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3章 希う大学生編

お泊まりと言えば····

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 あーだこーだと賛否は別れたが、結局皆が折れてお泊まりが決定した。

 母さんに連絡すると、真尋が一緒なことに驚いていた。そりゃそうだよね。真尋はつむちゃんに連絡すると、僕たちの邪魔をするなと怒られたらしい。
 けれど、鋼のメンタルを持ち合わせている真尋は、僕たちが是非とも泊まれと言った風に伝えたんだそうだ。面の皮が厚いにも程がある。

 そして、お泊まりと言えばする事はひとつ。えっちだ。
 電話を切ると、潤ませた瞳で僕を見つめ、またもや軽口を叩く真尋。

「結にぃと朝まで····んはっ♡ 覚悟してね」

 軽々しいウインクに、いちいちキュンとする僕もいけないんだ。けれど、イケメンのウインクに対抗する手段など持ち合わせていない。

「んぇぇ····」

 僕が困惑していると、空気をぶち壊すように悲鳴が響いた。僕のお腹だ。

「ふはっ··すげぇ音。まずは飯だな。ぉし、肉食うか。朝までヤんだったら体力つけねぇとな」

「うん! ····あ、吐かないようにしてくれる?」

「······まぁ、そりゃそんとき考えるわ」

 絶対吐かせる気だ。けれど、食欲に負けた僕は、たらふくお肉を胃に収めてしまうのだった。


 八千代がどんどん焼いてくれるお肉を、僕はバカスカ頬張る。真尋に『リスみたいで可愛い』と言われたが、バカにされているのだろうか。
 そして、絶え間なく運ばれてくるお肉の量に驚き、流石に支払いの心配をしだした真尋。一応払う気でいた事に、僕たちは感心してしまった。

「あー··金要らねぇぞ。ここ、俺の母親の店だから好きなだけ食え」

 八千代が真尋に寛大だ。烏龍茶なのに、お酒を飲んでる様に見える。片方立てた膝にグラスを持つ腕を置いて、余裕のある感じが大人っぽくてカッコイイな。
 僕も、皆みたいに大人っぽく振る舞えたら、もっとスマートに真尋を引かせる事ができたのかな。僕は、皆に憧憬を感じずにはいられなかった。

「え、ここ場野の親の店なの? すげぇ」

 驚いた真尋は、素直に感嘆する。けど、問題はそこじゃない。

「おい、場野な」

 八千代が、グラスを持つ手の人差し指を真尋に向けて言う。

「無理」

「無理ってお前なぁ··。俺らのこと何て呼ぶ気だよ。1回全員呼んでみ」

 お肉とご飯を口に詰め込み、啓吾がもごもごしながら言う。こういうお行儀の悪い所は、何度注意しても直らないんだから。可愛いから強く言えない僕も悪いんだけどね。
 そして、真尋は啓吾に応えて、僕の彼氏たちに失礼をぶっ放つ。

「場野、朔、変態、啓吾」

 いくら何でもだ。これは酷い。皆、当然の事ながら眉をひそめた。すかさず、最も酷い呼ばれ方をしたりっくんがキレかかる。

「なんで俺だけ名前ですらないんだよ!?」

「変態は変態で充分じゃん」

 朔がご飯のお椀とお箸をそっと置き、瞬きひとつ置いて真尋に視線をやる。

「失礼千万だな。お前、一応年下だって分かってるか?」

 けれど、真尋は臆することなく減らず口を叩き続ける。

「俺が正式に結にぃの恋人になったら対等だろ? だったら今から慣れといたほうがいいじゃん」

「格上げされる気満々かよ。それにしちゃお前さ、俺らに態度悪すぎんじゃねぇ? 流石に我慢も限界よ?」

 啓吾はおどけた調子で言うが、目は苛つきを隠せていない。

「だって、まだアンタらの事完全に認めたわけじゃないからね。すげぇと思うトコはあるけど、俺だって負けないし。だいたい、結にぃを横取りされたって覚えてる? それに、俺反抗期らしいし?」

