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第十四章

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第十四章
 病院を後にした史哉はある場所へと連絡をするとタクシーを拾い、戸澤家へとやってきた。
 圭の両親だということを抜きにしても、静香に死を決意させるほどに苦しめ続けた戸澤夫人を許す気にはなれなかった。
 実の息子に先立たれるという母親の苦しみは相当だろう。気持ちはわかるなんて軽々しくは言えないが、かと言って他者を傷つけていい理由にはならない。圭を失って辛いのは静香だって同じだったはずだ。
 圭を失い、生活を立て直すのだって大変だっただろう。保険金はあるだろうが、マンションで見た彼女の生活は慎ましやかで、贅沢をしていた形跡はまったくなかった。
 夫を亡くし五年経ち、やっと落ち着いてきたところだったはずだ。それなのに、まるで許していないと知らしめるかのように息子である幸太を奪い静香を苦しめた。それだけでは飽き足らず静香が命をかけてまで守ろうとしていた秘密を暴いた。
 インターフォンを押して、応答がある間も史哉の怒りは収まらなかった。
『はい、どちらさまでしょう?』
「奥様に青葉銀行の真嶋、と伝えていただければわかるかと」
『少々お待ちくださいませ』

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