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しおりを挟むおよそ八年間、ほぼ毎日一緒に過ごしていた。赤いランドセルを背負った彼女を若頭のかわりに送り迎えしたり、見たいという映画を一緒に見に行ったり、食べたいというスイーツを取り寄せて事務所内を甘い匂いで充満させたり、ふだんはアロハシャツで過ごしている自分が学校の参観日に慣れないスーツ姿で行ったり……
さすがに面談や式典は父親である若頭が自ら出向いていたが、それ以外の行事や用事をこなすのは義兄役の紫雀だった。
「お義兄さまが学校に来ると、クラスの女の子たちが喜ぶのです。いちばん嬉しいのはあたいだけど」
学校側は羽鳥の事情を知っていたものの、若頭が裏で手を回しているのか彼女がヤクザの娘だと周囲に露見することはなかった。ただ、母親が死んで離れていた父親に引き取られたら義理の兄が一緒に暮らしていたという「設定」は思春期の少女たちに刺激が強すぎたようだ。羽鳥から「『お義兄さまに渡して!』って何度もラブレターを押し付けられそうになったけどぜんぶ断っておいたから、だってお義兄さまはあたいのですから」とさらりと言われて反応に困ったものである。もしかしたらこのときから羽鳥は紫雀を自分のものだと思い込んでいたのかもしれない。
――自分だけの特別なお義兄さま。
「あっ、はとりっ、やめるんだっ」
「んふっ。お義兄さまのおちんぽあたいずぅっとナメナメしたかったんです。ほんとうはもっと早くこうしたかった……ほら見てください、おへそに刻んだばかりの淫紋がキラキラ輝いてますっ。あたいの身体も熱くなってきましたっ。あぁ、舐めてるだけで濡れちゃうっ……」
「くっ……」
アイスキャンディーを頬張るように羽鳥ははむはむと紫雀の陰茎を口腔へ押し込んで、舌先で雁首をレロレロと舐めている。どこでそんな性技を覚えたんだとけしからん気分になる紫雀の火照った表情を前に、羽鳥は勝ち誇った表情を浮かべている。
「お義兄さま、その鎖をはずしてあげましょうか? このままじゃ動くの辛いですものね」
「あ、あぁ……」
はだかのまま淫紋を刻まれ、両手足を拘束された状態で羽鳥の口淫を受けていた紫雀は、刻まれたばかりの淫紋のせいか、あたまが回らなくなってきていた。いまはただこの中途半端な快楽を解放させたい。目の前で自分に欲情して紫雀を虐めて悦んでいる羽鳥を今度は自分が……――
カチャリと外された鎖は長い手錠のようだった。ハァハァと息を荒げながら紫雀を解放した羽鳥は腕を伸ばして彼に抱きつく。
「あは、やっぱりギュッとすると安心します。つばさくんにも手が届きました」
「――お前なあ……」
抱きつかれた紫雀は顔を真っ赤にしながら羽鳥の額にキスをする。
「!?」
「さっきまで俺のモノ喜んでしゃぶっていたくせに、反応がウブなんだよ」
「仕方ないじゃないっ、……経験したことないんですから」
「それなのに俺と淫紋認証したのか?」
「わ、悪いですか?」
ツン、と気まずそうに表情をそらしてしどろもどろになる羽鳥を見て、思わず笑いが込み上げてくる。
「そいつぁ役得だ」
「ひゃっ」
ひょいと羽鳥を抱き上げて紫雀はさきほどまで自分が拘束されていた寝台のうえへ彼女を横たえる。紫雀に刻まれた淫紋が淡く輝く。薄い布越しに羽鳥のへその下から光が漏れだしていた。彼女の淫紋は紫雀と同じ場所に刻まれているようだ。
「欲情におもむくまま俺を襲う羽鳥には驚いたけど、俺、襲われるより襲う方が好きなんだわ」
「あぁっ……」
「欲しいんだろ? 子種。そこまで言うのならたぁっぷり注いでやるよ」
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