 僕が反抗期扱いした事を根に持っているようだ。事実なのだから、逆ギレされても困るんだけどな。

「もう··執拗しつこいなぁ。····ハァ··なんにしても失礼でしょ。せめて君付けとかさ、もうちょっと敬意のある呼び方にしなさい」

「わ、わかったよぅ」

 僕が凛として注意してみせれば、昔ほど忠実ではないにしろ言う事を聞く。惚れた弱みというのだろうか。やはり、真尋も僕には弱いのだ。

「おぉ~、結人が兄ちゃんっぽい」

「で、なんて呼んでほしいの?」

 また随分上からな物言いだなぁ。なんてのは、皆とっくに諦めているようだ。

「啓吾さん」

「莉久さん」

「瀬古さん」

「場野さん。名前で呼んだら殺す」

「箸向けんのやめろよな。あー··そういや、場野だけだよね。結にぃにしか名前で呼ばせてないの。なんで?」

 まったくこの子は、早速呼び捨てなんだもん。箸を握る八千代を見て、思わず溜め息が漏れる。

「真尋、聞いたんだったらちゃんと言われた通り呼んでね。あと、理由はねぇ──」

 大雑把にだが、僕だけが“八千代”と呼ぶ事を許されている理由を話す。


「──だからね、多分冗談でも呼んだら殺されちゃうよ」

「マジでな。俺、フザケて呼んだら殺されかけたから」

「うーわー。暴君かよ」

 あぁ、どうして真尋は皆に喧嘩を売るような態度ばかりとるのだろう。僕が落ち着かない要因はこれだ。
 けれど、そんな僕を思ってか、皆は前ほど真尋に突っかからなくなった。単純に、反抗期の態度の悪さに慣れただけなのかもしれないけれど。

「ねぇ真尋、今度僕の彼氏にそういうこと言ったら、その瞬間恋人体験終わりにするからね」

「んぇ!? わ、わかった。もう言わないから····結にぃ怒らないで?」

「それは真尋次第だよ。僕の居ない所でもダメだからね」

「ぅ····わかった」

 僕が居ない所では言うつもりだったのだろう。けれど、これで幾分か態度がマシになるだろう。なにせ、僕の言いつけは絶対みたいだから。
 きっと、真尋が1番恐れているのは、僕に嫌われる事なのだ。

 僕の毅然とした態度に、皆は見直したと言っていた。最近の僕は、優柔不断に拍車が掛かっていたから、少しでも挽回できたのなら良かった。


 今日も、お腹いっぱい食べて八千代の家に戻る。毎度の事ながら、吐かされるのを忘れて食べすぎてしまう。僕の学習能力は、もうずっと迷子らしい。
 それにしたって、八千代が僕のお皿に、止めなくお肉を乗せていくんだもの。その上、啓吾が自分のご飯と一緒に、頼んでもないのに僕の分まで注文するから。挙句の果てに、朔がデザートを注文してくれる。
 それを、りっくんが甘いトークで気を逸らせながらパクパク食べさせるんだ。いつも、気がついたらお腹いっぱいで、お店を出る前から眠くなっている。


「結にぃ、眠い?」

「んぅ····大丈夫だよ。寝な··い····」

 瞼が重くて仕方ない。そんな僕を、壊れ物を置くようにそぅっとベッドへ寝かせて、りっくんが真尋に言う。

「30分くらい寝かせてあげよ。それくらいで起こさないと、もう起きなくなるから」

 起こす気なんだ····。なんて思うと同時に眠りに落ちていた。


 おちんちんに温もりを感じて目覚める。ふと見下げると、真尋が僕のを咥えていた。
 舌使いが上手く、イイ所に絡められる度イキそうになる。けれど、イかせてはくれない。真尋は手にローターを持っていて、僕が起きた事に気づくと、それを亀頭にあてがった。そして、寝起きの身にはキツい最大出力で振動させる。

「ん゙あ゙ぁっ! まひっ··んぅぅ····そぇやめ゙でぇ」

「おはよ、結にぃ。これ、気持ちぃ?」

「イ゙あぁっ!! 気持ぢぃっ··から····らめ··イッちゃう····」

「いいよ。好きなの、ここだよね」

 そう言って、真尋は裏筋に強く押し付ける。振動が響き、その衝撃で達してしまった。
 どこが好きなのかなんて、正直分からないんだ。皆が触ってくれれば、余す所なく気持ち良いのだから。
 僕は場所と言うよりも、誰にどうされるかというのが重要らしい。

「結にぃ、可愛いね」

 真尋は僕を抱き上げ、膝に乗せて胸に愛撫をする。優しいのか焦らされているのか、身体は跳ねるが擽ったさも混じってしまう。
 真尋は、僕に触れているだけで満足そうにする。眉をひそめ、おちんちんを熱くしていても、僕が首に手を回すと嬉しそうに微笑むんだ。可愛くて、ついつい甘くしてしまう。
 頬に手を添え、キスはしないけど頬擦りをする。確かに、真尋を愛しいと思う。ほっぺになら、キスをしてしまいそうになる。
 けれど、これは僕なりの線引き。皆以外に唇は捧げない。皆も真尋も、僕のそれを分かってくれているようだ。

 僕は、まだ少しぽやっとしながら、素直な気持ちのままに真尋の耳元で囁いた。

「真尋、ごめんね」

「····え?」

 僕と真尋の時は止まり、静かに見つめ合う。そして、僕は真尋に問う──。

 
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