230話 ラスカリア 36
しおりを挟む「"聖なる霧"」
円盤の魔道具に設定したキーワードを唱え魔力を流すと、側面に並ぶ無数の穴から霧が発生する。
「…グギィッ! コ、コレハ?」
漂ってきた霧に接触したコボルド王が苦しげに呻く。
と同時に周囲に立ち上がり戦闘に参加しようとしていたスケルトン達もうめき声をあげ、既に戦闘していたスケルトン達は動きがぎこちなくなり、途端に討ち取られていく。
「レシアナ、左前方の大斧」
「あれね!」
ポラリスの指示を聞いたレシアナが、持ち手の付いた筒を大斧を持った周囲より一回り大きなスケルトンに向けると筒の先から細く、しかし鋭い勢いで水が放たれスケルトンの肩を砕き、斧を持った腕がゴトリと落ちる。
スケルトンは周りの骨から腕を再生しようとするが、煙をあげる接合部は骨を集めても崩れて上手く再生しない。
「"聖水"だよ」
「グギッ! セイスイ ダト?」
「この祝福された霧の中で上手く戦えるかな?」
「ピッ!」
「キュキュ!」
オレが目を向けると瑠璃とラテルが円盤ごと包み込むように二重に障壁を展開する。
「セイスイ トハ ニンゲン ノ アイダデモ キチョウ ナ モノ ダッタハズ。
イツマデモ イジ ハ デキマイ!」
「…だといいねぇ」
水を生み出し聖水に変換する魔道具だ。
さすがに多少はオレの魔力を使うが微々たるもの。
残念ながらコボルド王の推測通りにはいかない。
オレは障壁の中から空間察知を使って、回り込もうとする者、数の多い箇所へ向けて次元弾を撃ち込んでいく。
「グッ! コレハ ヤツノ コウゲキカ。
アノ ウイテイルヤツ ヲ ウチオトセ!」
指示されたスケルトン達が骨の矢や槍を撃ち込んでくるが、二重の障壁は貫けない。
「さて、じゃあ殲滅していこうか」
ーーーーーーーーーー
…ガシャ!
「はあ、はあ」
スケルトンを打ち抜いたリーチェさんが軽く肩で息をしている。
「ふう、だいぶ勢いが落ちましたね」
「リーチェ。 一旦前衛を交代しよう」
「ポラリス…分かったわ」
10分も経過すると、襲ってくるスケルトンの数は最初の半分程になり、身体の部位の一部を再生しきれていない者も増え、皆 多少疲労は感じているようだが対処可能な戦闘になっている。
合間にコボルド王にも魔法を撃ち込んでいるが、防御が固くクリーンヒットしないがヘイトは稼げている。
「これは…そろそろ終わるかな?」
つい出た呟きに、自分でも"フラグ臭いセリフだな…"と思ったが遅かったようだ。
「ゴ、ゴガアアアァァァ!!」
コボルド王の魔力が乗った叫びが響き渡る。
と、玉座の前付近に5~6体のアンデッドコボルドが天井から落ちて来てノロノロと立ち上がる。
見上げると天井にはいつの間にか穴が開いているが、後続は落ちて来ないようだ。
「…こんな仕掛けが…」
「「ギギャアアァァ!!」」
と、天井に気を取られていると、コボルド王が落ちて来たアンデッドコボルド達を自らの骨の触手で貫き始めた。
「は?」
せっかく呼んだ応援に一体何をしてるんだ?
と思ったのも束の間、貫かれたコボルド達は触手に引っ張られ、縫い合わされるようにグジュグジュと嫌な音をたてながら一体の"肉のゴーレム"に姿を変えていく。
「…なんかマズそうだ」
周囲への攻撃を一旦止め、ゴーレムに次元弾を撃ち込むが、身体を縫い合わせた後に表面に絡みついた触手が鎧のようになりあまり効いていない。
出来上がってしまったゴーレムは3m前後、太い手足と上半身から盛り上がっているだけの頭部には虚ろな穴が開いただけの目と口がある。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【フレッシュ・ゴーレム】
レベル:48(固定)
種族:魔法生物
スキル:再生
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「レベル48、再生スキル持ち!」
「「「了解!」」」
鑑定結果を皆に伝える。
("邪王の号令"で呼んだ配下を強制的にゴーレムに変える、…これが奥の手か)
かなりの魔力が注ぎ込まれているし、もう一体は出せないだろう。
「皆、コイツはもう一体は出せないようだ。
倒せばこの戦闘の勝ちも見えるよ」
「やる」
ポラリスは後衛でスタミナを温存していた。
やる気も十分なようだ。
「ポラリス、"パターン3"でいくよ」
「了解」
さて…オレの脳が沸騰するのとあのゴーレムが倒れるのと、どっちが先かな?
応援ありがとうございます!
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