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元の世界に私が戻り、マリアンヌをここに戻す?悪魔の提案に私は固まってしまった。何故こうなった?
「全てをなかったことにする。始まりに戻すのだ」
え?始まりに戻す?
「いい加減にしなさ~い!」
どこからか声が聞こえた。気がつくと女神様が立っている。
「あんた、何言ってんのよ。いい?悪魔の言うことに耳を貸しちゃダメ」
女神様が私に向かって言った。確かにその通りだ。忘れていた、相手は悪魔。
「現れたな、そもそもお前が加護を与えるからこんなことになるのだろう」
「何言ってるのよ、先に人間と契約したでしょ」
「人間が望んだからだ」
「そもそもあの契約は不完全だったのに無理矢理結んだんじゃないの」
「それが悪魔というものだ」
悪魔と女神様の言い合いを私は黙って聞くしかなかった。口を挟む状況ではないし。なんかめんどくさいし。
「あんたはとにかく自分の有利になるようにしただけでしょ。恐怖が大好物だからって人間に関与しすぎなのよ」
「それのどこが悪いのだ」
「あの・・・」
ヒートアップした2人を前に私はおずおずと声をかける。いいかげんどうにかして欲しかった。
「いい加減、決着つけてくれませんか?」
「わかったわ」
女神様がうなづく。
「ここは人間世界じゃないの。あなたは今一時的に私たちの世界に来てもらっている状態。これ以上長くいると人間世界に戻せなくなる。だから私が人間世界に戻すわ」
「おまえ・・・、何勝手なこと」
「うるさいわね、中身はもう身体に馴染んだし、元に戻すことはできないくらいわかってるでしょ。・・・いくわね」
その瞬間女神様が光った。私に向かって何か言っているようだけど、声は聞こえない。あまりの眩しさに私は目を瞑った。目を瞑っていても光が見える気がする。
「あっ、どこへ行く気?ダメ・・・」
女神様の声がはっきり聞こえた。しかしよくわからない。
「・・・様・・・お嬢・・・様」
何か声が聞こえた。あぁ、マーサの声だ。私は目を開けた。
「お嬢様、マリアンヌお嬢様」
気がついたら私はソファに座っていた。
「お疲れですね、少しお休みになりますか?」
マーサが優しい目で私を見てくれている。
「お昼寝しないと、マリ」
フランツ兄様もいる。私を見ていつものようにマリと呼んでくれる。そうだ、私はマリアンヌなんだ。
「兄様」
私は何故だか無性に甘えたくなってしまい、フランツ兄様のところに向かうと、フランツ兄様に抱きついた。
「どうしたの?」
フランツ兄様が不思議そうな声を出す。でもそれはとても優しい声だ。
「なんでもないです」
私はそう言ってもう一度兄様をぎゅっと抱きしめた。兄様は私の頭を撫でてくれる。
「リリン、ここにいたのか」
レオポール兄様が入ってきた。刀を押し当てられた時のことを思い出して、一瞬ビクっとしてしまった。が、あれは真実ではないと思い返した。そうだ、あれは悪魔が見せた幻。レオポール兄様がマリアンヌに刃を向けるはずがない。
「兄上、マリが怯えているではないですか。そんなもの見せて」
そんなものとは、とよく見てみたらレオポール兄様の手に黒い何かがあった。
「ブラッドリータンゴの子供だよ。これは魔獣だけど魔力を無力化させてあるから大丈夫」
以前庭に出た魔獣だ。レオポール兄様が抱えているブラッドリータンゴの子供をよく見た。
「マリ、怖かったら見なくていいんだよ」
「大丈夫だ、馬より安全なくらいだから」
レオポール兄様の手の中にいるのは、どう見ても黒猫だった。小さくてふわふわした毛並みだ。
「かわいい」
私は手を差し出した。
「あっ、兄上、本当に大丈夫でしょうね。噛んだりしませんか」
「大丈夫だ、ちゃんと魔法で調整されている。リリンが以前興味を持っていたから、特別に貰ってきたんだ」
この子うちで飼えるの?黒猫は大人しく私の手の中に収まった。よく見たら、目が赤い。え?
「名前をつけてリリンが可愛がってあげればうちの子だよ」
「もしマリに何かしたらすぐ魔法省にやりますからね」
猫は私を見て、ニャーと鳴いた。でも同時に聞こえてきた。
「さっきは失礼したな。今日から俺はお前のかわいい子猫だ」
悪魔の声だった。
「全てをなかったことにする。始まりに戻すのだ」
え?始まりに戻す?
