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Cafe Mistletoe
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しおりを挟む「私どもの方でお客様の要望に添ったスタッフをお願いしていますので、タクヤ様はタクヤ様なりの得意分野でお客様に対応して頂いているので大丈夫ですよ」
「あっ、今悲しいフォローされた」
がくりと肩を落とすタクヤを見つつ、イチロウが不安げにセイヤに問いかける。
「あの、僕は何かスタッフをする上で勉強の必要があるでしょうか。
こういうことをしてますし、カウンセラーの勉強も必要かと思い始めて」
「いえ、不要です。
ここはあくまでお客様とカフェのスタッフが立ち話をするような場所です。
間違っても何か正しいアドバイスをしなくてはとか、専門知識が必要な訳ではありません。
必要なのはスタッフ皆様がお客様の話を聞き全てを受け入れた上で、率直な言葉や真摯な対応のみです」
セイヤは穏やかにイチロウに語りかけた。
「えぇ、私達はいつもこれで良かったのだろうかと自問自答しています。
私達の言葉がお客様を傷つける事だってあります。
だからこそこういう場で、私達はあれこれ話すのですし」
ヒロの言葉にイチロウはまだ難しそうな顔をしている。
言われたことはテキストも無いこと。
むしろ難しい事だった。
「あんまり力みすぎるとスタッフなんて続けられないって。
俺たちはほぼボランティアなんだし」
「申し訳ありません・・・・・・」
「すんません!
いや、お客さんの出してるあの費用そのままもらってるだけでもありがたいです、はい」
セイヤの謝罪に、慌ててタクヤはフォローする。
「セイヤさん、今度また新しい人を探しているんですか?
それとも既に研修中?」
リュウが尋ねると、セイヤが頷く。
「今研修中の方もいますが年齢がお若いので、もう少し上の方をと」
「本当に全員スタッフってセイヤさんの一本釣りなんですか?」
セイヤの言葉に、イチロウが聞くと、えぇ、と笑みを浮かべセイヤは頷いた。
「ボランティア同然のお仕事ですが、やはり信頼出来る方でないとお任せする事は出来ませんから」
なるほど、とイチロウが頷いていると、セイヤがタクヤに視線を向ける。
コーヒーを飲んでいたタクヤはその視線に気がつき、苦笑いを浮かべた。
「はいはい、次は俺ですね。
うーん、結構恋愛相談系が俺の所は多いんだよね、イケメンに好かれるにはどうしたら良いのか、とかもあるし。
でも今回は美人と思われる客で、美人で男に困らなかったからこそ年齢がきて結婚に焦ってるというお客さんがきて、それは同類じゃないとわからない悩みだよねー」
「僕には絶対振られないお客さんだ」
オサムの呟きに、リュウがくくく、と笑いを堪えている。
「なんつーか、外見目的で寄ってこられると、こっちの何に惹かれたのかわかんないし、結局長続きしないし。
むしろ見た目がイマイチなら、こっちの中身で好意を抱いたんだってわかるだろ?
そういうのが羨ましくなるなんて気持ちは、わかってもらえないだろうからさ」
はぁ、とため息をつきながら話すタクヤに、オサムが顔を背け何かぶつぶつと言っているのを、ヒロが困ったような顔で声をかけている。
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