宿り木カフェ

桜居かのん

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Cafe Mistletoe

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「んで、最後はイチロウくんだよね?
どうだった?今回からだったんだろ?」

タクヤにふられ、びくりとイチロウは一気に集まった視線に身を強ばらせる。

「今回から、それもまだ大学生というのに、どのお客様のアンケートでも非常に高評価だったんですよ」

にっこりとそう言うセイヤに、イチロウは少しだけホッとしたような顔をした。

「お若いのにとても大きなものを経験されているので、心を動かされたお客様も多かったのでしょう」

「いえいえ、本当に一杯一杯で」

照れくさそうに頬を掻くイチロウを、みな優しい表情で見ている。
それに気がつくと、イチロウは少し顔を引き締め話し出した。

「既にご存じだとは思いますが、僕は震災で家族を亡くしています。
ですので、災害に遭われたお客様ともお話ししましたが、やはり初めて担当した反抗期のお子さんを持つ主婦の方とのお話がどうしても印象深いですね」

「わかる。俺も未だに初めてのお客さんは覚えてるよ」

イチロウの横に座るタクヤはどちらかといえば兄貴肌な感じで、自分を話しやすく促しているのだとイチロウは感じ取り、嬉しくなった。

「あんなに年齢の離れた方に、たかが学生の僕が何を言えるのだろうと毎回思いました。
どちらかと言えば、いつも自分の事を話していたと思いますし。
あんなので何かなったのかとか、その後お子さんとの関係はどうなっているのだろうととても気になります」

「あの後、イチロウ様に言われたように勉強をされて、お子さん達も少しずつ変わってきたと後日のメールにありましたし、きっと良い方向に向かわれていると思いますよ?」

勉強?とセイヤに聞き返したタクヤに、イチロウが答える。

「えっと、反抗期のお子さんを持って非常に疲れていらしたようなので、元々看護師と伺い、復職されてはどうかと勧めまして」

あぁなるほど、と相づちをうったタクヤに、ヒロ達も頷いている。

「それは良かった。
だけどその後悪い方に行ってないだろうかとか、やはり気になるよね、こっちに情報が来ないだけで」

そういうオサムに、セイヤも頷く。

「そうですね、カフェ終了後、不満もメールで来ることはありますが、良かったと連絡が来るのもあまり多くはありませんね。
でも、そういうことをしなくてもいい、という状況なのだととらえるようにして頂ければ」

そしてセイヤは皆の顔をゆっくりと見回す。

「この『宿り木カフェ』のサイトは、本当に必要な方にしか本来見つけられないようになっています。
ですので、トラブルも非常に少ないですが、その後音沙汰がないということは、皆様このカフェに寄る必要が無くなったと言う事だと思っています。
スタッフの皆様には、またこのカフェを必要とする、新たなお客様の話し相手で今後もお願い出来ればと」

そういうと、セイヤは全員に向かい笑顔を浮かべた。

「それにしても不思議だよね、このサイト。
必要じゃない女性にはたどりつけないっていうの」

少ししてぼそりとタクヤが呟いた。

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