「いい加減にしなさ~い!」
どこからか声が聞こえた。気がつくと女神様が立っている。
「あんた、何言ってんのよ。いい?悪魔の言うことに耳を貸しちゃダメ」
女神様が私に向かって言った。確かにその通りだ。忘れていた、相手は悪魔。
「現れたな、そもそもお前が加護を与えるからこんなことになるのだろう」
「何言ってるのよ、先に人間と契約したでしょ」
「人間が望んだからだ」
「そもそもあの契約は不完全だったのに無理矢理結んだんじゃないの」
「それが悪魔というものだ」
悪魔と女神様の言い合いを私は黙って聞くしかなかった。口を挟む状況ではないし。なんかめんどくさいし。
「あんたはとにかく自分の有利になるようにしただけでしょ。恐怖が大好物だからって人間に関与しすぎなのよ」
「それのどこが悪いのだ」
「あの・・・」
ヒートアップした2人を前に私はおずおずと声をかける。いいかげんどうにかして欲しかった。
「いい加減、決着つけてくれませんか?」
「わかったわ」
女神様がうなづく。
「ここは人間世界じゃないの。あなたは今一時的に私たちの世界に来てもらっている状態。これ以上長くいると人間世界に戻せなくなる。だから私が人間世界に戻すわ」
「おまえ・・・、何勝手なこと」
「うるさいわね、中身はもう身体に馴染んだし、元に戻すことはできないくらいわかってるでしょ。・・・いくわね」
その瞬間女神様が光った。私に向かって何か言っているようだけど、声は聞こえない。あまりの眩しさに私は目を瞑った。目を瞑っていても光が見える気がする。
「あっ、どこへ行く気?ダメ・・・」
女神様の声がはっきり聞こえた。しかしよくわからない。
「・・・様・・・お嬢・・・様」
何か声が聞こえた。あぁ、マーサの声だ。私は目を開けた。
「お嬢様、マリアンヌお嬢様」
気がついたら私はソファに座っていた。
「お疲れですね、少しお休みになりますか?」
マーサが優しい目で私を見てくれている。
「お昼寝しないと、マリ」
フランツ兄様もいる。私を見ていつものようにマリと呼んでくれる。そうだ、私はマリアンヌなんだ。
「兄様」
私は何故だか無性に甘えたくなってしまい、フランツ兄様のところに向かうと、フランツ兄様に抱きついた。
「どうしたの?」
フランツ兄様が不思議そうな声を出す。でもそれはとても優しい声だ。
「なんでもないです」
私はそう言ってもう一度兄様をぎゅっと抱きしめた。兄様は私の頭を撫でてくれる。
「リリン、ここにいたのか」
レオポール兄様が入ってきた。刀を押し当てられた時のことを思い出して、一瞬ビクっとしてしまった。が、あれは真実ではないと思い返した。そうだ、あれは悪魔が見せた幻。レオポール兄様がマリアンヌに刃を向けるはずがない。
「兄上、マリが怯えているではないですか。そんなもの見せて」
そんなものとは、とよく見てみたらレオポール兄様の手に黒い何かがあった。
「ブラッドリータンゴの子供だよ。これは魔獣だけど魔力を無力化させてあるから大丈夫」
以前庭に出た魔獣だ。レオポール兄様が抱えているブラッドリータンゴの子供をよく見た。
「マリ、怖かったら見なくていいんだよ」
「大丈夫だ、馬より安全なくらいだから」
レオポール兄様の手の中にいるのは、どう見ても黒猫だった。小さくてふわふわした毛並みだ。
「かわいい」
私は手を差し出した。
「あっ、兄上、本当に大丈夫でしょうね。噛んだりしませんか」
「大丈夫だ、ちゃんと魔法で調整されている。リリンが以前興味を持っていたから、特別に貰ってきたんだ」
この子うちで飼えるの?黒猫は大人しく私の手の中に収まった。よく見たら、目が赤い。え?
「名前をつけてリリンが可愛がってあげればうちの子だよ」
「もしマリに何かしたらすぐ魔法省にやりますからね」
猫は私を見て、ニャーと鳴いた。でも同時に聞こえてきた。
「さっきは失礼したな。今日から俺はお前のかわいい子猫だ」
悪魔の声だった。
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