上 下
25 / 61
サバゲーの頂点に立ちたいでしょう?

02

しおりを挟む

「フラッグハントに使うのは、ふつう極短化した短機関銃SMGネー。ウチらは異質デスネー」

 たははーと笑う尋に、音羽は意図が掴めずに首を傾げた。

「そうなんですか?」

「狭いフィールドならば、小さい分だけ有利になる。ここで大きいことは、デメリットの方が多い」

「じゃあ、どうして?」

 そこまでわかっていて、ふたりがあえてデメリットを背負い込む意味が、音羽にはわからない。首を傾げると、尋ににっこりと笑みを向けられた。

「その方が、gameが楽しくなるからデスネー。不利なほど燃えるネー?」

「ええ!?」

「困難は高いほど、乗り越えたとき気持ちいいネー」

 笑顔で言われても、反応に困る。

「当てればいいのだから、むしろ大きい方がエイムは楽になる」

 しれっとした顔でフーは言い、斜めがけに吊したカービンに弾倉を入れ、装弾した。

「ずいぶんと、余裕ですわね。第四サバイバルゲーム部の皆さん」

 突然降って湧いた声。近づいてくる足音があったので顔を上げていた音羽に、その人物は目もくれず真っ直ぐ尋をに睨んでいた。

「あ、たまチャンネー!」

 嬉しそうに顔を上げた尋は、にっこり笑みを浮かべて彼女を見た。

 初めて尋たちに会い第四サバゲー部の部室に行った日、尋を連れて行った赤髪の少女だ。

 今日は制服ではなく、ちゃんとサバイバルゲームをやるための格好をしている。

 灰色の都市迷彩柄のシャツとパンツ。腰にピストルベルトを巻いて、ふたつ入りのマガジンポーチと空弾倉入れ。拳銃を納めたプラスチックのホルスターもある。フラッグハントの装備としては重装備だ。

「おだまりなさい!」

 尋に呼ばれた瞬間、上品な赤髪よりも顔を真っ赤にさせて、彼女は怒りを露わにした。しかしその響きの中に憤怒がほとんど入っていないことに、音羽以外誰も気付かない。

 それでも取り乱したのは一瞬で、すぐに平静を取り戻した。

「Oh! そうだ! おとチャン、この子は第一サバゲー部の部長、新宿珠希チャンネー」

 ふんと仁王立ちして、吊り目を傲慢に細める赤毛の彼女、珠希。

「この子は我が第四の期待の新人、蒔宮音羽チャン」

「そう、よろしく」

 珠希は右手を差し出してきた。おずおずと、少しだけ怯えながらその手を握り返す。

 ――怒ってない? フリだけだ――

 心音は至って穏やかだった。

「よろしく、おねがいします」

 それが分かると、恐怖心はなくなった。

「もっと、自分に自身を持ちなさい。この猿が褒める位なら、それは誇れるものだわ」

「え、あ、う、は、はい」

「胸を張って」

 一瞬だけ微笑を浮かべた彼女は、しかしすぐに手を離して尋を睨んだ。

「今回負けたら、わかっているのでしょうね?」

 自信に満ちあふれた口元。

 何を言っているのか、音羽にはわからなが、尋はわかっているようだ。こくと頷いた。

「Off corse! 約束は守りマスヨー」

 微苦笑を口元に浮かべて、尋はもう一度頷く。

「そう。ならいいわ。精々あがきなさい」

 ふんと鼻を鳴らし、さっと踵を返した。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

江戸消失

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

幸せですか?

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

1人の男と魔女3人

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:1

不撓不屈

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:198pt お気に入り:1

【連載予定】月夜に咲く

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

目が覚めたら異世界で草生える

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:17

ファンタスティック・ジャパン!

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

100文字小説、3つの単語

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...